ビッグデータを活用する組織の作り方【第2回】
あなたの会社はどの段階? データ分析の進化度を計る4つの組織タイプ
企業でのビッグデータ活用を促進するには、まずBIの定着が必要である。前回の「BI成熟度モデル」に続き、今回は「組織」面に焦点を当て、「情報活用組織の進化」について取り上げる。
ビッグデータ活用基盤が企業に導入されて効果を挙げるためには、それを活用する取り組みとIT、方法論であるビジネスインテリジェンス(BI)が企業に定着している必要があります。
前回は、ビッグデータ活用による変革を成功に導く鍵となる「BI成熟度モデル」の概要を紹介しました(関連記事:今すぐ調べたい「BI成熟度」 ビッグデータ活用の体制は整っているか?)。
本稿では、今後注目が集まると思われる「情報活用組織の進化」について取り上げます。ビッグデータを活用し、業務に定着させるためには組織面の進化が求められています。
さまざまな業界で進化する情報活用組織
企業はこれまで、業務システムなどに蓄積される膨大な情報を分析・加工することで、企業経営の意思決定に活用し、企業活動に直接資する大きな価値を生み出してきました。まずは製造、流通・サービス、金融、公共などの業界を例に挙げて具体的な活用領域を見てみましょう。
製造業では、生産性を向上させるための分析が行われてきました。製造工程で発生するデータを活用し、プラントの稼働状況モニタリングや、生産ラインの歩留り分析などに取り組んできたのです。設備投資が大きい製造業において、データ分析は主に製造原価の低減という側面で大きく貢献してきました。
一方、流通・サービス業では、商品・顧客に着目した分析が行われています。購買履歴データから売れ筋商品を分析し、品ぞろえや棚割りに生かしたり、顧客を購買行動で分類し、推奨商品を見つけたりしてきました。流通・サービス業においてデータ分析は、仕入れと販売の両方の側面で活用されてきました。
また金融業では、古くから与信分析が行われてきました。リスクを計量化するという意味で、データ分析は金融商品設計の根幹ともいえる技術として使われてきました。最近ではそれにとどまらず、金融商品のマーケティング目的でイベントベースドマーケティング(EBM)のような顧客分析も積極的に行われるようになっています。
公共分野では、交通、防災、エネルギーといった社会インフラに関わる側面でデータ分析が生かされています。
このように企業は社内外の情報を活用し、自らの企業価値を向上させてきました。では、具体的にはどのような組織形態でそれを実現してきたのでしょうか。情報活用組織の進化の段階を追ってみましょう。
進化の3+1段階
図1はNTTデータが考える、情報活用組織の進化の段階を記したものです。大きく3段階、そして派生する形で1段階の合計4タイプが存在します。ここからは段階ごとに「想定する情報活用範囲」「情報活用機能の所属」「リソース調達方式」の観点で特徴を紹介します。
第1段階:部門特化型
情報活用組織を形成する第1段階は、「部門特化型」と呼べるタイプのものです(図2)。例えば、製造業におけるプラント稼働状況モニタリングや金融業界の与信分析など古くから行われてきた情報活用の多くは、全社に向けてというより、生産管理部門や与信管理部門など、特定の事業部門がその目的を高度に達成するために生まれたものでした。そのため、情報活用の範囲は自然とその事業部門に閉じることが多かったといえます。
それに関連して、情報活用機能の所属は必然的に、該当業務を遂行する特定の組織となることが一般的でした。結果、該当業務へのコミットメントは深くなり事業部門への貢献度合いは高い一方で、データや分析基盤、データサイエンティスト(分析人材)などのリソースを全社で有効活用することは難しい形態でもありました。
最後にリソース調達方式です。かつては外部から分析人材を調達するのは難しく、自社に抱えるのが一般的でした。ですが、最近では情報活用を強みにするベンダーも現れ、案件ごとに外部から調達することも多いのが特徴です。結果、ビジネスパートナーとは案件ごとの契約となり、パートナーとの連携は比較的疎な状態だといえます。
第2段階:全社支援組織(BICC)型
部門特化型の情報活用を進める中で、日本でも2000年代になると、「分析に関わるリソース(データ、分析基盤、分析人材)が希少であり、全社としてより有効活用し企業価値を高めたい」という動きが出るようになりました。この在り方を第2段階「全社支援組織型」と呼んでいます。その具体的な在り方として有名なのが、ビジネスインテリジェンスコンピテンシーセンター(BICC)というコンセプトです(図3)。
BICCとは、ビジネスインテリジェンスの全社展開、推進を目的として設置される部門横断型の専任組織です。企業内のデータ整備から業務における分析活用までを効果的に行い、戦略的な情報活用を推進することで競争力の向上を目的としています。このような情報活用組織が設置されることで、情報活用の範囲は全社レベルにまで広がります。
また、情報活用機能は全社横断組織に所属するため、特定の事業部門に所属するよりも情報活用の目線が上がるというメリットもあります。
