“倉庫番”としてのスマートデバイス
落下、振動、ホコリ――「iPad」は倉庫管理に耐えられるか
タブレットとスマートフォンは、今やフロントオフィスから製造現場まで、企業のあらゆる場所を変革しつつある。そして、これらのデバイスは徐々にではあるが、確実にモバイル倉庫管理の利便性を高めている。
「多くの倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)ベンダーが、タブレットやスマートフォン向けのモバイルソリューションを提供している」と語るのは、サプライチェーン管理コンサルタント会社、米Tompkins Internationalの代表トム・シンガー氏である。「もっとも、倉庫の変革は今日突然始まったわけではない。何年も前から倉庫には、比較的高価なRF(無線)端末という形でモバイルが存在してきた」
RFからモバイルデバイスへのシフト
「ただ、武骨なRFユニットは倉庫向けのアプリケーションに似合っているが、次世代のタブレットとスマートフォンには、特にコスト面や他の基幹業務システムとの統合化など、さまざまな強みがある。事実、情報を可視化して、よりインパクトのある方法でやりとりできる能力は、RF端末のテキスト画面とは比較にならない」とシンガー氏。
その結果、特殊なアプリケーション、あるいは企業がよりコスト効率に優れた代替技術を求めるケースでは、幅広い領域で最新のモバイルデバイスが従来のハンドヘルドタイプのRF端末に置き換わりつつある、と同氏はみる。「ハンドヘルド、あるいはウェアラブルモデルなど形状にもよるが、RF端末は数千ドルのコストが掛かる。iPhoneやAndroidの方がはるかに安価だ」とシンガー氏は説明する。「倉庫は過酷な環境だが、果たして3~4メートルの高さから落下しても壊れないデバイスが本当に必要だろうか。iPadを持ち込むためには、ほこりを完全に除去しなければならないのだろうか」
米人材コンサルティングサービス会社O.C. Tannerでは、iPadなどのタブレットをコスト効率に優れたRF端末の代替技術として注目している。そう説明するのは、同社のサプライチェーンシステムアナリスト、ダン・マーフィー氏だ。もっと重要なことは、それらのデバイスが大きな画面となじみのユーザーエクスペリエンスを武器に新しいユースケースの道を開くことだ。
「ユーザーは自宅でiPadに慣れ親しんでいる。職場でもiPadを使うことに違和感はないはず」とマーフィー氏はいう。「いつも使っている慣れ親しんだものであれば、ユーザーはストレスを感じずに済むだろう」
新しいモバイル倉庫管理ユースケース
日常的に使い慣れているという点を別にしても、iOSやAndroid、Windowsモバイルデバイスなどの新しいカテゴリーの端末は、「倉庫内の状況を可視化できる」「作業員に作業工程を明確に指示できる」「管理者にデータのスナップショットを提供し、リアルタイムの意思決定を支援できる」点などにおいて、圧倒的に有利だ。WMSのコンサルティングと実装を専門とする米GetUsROIの社長、マーク・フラリック氏は、そうした優位性の注目すべき事例を幾つか挙げる。例えば、ワークフローのボトルネックを赤や黄色、緑のインジケーターを使って強調したり、例外処理をビジュアルで指示したりするような特殊なアプリもある、と同氏。
「そうしたアプリは、テキストベースの融通の利かないシステムと異なり、他の業務システムとより自然にインタフェースが取れる」とフラリック氏はいう。「また、センサー警報との統合化に優れていたり、無線機の代わりにSkypeを使って、作業員同士でコミュニケーションを取ったりすることもできる。一般のフォークリフトドライバーや梱包作業員にはそれほどインパクトはないかもしれないが、データを共有するなど、現行の業務ワークフローとの統合化を考えるハイエンドユーザーにとっては、大きな力になるだろう」
倉庫に入ってきた品物を、RF端末に代えて、タブレットやスマートフォンで追跡することも、コンシューマーグレードのモバイル技術のもう1つの有力なユースケースだ。そう指摘するのは、独立系サプライチェーンコンサルタントのスティーブ・フィリップス氏である。「多くの企業は遠隔地に倉庫を持っており、そうしたところで完璧なRFネットワークを敷設することは、コスト面で不都合だ」と同氏。「そうした場所では、タブレットやスマートフォンでコミュニケーションを取り、配送センターから出荷された商品を追跡する方がコスト効率の高い方法となるだろう」
そして、新しいモバイルデバイスの可能性を開くもう1つの分野が倉庫管理である。「倉庫の管理者がWMSでリポートを実行するために、物理的に事務所やPCの前に座る必要はなくなる。デバイスを片手に倉庫の通路を移動しながら、リポートを開き、さまざまな情報にアクセスして、リアルタイムに意思決定を下せるようになるだろう」と語るのは、サプライチェーンコンサルタント会社、米enVistaのパートナー、ケン・ミューレン氏だ。
「モバイルデバイスのタッチスクリーン、カメラ、ビデオ機能は、倉庫に運び込まれたときや出荷する前に破損した商品の画像撮影から、注文を適切に受け取る方法など、特定のワークフローを指示するためのビデオクリップまで、さまざまなタスクにうってつけだ」とミューレン氏は語る。
もっとも、新しいデバイスは確実にやって来るが、これまでPCワークステーションの前にふんぞり返っていた管理者たちをモバイルワークフローに組み込むことには、文化的なハードルが存在する。「倉庫管理者たちにとって、タブレットを持ち歩くことは、他のテクノロジーに立ち向かうよりも大きな文化的変化だ」と語るのは、サプライチェーンコンサルタント会社、米Commonwealth Supply Chain Advisorsのマネージングディレクター、イアン・ホブカーク氏である。「彼らがプライベートでタブレットに慣れ親しむようになれば、大きな変化が始まるだろう」
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