「Open Compute Project」(OCP)の現状と課題
Facebookがネットワークインフラも支配? 前進するスイッチの共同開発
Facebookが主導する「Open Compute Project」(OCP)のスイッチ設計プロジェクトが順調に前進している。だが、一般的な企業ではまだ、ベアメタルスイッチに取り組むノウハウやリソースがないなど、普及への課題は残されている。
米Facebookが主導する「Open Compute Project」(以下、OCP)は、企業から寄贈された4つの重要な開発成果が、オープンなToR(Top of Rack)ベアメタルスイッチの設計に向けたOCPの取り組みに取り入れられる見通しであることを発表した。
2013年11月に開催された、OCPのスイッチ設計の取り組みに関するメディア向け説明会でFacebookは、米Intel、米Broadcom、イスラエルのMellanox Technologiesからそれぞれ提出されたベアメタルスイッチの設計仕様を紹介した。また、米Cumulus Networksからベアメタルスイッチのブートローダを寄贈されたことも明らかにした。
この説明会の後で、OCPを推進する非営利組織「Open Compute Project Foundation」の会長兼社長を務めるFacebookのフランク・フランコブスキー氏は、OCPはこれら4件の寄贈を全て受け入れるだろうとブログで述べた。これまでにOCPのスイッチプロジェクトには30件の寄贈がなされているという。
「今のペースでいけば、2014年1月開催のOpen Compute Annual Summitで、プロジェクトの成果を披露できる」と、Facebookの技術オペレーションディレクターのナジャム・アーマド氏は語る。「予想以上に速いペースで取り組みが進んでいる」と同氏。既にFacebookのラボには、これらの設計に基づくスイッチがあると、同氏は付け加えた。
3つの設計仕様とブートローダ
Broadcomのオープンスイッチ仕様は、同社のTrident IIチップをベースにしている。Trident IIは現在、大部分のネットワーキングベンダーがToRデータセンタースイッチに採用している。
Intelの提案は、同社のEthernet Switch FM6764チップを搭載した48ポートの10/40ギガビットイーサネットスイッチを提供するIntel Open Network Platform Switch Reference Designに基づいている。Intelはもともと、子会社のWind RiverのLinuxディストリビューションをベースにしたソフトウェアスタックを実行するようにこのプラットフォームの仕様を設計した。
Mellanoxは、同社のx86ベーススイッチであるSwitchX-2に基づく仕様を寄贈した。SwitchX-2はSFP+ポート48基、QSFPポート12基を備える。InfiniBandスイッチングで最も知られるMellanoxは2013年3月、同社のソフトウェアとハードウェアを“オープンソース化”し、同社のイーサネットスイッチをベアメタルデバイスとして提供すると発表。MellanoxからOCPへの仕様の寄贈により、ODM(Original Design Manufacturer:相手先ブランドで製品の設計から生産までを行う企業)は、そのフレームワークを基にスイッチを作ることを選択できるようになりつつある。
一方、Cumulusのブートローダソフトウェアは、Open Network Install Environment(ONIE)と呼ばれる。ベアメタルスイッチが複数のネットワークOSを起動できるようにするランタイムインストール環境だ。ネットワーク運用者はONIEにより、ベアメタルスイッチを新しいOSで再起動できる。管理者がx86サーバを再起動してWindowsやLinuxを実行するのと同様だ。
「われわれの顧客の1社は、ONIEを使ってこれを行っている」と、Cumulusの創業者でCEOを務めるJ.R.リバーズ氏は語る。「その顧客はわれわれのシステムを使って従来のワークロードを実行しており、OpenFlow的なワークロードをサポートする必要があるときは、スイッチをあるOSから別のOSへと素早く切り替えることができる」
OCPのスイッチプロジェクトでのFacebookのミッションは、データセンターネットワーク機器におけるハードウェアとソフトウェアの“分離”を推進することだと、アーマド氏は語る。このアプローチは、ネットワークインフラのプログラマビリティと柔軟性の向上と、コストの削減を可能にする。データセンター運用者が低コストのODM、例えば台湾Accton、台湾Quanta、米Penguin Computingなどからハードウェアを購入できるからだ。
オープンスイッチを使えば、データセンター運用者は、ネットワークの自動化や機能拡張を実現するサードパーティーや自社開発のソフトウェアをスイッチで直接実行できる。「クローズドプラットフォームでは、これは全く不可能だ」(アーマド氏)
「また、多くの人がネットワーク機器に透明性も求めている」とリバーズ氏。「彼らは、トラブルが生じたときに影響を軽減できるように、機器の仕組みをよく把握したいと考えている」
普及への道のりは遠い
OCPのスイッチプロジェクトは、Facebookが運用しているようなハイパースケールデータセンターにさまざまなメリットをもたらす可能性がある。金融などをはじめ、一部の企業もベアメタルスイッチに興味を持っている。「Goldman SachsやFidelityなどの企業がこれらの仕様をレビューし、フィードバックを作成して提供してくれている」
しかし、現状では残念ながら、一般的な企業ネットワークエンジニアには、ベアメタルスイッチに取り組むためのノウハウもリソースもない。取り組む準備が整うまでにはかなり時間がかかりそうだ。
「OCPが設計しているスイッチは、コスト抑制や高度な管理を求めるネットワークハードウェアの利用者にとって理にかなったものだ」と、米451 Researchの主席アナリスト、エリック・ハンセルマン氏は指摘する。
「しかし、大きな変更には大きな責任が伴う。プラットフォームについて責任を取れる必要がある。メンテナンスと統合の責任を負うことができなければならない」と同氏は説明する。
「いずれは、もっと高度な連携機能を活用できるようになるだろう。CumulusやPica8がそうした環境の実現に精力的に取り組んでいる。他のベンダーによる関連した取り組みも出てくるだろう。ただし、そのような機能を活用するには、ある程度DIYが必要になる」(ハンセルマン氏)
「FacebookやGoogleのような企業は、もともとそうした道を歩んできている。新しいデータセンタースイッチの構築と展開に伴って必要になる、統合作業を全てこなせるネットワークチームとハードウェアチームを持っている。企業がOCPのスイッチプロジェクトの成果を生かすには、マシンの構築にとどまらず、追加的に発生する全ての業務に対応できるスタッフを確保する必要がある」(同氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー