ビジネス活用に注目
iPhoneのキャッチコピー「そのためのアプリがある」は5年たって実現されたか
iPhoneのかつてのキャッチコピー“There's an app for that”(そのためのアプリがある)は膨大な数のアプリが開発されたことで実現されたように思える。しかし、社内開発の業務アプリではどうだろうか?
“There's an app for that”(そのためのアプリがある)とは、かつて「iPhone」を爆発的売れ行きに導いたキャッチコピーだ。米Appleの象徴的な広告で使われ、私たちの目に焼き付いたこのキャッチコピーは、後から来る世界を予言していた。今では、目的の機能をしっかり果たしてくれるユーザーフレンドリーなモバイルアプリがあふれている。
問題なのは、あれから5年たった今も、多くのIT部門にとっては“そのためのアプリがある”という状態になっていないことだ。
iPhoneのネイティブアプリで職場のメールを受信
だからといって、従業員がモバイル端末を使いたがらないわけではない。その逆だ。私自身、iPhoneと「iPad」のネイティブアプリで職場の電子メールを受け取っている。外出先では、「CloudOn」を使って記事を書き、「Microsoft OneDrive」を使ってファイルにアクセスする。会議中には「Notability」を使ってメモを取る。
だが、こうしたアプリのうち、会社から支給されたものが幾つあるだろうか。ゼロだ。モバイル端末でメールに接続する手順は、同僚から同僚へ口コミで伝わるだけで、IT部門がそれを許可して可能にしているのは分かっているが、かといって推奨されているわけではない。
ほとんどの企業で働く人々の状況が同じであることは、数字からも分かる。
2013年12月に700人以上のIT意思決定者を対象とした米Citrix Systemsの調査報告書「Citrix Mobility Report」によれば、企業で使われている全アプリケーションのうち、モバイルアプリの割合は6%で、2014年末までの予測でもせいぜい9%にしかならない見通しだという。
企業内業務アプリを本格的に導入しているのは概して大手企業で、それだけ多くのアプリを構築、管理するのに必要なリソースがあるところだ。そう話すのは、米VMwareが2014年1月に買収したエンタープライズモバイル管理(EMM)の米AirWatch会長、アラン・ダビエレ氏だ。
「多数の業務アプリを持つ企業があり、有意義な仕事がたくさんある」とダビエレ氏は話す。
業務モバイルアプリ導入のハードルを下げる
Citrixのアンケート回答者の90%が、企業にとって重要なモバイルアプリとして「電子メール」を挙げた。それ以外に50%を越えたのは「LOB(基幹業務)」アプリだけだった。モバイルユーザーが業務に使える多様なアプリへの関心は確かにあるものの、認知度はまだまだといったところだ。
企業内業務モバイルアプリが本当に題目通りの普及を果たすには、導入数が増えなければならない。その目標実現のため、ベンダー各社は、あらゆる規模の企業における安全なモバイルアプリの購入の他、開発や運用をもっと簡単にする取り組みを進めている。
例えば、Appleの大量購入プログラム「Volume Purchase Program(VPP)」で企業がアプリを購入して従業員に支給するには、以前は次の方法しかなかった。まず、App Storeで購入用コードを購入し、それを従業員に配布する。従業員は、その購入用コードを使って、自分のApple IDで端末にアプリをダウンロードする。従業員はそのアプリを自分で所有することになる。
これが最近変更され、IT部門が発注書でアプリを購入してユーザーのiPhoneやiPadに直接アプリを支給できるようになった。また、アプリは会社が所有することになり、従業員が会社を辞めたときなどは、アプリを無効にしたり、別の従業員へ移したりすることもできる。
VMwareやCitrixなどは、企業内アプリストア、セキュリティ保護されたWebブラウザ、デスクトップとアプリケーションの仮想化ソフトウェアを用意して、モバイルユーザーにアプリを支給する環境を全面的に支援する。
また、自社開発も、以前ほど厄介ではなくなりそうだ。米調査会社Gartnerは、2014年はHTML5がモバイル開発プラットフォームの主流になると予測しており、それによって、Webブラウザがあればどの端末でも実行可能なアプリを企業で開発できるようになると見ている。
他のアプリ開発プラットフォームも、企業におけるモバイル開発の簡易化を進めている。エンタープライズモバイルソリューションを手掛ける米Good Technologyが2014年3月下旬に発表した「Good Dynamics Shared Services Framework」のアップデート版では、共通機能をサーバ上で共有できるようになった。例えば、社内予定表システムを使うアプリを3つ開発することにした場合、その3つのアプリで社内予定表システムを共有できる。各アプリの開発者は、3つのアプリに対して個別に予定表機能を作成しなくても済む。
こうした動きを見ても分かる通り、業務用のモバイルアプリは、まだまだユーザーのニーズを満たす段階に至っていない。IT部門にとっては、“そのためのアプリがある”とは必ずしもいえない状況だが、こうした取り組みを続けていけば、いずれはそういえる日も来ることだろう。
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