Microsoft Azureスマート解説【第1回】
Windows Azureを企業利用するための基礎知識
ソチオリンピック公式Webサイトの開発・運用基盤採用、日本のデータセンター開設と、Windows Azure活用ビジネスが世界的に注目されている。第1回は、Windows Azureの概要と歴史、注目すべき理由を解説する。
皆さんは“今の”「Windows Azure」をご存じだろうか。PaaS(Platform as a Service)しか提供していなかった時代のWindows Azureではない。2013年にはIaaS(Infrastructure as a Service)を含む多数のサービスを正式にリリースした。そして、2014年2月26日、国内リージョンとして2カ所(東日本/西日本)のデータセンターが開設された。
「Windows Server」「Microsoft SQL Server」「.NET」といったMicrosoftのテクノロジーに慣れ親しんだユーザーはもちろんのこと、Linux、JavaからHadoopや「Oracle Database」など、他ベンダーのテクノロジーやオープンテクノロジーをメインに利用しているユーザーにとっても、Windows Azureを利用すればクラウドの恩恵を受けることができる。
そこで本連載では全7回にわたって、Windows Azureの主要サービスについて機能、使い方、利用例などについて解説する。
連載インデックス
お知らせ(2014年4月4日)
「Windows Azure」が2014年4月3日から「Microsoft Azure」に名称変更したことを受けて、本連載名も「Windows Azureスマート解説」から「Microsoft Azureスマート解説」に変更しました。記事タイトルは初出時のままとしております。
Windows Azure概要
Windows Azureは、多くのIT分野において強い影響力を持つMicrosoftが提供する、クラウドプラットフォーム(いわゆるパブリッククラウドサービス)である。
Microsoftが管理するデータセンターにアプリケーションや仮想マシン、仮想ネットワークを簡単に作成・管理することができる。インフラの管理はMicrosoftが行い、機能によって99.9%から99.99%までの月次SLA(サービス品質保証)を実現している。これによって、運用管理コストを劇的に削減することができ、システム開発にリソースを注力することができる。
また、可用性に優れたアプリケーションを少ない工数で作成するためのPaaS機能が充実している。
Windows Azureが注目される背景
Windows Azureが商用サービスを開始したのは2010年1月(同年2月に課金開始)だ。サービス開始当初は、Microsoftテクノロジーを中核としたアプリケーションプラットフォームとして、PaaSを中心にサービスを展開してきた。
しかし、徐々にIaaSへの取り組みも始め、多数の開発言語やオープンソースソフトウェアなどのオープンテクノロジーへの取り組みも活発に行っている。2013年にリリースされた仮想マシンサービスでは、WindowsだけでなくCentOSなど、他のOSの仮想マシンも作成できるようになった。Webサイトサービスでは、ASP.NETだけでなく、PHPやNode.jsなどの言語でもWebサイトを構築できる。また、ギャラリー機能によって、「WordPress」や「ECCube」などオープンソースソフトウェア(OSS)のCMSを高速に構築することができるようになった。
2012年6月にはサービス構成を一新し、仮想マシン、Webサイト、モバイルサービスを含む、多数のサービスをプレビュー版としてリリースした。2013年は、エンタープライズシステムでの利用環境を整えるべく、プレビュー版であった多数のサービスを正式リリースした。そして、2014年2月、東日本と西日本に待望の国内データセンターを開設した。
Windows Azureのメリット
Windows Azureの真骨頂はPaaS部分にある。ハードウェア、OS、ミドルウェア、ランタイムレベルまでの動作が稼働率99.9%で保証されているため、ユーザーはアプリケーションを第一に考えることができる。また、そのアプリケーションに対してスケーラビリティ、可用性を向上させるサービスも、2013年に多数正式リリースされたため、少ない工数で優れたアプリケーションを開発することができる。
こうしたPaaSと同等の機能は「Amazon Web Services」(AWS)には存在しないため、Windows Azureの大きなメリットであるといえる。
