IDCフロンティア「マネージドクラウド」導入事例
1日1000万PVの朝日新聞デジタルがクラウド移行に求めた要件とは?
朝日新聞社が運営する「朝日新聞デジタル」は2013年夏に、ITインフラの一部としてIDCフロンティア「マネージドクラウド」の利用を始めた。サイトの利便性と将来的な拡張性を高め、新規サービスの開発により注力する。
朝日新聞デジタルは言わずとも知れた国内屈指のニュースサイトだ(画像1)。2014年5月現在、会員数は150万人を超え、1日約1000万のページビューは、大きな事件・事故があれば簡単に跳ね上がる。実際、東日本大震災のときは通常の3倍近いアクセス数をさばいた実績も持つ。事実上、公共性の高い情報サービスの1つになっている。それを支えるITインフラの一部は、2013年夏から外部のクラウドサービス上で運用されている。
既存施設の閉鎖で強いられた新センター立ち上げ
朝日新聞デジタルでは従来、主に2つのデータセンター事業者の施設を利用していた。自前の機器を持ち込んで自ら運用管理するハウジング型である。ところが2012年春、1つの事業者からデータセンターの閉鎖を突如知らされる。そこで稼働していたのは6台のラックに収容された70台程度のサーバやネットワーク機器。システム規模はとりわけ大きいわけではなかったが、折しも朝日新聞デジタルは全面的な会員制となり(2012年1月に旧アサヒ・コムと統合)、サイトの機能拡張を急いでいた。そうした状況の中、新たなデータセンターを探し出し、移転する必要があった。期限は1年半だった。
新データセンター立ち上げのプロジェクトが即座に動き出す。朝日新聞社 デジタル本部 デジタル技術部 次長の後藤浩二氏は「3カ月かけて各社のデータセンターを見て回り、4社からサービスの提案を受けた。設備コストだけでなく運用コスト、サポート力など総合的な観点から移転先を判断した」と話す。結局、採用したのはIDCフロンティアが手掛ける「IDCフロンティア クラウドサービス」の1つで、仮想マシン提供サービスである「マネージドクラウド」だった(参考:オープン性と品質が強み、国産クラウド老舗のIDCフロンティア)。つまり、自前運用の物理環境から、IaaS(Infrastructure as a Service)利用の仮想環境へ大きく転換する道を選んだのだ。
IaaSを選択した理由について後藤氏は、「調達のリードタイムや運用コストを考えると、クラウドが有利だった」と話す。従来はサーバの調達に1~2カ月もかかったり、ハードウェア障害のたびにエンジニアがデータセンターに出向いて対処しなければならなかった。デジタル本部に所属するエンジニアは30人で、朝日新聞デジタルのネット事業全体の技術をつかさどる。そのため、インフラを専任で見る担当者はおらず、アプリケーション開発など他業務と兼任だ。朝日新聞社 デジタル営業センター 次長の林 久之氏は、「インフラの運用管理における余計なプロセスをなるべく省くことによって、新しいアプリケーション開発などに人的リソースをより多く割り当てることが可能になり、短期間でのサービス開発に役立っている」と話す。
災害対策を考慮したハイブリット構成
数あるIaaSの中でもIDCフロンティアのマネージドクラウドを選んだのは、「データセンターと自社ネットワークと接続には専用線を用いる」という要件が大きく影響している。既存のデータセンターと同様の構成にするために、自前のネットワーク機器をデータセンターに持ち込む必要があった。つまり、ハウジングとIaaSの“ハイブリッド”である。マネージドクラウドではそれが可能だったのだ。専用線接続が可能なIaaSは他にもあるが、普通は何かしらの制約を伴うもの。その点でマネージドクラウドは、サービスのカタログ化・セルフ化を基本とする一般的なパブリッククラウドのIaaSと違い、カスタマイズ性やサポートを重視しているのが特徴だ。「最終的に残った候補2社の中でも、より細かなレベルでわれわれの要求を受け入れてくれた」(後藤氏)という。
ただ、クラウド移行がすんなり決まったわけではない。「前の年に起こった東日本大震災の経験から、災害対策という観点も新データセンターの要件となった」(後藤氏)という。この懸念を払拭するため、新データセンターの立地には気を遣った。首都圏での大規模災害を想定し、IDCフロンティアの九州にあるデータセンターを選び、東京での大災害時でもサービスが継続可能になるようにした。
2012年夏から新データセンターでのシステム導入が始まる。そして同年秋に旧データセンターから新データセンターへ徐々に切り替えを行い、完全に切り替わったのは2013年夏だった。つまり、導入から丸1年をかけたわけだ。朝日新聞デジタルでは当時、「紙面ビューアー」(画像2)など次々と追加される新機能やシステム要件があり、新機能開発と並行して新データセンターへの移行を実施した。
アプリケーションによってクラウドを使い分け
2013年夏から現在まで新データセンターは順調に稼働しているという。林、後藤両氏は「われわれに見えている範囲では障害やパフォーマンス問題は発生していない。運用管理は圧倒的に楽になった。今まで1~2カ月かかっていたサーバ調達が1~2日で済んでいる。これならサービス開発のネックにならない」と導入効果を高く評価する。
なおマネージドクラウドは基本、各リソースを月単位で契約する定額制だ。臨機応変にオンデマンドやオートスケールで各リソースを拡張・縮退できるわけではない。大きな事件・事故によりアクセスがスパイクした際に困りそうだが、朝日新聞デジタルの場合、特に問題はないようだ。後藤氏がこう説明する。「コンテンツデリバリーの仕組みは別途導入済み。オリンピックやワールドカップ、選挙など、アクセスが極端に伸びそうなイベントはあらかじめ別サーバを準備するなど、システム全体への負荷を下げている」。つまり、アナログ的な手法でスパイクをしのいでいる。朝日新聞デジタルのシステム要件は、マネージドクラウドのサービス体系に合っているといえる。
一方、利用するクラウドをマネージドクラウドに限定するつもりはなく、アプリケーションに応じて最適なものを選択していく考えだ。パブリッククラウドの定番ともいえる「 Amazon Web Service」(AWS)、「IIJ GIO」なども採用している。「それぞれのサービスの特徴に合わせて、最も適したシステム構成を選択している」(後藤氏)という。
新聞社では今後もWeb経由での記事の閲覧の比重が高まっていくのは確実で、ITインフラには堅牢性と柔軟性を兼ね備え、手の掛からないものが求められる。朝日新聞デジタルにおいてはクラウドサービスがますます活用されていきそうだ。
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