有能な人材だけでもダメな理由
あなたの隣の「コラボ人材」が業績アップの鍵を握る
有能な社員が多くいても業績は向上しない。重要なのは他の従業員に貢献できる「コラボ人材」。このような調査結果が講演で語られた。
米Conference Boardが実施した「CEO Challenge調査」で、2014年の最高経営責任者(CEO)の最優先課題は人材であることが明らかになった。しかし、従業員と人材市場の評価を行った後、CEOには行うべき作業があることが分かった。英PricewaterhouseCoopersが毎年実施している「CEO調査」では、回答者の70%が主要なスキルを持った人材の確保について懸念していた。この調査は今回で17回目を迎えるが、この数値はこれまで最も高い値だと、同社のプラクティスリーダーであるエド・ボスウェル氏は指摘する。
このような統計データからも見て取れるように、米Oracleがラスベガスで2月4日~6日に開催した「Oracle HCM World」カンファレンスでは、学習管理と業績評価が注目を集めた。入社時教育を再検討する価値や人材開発の革新的な戦略に関する講演が行われた。また、高い能力を持っている従業員の誤認に対して警戒を促す講演もあった。
有能な社員の新しい標準は「エンタープライズコラボレーター」
「少ない労力でより多くの成果を」というのは人事部でよく使われるフレーズだ。2014年は経済に回復の兆しが見え、CEOも雇用に前向きだ。しかし、企業が従業員の能力を高めて競争力を保つ必要があることに変わりはない。
一般的に従業員の能力の高さが企業の業績の高さに直結するといわれている。米バージニア州アーリントンのコンサルティング会社CEBで企業指導者会議のマネージングディレクターを務めるブライアン・クロップ氏は従業員の能力の高さと業績の間に相関関係はないという驚くべき調査結果を公開した。
この発表に会場はどよめいた。「これが、企業に業績評価システムの抜本的な改革が必要な理由だ」とクロップ氏は話す。
問題はこの考え方ではなく、従業員の能力の定義と評価の方法にあると同氏は主張する。これまで、業務評価は、目標達成能力や職務達成能力など、個人の能力に基づいて行われていた。しかし、この方法では、現代のコラボレーションが必要で横並び組織の職場における従業員の能力の全てを評価することはできないとクロップ氏はいう。現代の職場では、他の従業員と協力したり、他の従業員に貢献するネットワーク力が重要になる。
職務遂行能力とネットワーク力の両方が高い従業員を「エンタープライズコラボレーター」とクロップ氏は呼んでいる。両方の能力を持ち合わせていると相乗効果が生まれる。エンタープライズコラボレーターは「個人の職務内容よりも大きな影響を企業の業績に与える。実際、そのような人材を多く抱える事業部は高い業績を上げている。従業員の約60%が高い職務遂行能力を持っているとされているが、エンタープライズコラボレーターは20%にすぎない。
しかし、エンタープライズコラボレーターは業績評価システムでは評価されないことが多い。高い評価を得ている従業員の65%は非エンタープライズコラボレーターだ。これは、従来の人事考課がトップダウン式で行われることに起因するとクロップ氏は分析している。マネジャーはネットワーク力を適切に評価していない。また、同僚や社外貢献者ほど評価基準に精通していない場合もある。
それでは、どうしたら企業はエンタープライズコラボレーターを育成できるのだろうか。まず、クロップ氏が推奨したのは、エンタープライズコラボレーターを認識する方法を学ぶことだ。高い職務遂行能力を持っている従業員は、タスクを優先し、関係を構築し、変化を受け入れる側の人材である。一方、エンタープライズコラボレーターは、企業への貢献を優先し、同僚のモチベーションを理解し、変化を生み出す人材だ。
企業は、この基準に従って業績評価のプロセスとシステムの微調整を行う必要がある。また、同氏は、評価手法以外に人事考課の焦点を変えることも推奨している。
「評価プロセスは、従業員の能力に作用しない。従業員と対話する方法を変えれば、従業員の能力に影響を与えることができる。後ろ向きで評価的な対話から、前向きで従業員と企業が向かうべき方向性をそろえる対話に変える必要がある」と同氏は話す。
人材開発の鍵を握る従業員の主体性
従業員に権限を与えるポジションにある人事責任者は、従業員の積極性に驚くことがある。米UnitedHealth Groupの人材開発部長スーザン・ウィードマン氏は「ビジネスシーンでの自分撮り」という独創的なタイトルのセッションで講演を行った。そして、企業は従業員が「ただ昇進を待つ」のではなく、自分の手でキャリアアップを図れるようにすべきだと主張した。