また、開発したWebサイト/アプリケーションを国内データセンターへデプロイすれば、国内ユーザーは短時間でWebサイト/アプリケーションへのアクセスが可能になる。このことによって、ユーザビリティが向上する他、Webサイトのデプロイ速度が速くなるため開発効率の向上も見込める。
このメリットは、同様にPaaSを提供している「Google App Engine」(GAE)と比べても大きなメリットである。GAEは、サーバが米国と欧州にしかないため、国内からの利用においてはネットワーク遅延が懸念されるからだ。
さらに、Windows Azureは日本語に対応しており、シンプルで直感的に認識できる管理ポータルサイトを用意していることも大きなメリットである。機能ごとに、認識しやすいアイコンと、日本語での丁寧な説明を配置しているため、Windows Azureに不慣れな人でも簡単に操作することができるだろう。
MicrosoftのクラウドOSビジョン
2013年11月開催の「The Microsoft Conference 2013」にて、MicrosoftはクラウドOSというビジョンを強調した。クラウドOSビジョンとは、3種類のクラウドサービスにおいて、一貫したプラットフォームを提供するというビジョンである。
3種類のクラウドは以下を指す。
(1)パブリッククラウドであるWindows Azure
(2)「Windows Server 2012」および「System Center 2012」を組み合わせて構築したプライベートクラウド
(3)Windows Server 2012とSystem Center 2012を組み合わせて構築したサードパーティー(クラウドサービスプロバイダー)のパブリッククラウド
このビジョンを実現するために、Microsoftは「Windows Azure Pack」というソフトウェアを提供している。Windows Azure Packは、Windows Server 2012とSystem Center 2012を組み合わせて構築したクラウドに対して、Windows Azureと同じ管理APIおよび管理用UIを提供する。これによって、クラウドOSにおける管理ツールおよび管理APIをWindows Azureベースに一元化できる。ハイブリッドクラウドの構築・管理・運用が容易になり、エンタープライズ領域でのクラウド活用がますます活発になると予想される。
Windows Azureサービス一覧
Windows Azureの主要サービス一覧を以下に記す。
AWSに慣れている読者が理解しやすいよう、各サービスにおいてAWSに相当するサービスを記載する。なお、厳密に同じサービスではないことをご了承いただきたい。
クラウドサービス
アプリケーションの実行基盤を提供するサービス。アプリケーションとはいわゆるバッチプログラムやWebアプリケーションを指す。高いスケーラビリティが特徴。
Webサイト
Webサイト/Webアプリケーションの実行基盤を提供するサービス。FTP、Web Deploy、ソース管理サービス(Git、GitHub、TFS)経由でサイトをデプロイすることができる。ギャラリーから、WordPressやECCubeが構築された状態のWebサイトを簡単に作成することができる。
仮想マシン
仮想マシンの動作基盤を提供するサービス。オンプレミス環境と同じようにWindows ServerやLinuxサーバをそのまま管理できる。Webサイトやクラウドサービスに比べて自由度が高く、従来のノウハウをそのまま活用できる点が特徴。
[AWS]「Amazon Elastic Compute Cloud」(EC2)、「Amazon Elastic Block Store」(EBS)
モバイルサービス
モバイルデバイスに対応したアプリケーションを開発する上で必要なバックエンド機能を提供するサービス。Windows Azureストレージなどのデータに対してCRUDするためのREST APIを容易に作成できる。
SQLデータベース
MicrosoftのSQL Serverの機能をPaaSとして提供するリレーショナルデータベースサービス。使い慣れた開発モデルや既存のデータモデル、ロジック、アクセス手法などをほとんど変更することなく流用できる。データを自動で3台の物理サーバにレプリケーションしたり、BLOBストレージへの定期的なバックアップ機能を持つなど、高可用性を実現できる。
[AWS]「Amazon Relational Database Service」(RDS)
ストレージ
Queue、Table、BLOBの3種類のサービスを持つ。Queueはメッセージングサービス。Tableは分散Key-Valueストア、BLOBは大量データストアサービス(ファイルサーバのようなもの)である。全てのサービスにおいてデータを、既定で3重化、地理冗長機能を有効にすると6重化で管理されるため、非常に高い冗長性を持つ。
