調査結果が示す米国ITプロジェクトの優先度
「仕事でもiPhone」、企業がモバイル関連投資を増やす本音は?
「優先的に取り組むプロジェクトはモバイル、特にiPhoneだ」。2014年のITプロジェクトについての調査結果からはこのような動向が読み取れる。一方、下火になったのは?
米TechTargetが実施したIT給与調査「2013 IT Salary and Careers Survey」では、CIOやIT責任者が2014年に優先的に取り組むプロジェクトの1つに「モバイル技術」が挙がった。デスクトップからモバイルコンピューティングへと職場が急速にシフトしていることを示す兆候の1つといえる。
調査には463人のCIOとIT責任者が参加したが、「2014年に優先的に取り組む上位3つのプロジェクト分野」として、20%が「モバイル技術」を挙げ、「セキュリティ」は21%、「事業継続(BC)と災害復旧(DR)」は19%となった。一方では、勢いが下火になりつつある分野もあり、2014年に取り組むプロジェクトの主な分野として「アウトソーシング」と「プライバシー」を挙げた回答者は、わずか2%にとどまった。
スポットライトはiPhoneに
調査に参加したIT責任者に話を聞いたところでは、BYOD(私物端末の業務利用)プログラムの社内展開はCIOにとって引き続き最優先で取り組むべき課題となっているようだ。BYODプログラムと一口にいっても、初歩段階のものから、全面的に私物端末の利用を認める徹底したモバイル環境の実装まで、その内容は多岐にわたる。こうしたBYODへの注目度の高さは、企業が2014年にITプロジェクトの成果として期待している上位2つのビジネス価値が「業務効率化」(56%)と「従業員の生産性向上」(43%)であるとの調査結果とも合致している。
ある大手金融機関のIT責任者は、次のように語る。「当社のBYODプログラムは現在、試験段階にある。今後、このプログラムを展開していくことになる。ただし、実際のところ、対象となるのはスマートフォンだけ、というよりiPhoneだけだ」。6万人以上の従業員を擁するこの金融機関は、モバイル端末のセキュリティを確保するよりも、「コンテナ化」のアプローチを採る方を選択した。社内データはモバイル端末上のコンテナに保存されるため、会社側は暗号化や認証などの機能を用いてデータを保護し、個人データを隔離できる。
「コンテナを使って管理することで、スマートフォンの紛失など各種のトラブルが発生してもカード会員のデータを守れるようにしている」と、このIT責任者は語る。ただし、これはモバイル端末がルート化されておらず、もともとのOSがスワップアウトも代替バージョンでリプレースもされていない限りにおいての話だ。
こうしたBYODプログラムは2014年の第2あるいは第3四半期には、Androidベースの端末にも拡大していく見通しだ。「ただし差し当たっては、当社のプログラムはiPhoneだけを対象にスタートしている。“i”の付くApple製品を好む非技術系の幹部らによって決定された現実だ」と、このIT責任者は語る。
2014年にBYODに注力するのは、大手企業に限った話ではない。電話向けとオンラインのエンターテインメントを手掛ける中堅企業、米Voice Systems Engineeringの最高イノベーション責任者、スコット・クシュナー氏は次のように語る。「もはや、モバイルというくくりでは考えていない。マルチデバイスの視点で考えている」
Voice Systems Engineeringは、2014年に「Have it your way(どうぞお好きなように)」というスタンスのモバイル環境を展開する計画があるという。つまり、社内向けと社外向けどちらのアプリケーションについても、いつでもどのデバイスからでもどんなデータでも利用できるということだ。
「われわれはレスポンシブデザインの手法を採用している」と、クシュナー氏は語る。あらゆるデバイスに対応できるようWebサイトをコーディングする手法のことだ。「スマートフォンやデスクトップPCなど、デバイスごとに別個のサイトは用意しない。全て同じサイトだ。ユーザーが利用中のデバイスを認識し、それに応じてサイズを調整できるようになっている」と、同氏は続ける。
「アウトソーシング」と「プライバシー」は下火に
CIOとIT責任者は2014年もモバイル技術の実装を続けるようだが、一方では、冷遇されている項目もある。調査では、「プライバシー」と「アウトソーシング」はプロジェクトリストの最下位に転落しており、「2014年の優先項目」としてこのいずれかを挙げた回答者はわずか2%にとどまった。
回答者に話を聞いたところ、「モバイル技術」や「セキュリティ」とは異なり、「アウトソーシング」と「プライバシー」に対する姿勢には業界や企業規模によって大きな偏りがあるようだ。米カンザス州ウィチタ市のCIOを務めるマイケル・マヤ氏にとって、プライバシーは最優先の懸案事項ではないという。同氏が勤務しているのは公共部門の一機関だからだ。だが米金融サービス会社Burr Pilger MayerのIT担当ディレのクター、アンソニー・ピーターズ氏にとって、データのプライバシーは主要な優先項目だという。
「われわれにとっては、ほぼ最優先の項目だ。この順位はどの業界のCIOかによって違ってくるはずだ」と、ピーターズ氏は語る。
アウトソーシングについても、同じパターンが読み取れた。前出Voice Systems Engineeringのクシュナー氏にとって、アウトシーシングは2014年の主要な戦略的プロジェクトの1つだという。
「労働力の一部を社外から調達することには一理ある。アウトシーシングは、ビジネスの高い要求に応えるための柔軟な能力を提供してくれる。当社が全面的に投資しても意味のない分野での能力も確保できる」と、クシュナー氏は語る。
また同氏によれば、アウトソーシングは革新につながる可能性を秘めた新たな発想を社内に吹き込むチャンスでもあるという。「それに、小規模なIT部門しか持たない中堅企業にとって、こうした専門技術を全て社内で育てることは現実的ではない」と同氏は語り、次のように続ける。
「適切な比率がどの程度かは分からないが、われわれは大体80対20の割合を目指している。当社のリソースプールの20%が何かしらの形で外部から来ている状態だ」
アウトソーシングに関しては、恐らく企業の規模も関係する。前出の大手金融機関の匿名希望のIT責任者によれば、この金融機関では目下、「インソーシング(社内調達化)」を進めているという。
このIT責任者は、少人数のチームで製品の迅速な開発と反復的な開発プロセスを実現する手法に言及し、次のように語る。「われわれはアジャイル開発とスクラム開発の手法を取り入れ始めたところだ。リソースを各部署に集めることで、効率を高め、より少ない労力でより多くをこなし、コストを管理できている」
さらにこのIT責任者によれば、アウトソーシングはかつてはコスト削減の手段であったが、同時に自らを制限する存在にもなりかねないという。高度なITスキルを持つ人材が昇進して管理職に付く一方で、職務が断片化され、社外で処理されるようになれば、いずれ「知識の隙たり」が生まれる。
「長期的には、企業はこうした状況には耐え切れない。社内の知識は土台から構築して増大させ、間違いを繰り返しながら学んでいく必要があるからだ。アウトソーシングによって社外に知識を積み上げていては、社内の知識を深めることはできない」と、このIT責任者は指摘する。
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