米ミネソタ州ミネアポリスのある企業では人材開発システムを刷新した。従業員はポータルサイトを通じてOracleのProfessional Profileツールにアクセスし、さまざまな職務適正のスキルを評価できる。従業員は、各自のプロファイルで「挙手」機能を使用して、特定の職種に興味があることをアピールできる。この情報はカスタムフィードを経由して「Oracle Taleo」の人材採用モジュールに送られる。従業員が各自のスキルを過大評価したり、虚偽の申告を行ったりしないのかという質問に対して、ウィードマン氏は、従業員の自己評価はマネジャーが確認し、双方の認識に隔たりがあると思われる場合には面談を実施していると説明した。
マネジャーは6カ月ごとに従業員とキャリア目標について話し合いを行っている。従業員がある分野の作業に従事しなければならない場合、マネジャーはスキル別にまとめられた人材開発研修のリストを参照できる。このような面談は従業員の成長に役立つ。しかし、マネジャーには個人の目標と組織の目標をすり合わせる「人材管理人」となることが期待されている。
UnitedHealth Groupが新しい人材開発プログラムを導入したのには、幾つかの動機がある。有能なリーダーの育成、従業員の業務への関与と生産性の向上、チャンスを得られないために離職する恐れのある有能な人材をつなぎ止めることだ。ウィードマン氏は、道のりが長いことを認めているが、プログラムの成果は表れ始めていると話している。さらに、自分で能力を向上する権限が与えられている実感を従業員に持たせる、スキル評価を快く思わない国の従業員への対応方法を見つける、特定の職種に対する社内志願者の透明性を高めるなどの課題にも言及した。
ウィードマン氏は、この変化が従業員、経営者、採用担当者を含む全関係者に影響するものだと考えている。「文化の変化がまず起こり、その変化は継続する」と述べている。このような理由から、変更管理と社内マーケティングが重要な考慮事項になる。
戦略的な入社時教育は人事部だけでは実施できない
効果的な人材開発は、適切に行えば、入社初日から始めることができる。入社したばかりの従業員は、最も意欲が高い状態だ。だが、リスクも高い。米Aberdeen Groupによると、従業員の90%が入社後の6カ月の間にその企業に長く勤めるかどうかを決めるという。
これが、テリ・マクブライド氏が講演した戦略的な入社時教育に関するセッションのタイトル「第一印象が物をいう」の由来だ。米バージニア州フェアファックスのICF Internationalで人事部長を務めるマクブライド氏は、2011年10月に自動化された新しい入社時教育プロセスを導入した。同社では、この新しいプロセスで約3300人の従業員が入社時教育を受け、教育期間を2~3日短縮することに成功した。
採用が決まると新しい入社時教育システムのプロセスが始まる。マクブライド氏によると、ICFではTaleo入社時教育モジュールと人事情報システムを統合している。そのため、新入社員の入社日前にレコードとアカウントが用意されるようになっている。新入社員は入社初日に雇用契約フォームに必要事項を入力して、新入社員向けの情報を受け取る準備ができている。それだけでなく、入社後数週間にわたって仕事で必要なサポートを提供する「新入社員の教育係」との顔合わせもセッティングされている。また、従業員の進捗状況を確認し、フィードバックを収集するために、入社後30日と90日のタイミングでアンケートが実施される。
現在、この入社時教育のプロセスは安定したものになっている。だが、最も重要な変化は、人事部以外も入社時教育に関与するようになったことだ。マクブライド氏は次のように語っている。「ICFでは入社時教育を各事業部で行うようにした。人事部で全てに対応する行うことは不可能だ。人事部の役割として、あらゆるノウハウは提供している。ICFには7つの事業部がある。全ての部門で同じように教育が行われるのが理想だが、現実はそううまくは行かない。そのため、各事業部のマネジャーには、新入社員の積極性を引き出すことを期待している」
マクブライド氏の話は入社時教育プロセスの見直しを検討している人の参考になっただろうか。必要なのは、明確な期日を設けた段階的なアプローチを取り、「全てを文書化する」ことだ。
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