初代マスタングの新聞広告もはっきり表示
New York Timesは4万6592号分ものバックナンバー配信をどう実現したのか
米New York Timesが刷新した「TimesMachine」では、何十億枚にも及ぶ小さな画像を処理し、1851~1980年のバックナンバーを配信できるようになった。その実現に不可欠だったのが米Amazon Web Servicesのクラウドサービスだった。
米New York Times紙は2014年、米Amazon Web Services(以下、AWS)のクラウドサービスを用いてデジタルアーカイブを刷新した。何十億枚にも及ぶ小さな画像を処理し、関心のある購読者に1851~1980年のバックナンバーを配信できるようにした。
アーカイブサービス「TimesMachine」が開始された2008年当時から、AWSのストレージサービスが使われていた。ところが、検索/アーカイブ/言語解析担当ディレクターのエバン・サンドハウス氏によれば、2014年4月に実施したTimesMachineの刷新プロジェクトはさらに複雑だったという。
TimesMachineでは当初、紙面のプレビュー画像をクリックすると、拡大画像が表示される仕組みだった。読者は記事の見出しを判読することはできても、本文を読むことはできなかった。紙面の拡大画像にはPDFファイルへのリンクがあり、そこから記事を閲覧できた。
「新しいTimesMachineでは、1つの体験の中で、全体として新聞らしさを感じてもらいながら、各記事も読んでもらえるようにすることを目標とした」とサンドハウス氏は説明する。
膨大な小さな画像を処理
同紙の日曜版を全てダウンロードするためには、クライアント側で約300Mバイトという巨大な帯域幅が必要になり、ほとんどの読者のマシンが対応できなくなる。
「1つの号として見せようとすれば、iTunesのアルバム数枚分のデータに匹敵する。しかし読者の関心は恐らく、記事1本だけなど非常に限られる」(サンドハウス氏)
そこで同氏とプロジェクトチームは、地理情報システム(GIS)で地図製作を行っている業界からヒントを得た。この業界は、大型地図の詳細表示で同じ問題に直面していた。
GISコミュニティーでは、画像のタイル化を通じてこの問題に対応している。新しいTimesMachineでは、9000×7000ピクセルの画像を、複数の拡大レベルでコンピュータ処理して256×256ピクセルのタイルに分割した。フロントエンドではオープンソースのGISソフトウェア「Leaflet」を使い、読者が見たい部分に対応したタイルを取得できるようにした。
サンドハウス氏は言う。「まず250万枚の画像からスタートした。これは大体、新しいTimesMachineのページ数に相当する。古いTimesMachineではページごとに拡大版と縮小版の2枚の画像をコンピュータ処理していたが、新しいTimesMachineでは各ページにつき約1000枚の画像を処理している」
AWSストレージの現在と過去
これにより、New York Times紙が必要とするAWSストレージの大きさは、約500万からほぼ25億個のオブジェクトに相当するサイズへと増大した。データは「Amazon Elastic MapReduce」(以下、Amazon EMR)サービスで処理され、「Amazon Simple Storage Service」(以下、Amazon S3)のストレージに保存される。
古いTimesMachineでは、まだAmazon EMRが存在していなかったため、同紙自らが「Apache Hadoop」環境を構築してMapReduceの作業を行う必要があった。
しかし今回は「多くのインフラがすぐに使える状態で存在していたので、はるかに簡単だった。自分たちの作業に合った設定値を提供するだけで済み、サーバを適切に設定するために割いていた数週間が大幅に短縮された」(サンドハウス氏)
コンピュータ処理する画像ファイルの量は桁違いに増えたが、MapReduceの作業は、「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)の「c1.xlarge」インスタンスのマシン400台を使い、わずか3日で完了できた。古いTimesMachineのときは数千台が必要だった。
歴史に脈絡を
このプロジェクトによって、New York Times紙の4万6592号分のデジタルアーカイブが出来上がり、新聞のページから画像スキャンした文字は全て、Webブラウザを離れることなく簡単に読めるようになった。
同紙はこのアーカイブを使い、例えば1964年の万国博覧会開催から50年、米Ford Motor製自動車「Mustang」(マスタング)登場から50年といった記事を囲んで脈絡を持たせている。初代マスタングが発売された1964年当時の全面広告もはっきり読める。
全体的にはAWSの新しいサービスによって、新しいTimesMachineの開発作業は大幅に進歩した。ただサンドハウス氏は、ZIPファイルのような形で大量のファイルを1本のファイルとしてアップロードして、Amazon側で解凍できる機能を望んでいる。
「それができればAmazon S3にデータを保存しやすくなる。ただこれは、本当に取るに足りないリクエストだが」と同氏は語った。
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