[AWS]「Amazon Simple Queue Service」(SQS)、「Amazon DynamoDB」「Amazon Simple Storage Service」(S3)
HDInsight
ビッグデータ分析ツールとして広く活用されているオープンソースソフト「Apache Hadoop」をWindows Azure上で提供するサービス。「.NET SDK For Hadoop」が公開されているため、Javaだけでなく、.NET言語でもMapReduceプログラミングを実現することができる。
[AWS]「Amazon Elastic MapReduce」(EMR)
Service Bus
クラウド上あるいはオンプレミスのアプリケーションやサービスを統合するためのミドルウェア機能を提供するサービス。同期型のメッセージングを行う「リレー」、非同期型のメッセージングを行う「キュー」という機能を持つ。
メディアサービス
動画や音声などのメディアファイルを配信するために必要なデータのアップロード、変換(エンコード)、配信までを一貫して提供するサービス。デバイスやWebブラウザなど再生環境に応じて、最適な動画フォーマットにエンコードできるようになっている。
[AWS]「Amazon Elastic Transcoder」
BizTalkサービス
拡張性に優れ、高い性能を備えたシンプルなクラウドベースの統合サービス。Microsoftの製品であるBizTalk ServerをWindows Azure上で利用することができる。
仮想ネットワーク
ユーザー固有のプライベートネットワークをWindows Azure上に仮想的に作成することができるサービス。仮想ネットワークには、クラウドサービスや仮想マシン、SQLデータベースを配置することができる。同一ネットワークに配置することで、不要なエンドポイント公開(ファイアウォールのポート開放に当たる)を行う必要がなくなり、よりセキュリティ性を向上させることができる。また、VPNを用いてオンプレミス環境と接続することができる。
[AWS]「Amazon Virtual Private Cloud」(VPC)、「AWS Direct Connect」
Traffic Manager
複数のサービスに対して、トラフィックの付加を分散するサービス。サービス間またはデータセンター間での負荷分散や多重化などのサーバ構成を実現することができる。負荷分散方法は「パフォーマンス」「フェイルオーバー」「ラウンドロビン」の3種類。
[AWS]「Elastic Load Balancing」(ELB)
Active Directory
Microsoftアカウント(旧Windows Live ID)、Facebookなど他のアイデンティティープロバイダーと同様、ID、パスワード、その他属性などを管理し、認証・認可のためのプロトコルを実装した認証基盤サービス。
スケジューラ
指定したスケジュールに従い、HTTP/HTTPSエンドポイント呼び出し、またはストレージキューへのメッセージ送信などの操作を実施するためのサービス。現在はプレビュー版。
料金体系
Windows Azureの利用料金は、Windows AzureのWebサイトで確認することができる。サービス数とサイズ/モードを選択するだけで、月額費用を簡単に算出することができる。分かりやすい料金体系もWindows Azureの魅力の1つである。
次回以降、特に使用されるサービスの機能、使い方、利用例などについて解説する。
日山雅之(ひやま まさゆき)
株式会社FIXER クラウドエクスペリエンス事業部 プログラマ
学生時代に地元のITベンチャー企業にてプログラミングのアルバイトを行い、そこでプログラミングの奥深さに魅了され、スーパープログラマを目指す。大学院を卒業後、現日立システムズに入社し、App Bridgeシリーズの開発に携わる。その後、プログラミング技術をより高めるべく株式会社FIXERに入社。Windows Azureの虜になる。好きなサービスはクラウドサービス+キューストレージ。
【FIXER公式サイト】http://www.fixer.co.jp/
【cloud.config公式サイト】http://www.cloud-config.jp/
【日山ブログ】http://www.cloud-config.jp/category/programmer_hiyama
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