リソース調達方式も、第1段階と比べると定常的な情報活用ニーズが期待できる仕組みのため、人材を自社に抱えることができるようになります。ただ実際は、外部リソースを調達する場合も多いです。その結果、ビジネスパートナーとは比較的長期的な関係となり、密な連携がなされる状態でもあります。重要な情報活用ノウハウは外部リソースが持つというケースもあり得ました。
第3段階:事業組織浸透型
BICCに代表されるような、第2段階のタイプは、ごく最近まで情報活用組織の最終進化形態のように扱われてきましたし、現在でも先進的な取り組みだといえます。確かに、全社横断組織になることで、どの部門でも情報活用が可能な仕組みとなりました。その半面、事業部との距離が遠くなり、事業特定の業務知識や分析スキルを十分に満たせないという事態が発生したり、全社優先度の低い課題については後回しにされてしまうといった課題がありました。特に、情報活用ニーズの高い事業組織から見た際に、不便な点が目立つようになりました。
そこで最近登場したのが第3の形態「事業組織浸透型」です(図4)。
この形態は、全社支援組織が基盤となるため、情報活用範囲は全社レベルのままです。しかし、事業組織内にも情報活用機能を取り込むことで、BICCでは難しかった「事業組織ミッションへのコミットメント」を取り戻しています。
所属組織上の特徴は、情報活用機能が事業組織にも所属し、事業および全社支援組織と密な連携が可能になっている点です。一見すると、第1段階への先祖返りにも見えますが、全社横断組織は健在です。むしろ、その機能を事業で用いて企業価値を高めるために、事業部門にも情報活用機能が芽生えたと捉えるのが正しいように思います。
このレベルに到達すると、特に事業部門では業務と情報活用は密接につながっており、分析を行う人材も自社で採用するのが自然です。ビジネスパートナーとの連携は依然として密ですが、第2段階と比較して重要な情報活用ノウハウは自社内に蓄積できるようになります。
特殊な進化:情報活用特化型
最後に、特殊な進化「情報活用特化型」と呼べるタイプを紹介します(図5)。
これは、Web、SNS、オンラインゲームなどの情報サービス業で、レコメンドやトレンド情報といった蓄積された情報から抽出した知見を提供するなど、そもそも情報活用が業務の根幹である企業でよく見られる組織形態です。
第3段階のように情報活用機能が各事業組織にあるだけでなく、その浸透度合いが非常に高いのが特徴です。ビジネスのサイクルも短いため、全社横断型の推進組織というよりは、各事業部門に情報活用機能があるイメージです。
ビジネスパートナーとも連携はありますが、その度合いは比較的疎になり、用途としてはノウハウ提供というより一時的なリソース補充に近くなります。
参考までに、ここまで紹介した情報活用組織の進化を段階ごとの特徴でまとめると次のようになります。
第1段階:部門特化型
- 特定部門のみ情報活用
- 情報活用機能は特定部門に所属
- ビジネスパートナーとは都度連携(案件ベース)
第2段階:全社支援組織(BICC)型
- 全社で情報活用可能
- 情報活用機能は集約組織に(疎な連携)
- ビジネスパートナーとは常時連携(常駐・依存)
第3段階:事業組織浸透型
- 全社で情報活用
- 情報活用機能は事業組織にも所属(密な連携)
- ビジネスパートナーとは常時連携(常駐・リソース補填)
特殊な進化:情報活用特化型
- 情報活用が業務遂行の前提
- 情報活用機能は各事業組織に存在
- ビジネスパートナーとは都度連携(一時的なリソース補充)
まとめ
ビッグデータブームをけん引していたのは、データウェアハウス(DWH)や「Apache Hadoop」、複合イベント処理(CEP)、センサー技術といった基盤技術、いわゆる「システム」の著しい進化でした。その後、BIやビジネスアナリティクス(BA)など、「業務」の側面が注目を集めるようになってきましたが、ビッグデータ活用を業務に定着させるためには、業務とシステム、人/組織の在り方をバランスよく成熟させていく必要があります。
現在では、ソーシャルデータやデータアグリゲーターが提供する外部データなど、自社内に限らないさまざまな情報を扱えるようになり、情報活用組織に求められる要件も変わってきています。事業組織にも専門家がおり、情報活用のクイックスタートが可能な第3段階「事業組織浸透型」の組織形態を取る企業が現れたのは自然な流れだといえます。
前回紹介した「BI成熟度モデル」のような指標・尺度は、「自社の現在の立ち位置を把握する」ときに役立ちます。また今回紹介した「情報活用組織の進化」の段階と特徴は「自社はどの段階を目指すのが効果的かを検討する」ときに生かせます。このような指標や枠組みが情報活用戦略検討の一助になり、ビッグデータ活用の定着に少しでも寄与できれば幸いです。
野村 哲郎(のむら てつろう)
株式会社NTTデータ ビッグデータビジネス推進室。NTTデータにおける、ビッグデータ/ビジネスアナリティクス専門チームに所属。データ分析方法論「BICLAVIS」や、情報活用コンサルティングの中心人物として携わる。
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ビッグデータを活用する組織の作り方
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