SDN JAPAN 2014リポート
もう“実験”じゃない これからのSDNの話をしよう
SDNに特化したイベント「SDN JAPAN 2014」が開催。全体を総括したパネルディスカッションからSDNの課題と展望を読む。
2014年10月30、31日の2日間、恵比寿 ザ・ガーデンホール(東京都目黒区)において、「SDN JAPAN 2014」が開催された。これは、企業がSDNの利点や課題について議論を深めるためのイベントで、2012年から年1回開催されている。ベンダー各社の製品展示や大小さまざまなセミナーが行われ、SDNの進捗状況と現時点での成果を確認することができた。本記事では、31日に行われた「SDN Japan 2014総括とこれからのSDN」と題したパネルディスカッションから、SDNが抱える現状の課題と展望を読み取っていく。
SDNは実用のフェーズへ
パネルディスカッションに登壇したのはSDN Japan 2014実行委員長のストラトスフィア 浅羽 登志也氏、NTTコミュニケーションズ 山下達也氏、テコラス(※) 伊勢幸一氏の3人。NECの加納敏行氏が司会を務めた。
※2014年11月1日に、データホテルから社名変更。
冒頭、司会の加納氏は、2日間のセッションを振り返りつつ、SDNの現状の方向性を3点にまとめた。
1つ目はオープン化が進んできていること。「ネットワークにコンピューティングの文化が芽生えてきている。オープンプラットフォームが拡大し、実装、評価がオープンな場で進んでゆく。また、ユーザーの立場からいえばベンダーロックインからの解放、さらに自らオープンソースのソフトウェアを組み合わせてネットワークを自分たちで作っていくという動きも出てきている」と加納氏はソフトウェアでネットワークを制御するSDNの意義を強調。初日に行われたオープンソースSDNプロジェクト「OpenDaylight」のエグゼクティブディレクター Neela Jacques氏の講演において、世界中で30以上のコントローラーが出てきているという話が取り上げられたことにも触れ、テクノロジーの選択肢が増えていることを説明した。
2つ目が、ミッションクリティカルな領域への浸透。この1年ほどの間に医療や鉄道、金融などでSDNを採用する動きが広がり、高可用な分野での導入実績が蓄積されてきているという。
3つ目に示したのが、技術開発から応用への移行。SDNはもはや新技術ではなく、実際の運用の成果を技術へフィードバックするフェーズへ移ってきているという。実際にSDN技術を活用した新しい広域ネットワークサービスも始まっており、東京でオリンピックが行われる2020年にはSDN網の整備が幅広く進むといった話も紹介された。
SDNだけでは企業には“刺さらない”
こうした総括を踏まえた上で、浅羽氏は「具体的なケースを想定とした取り組みが進んでいる。着実に進んでいるのは通信キャリアの中でのSDNの評価とデプロイメントだ」と自身の印象を語る。
ただし、「エンタープライズ用途では、SDNありきという話だけでは難しい。単に自動化というだけでなく個別の企業のニーズに対して“刺さる”見せ方が必要」と、企業に受け入れられる切り口の重要性を語った。
“夢の次世代ネットワーク”と言いはやされることも多いSDNだが、掛け声だけで関心を維持できたのは既に過去のこと。実際の導入事例に勝るものはない。
山下氏は、一番印象に残ったセッションとして、東京大学の中村 遼氏が発表した「Interop Tokyo 2014 ShowNetにおけるSDN/NFV」の事例紹介を挙げた。「前年のパネルディスカッションでも、ベンダーの発表会になるよりもユースケースを持ち寄れるようになれるといいという話をしていたが、実例が見られるようになったのはよかった」と述べている。
一口にSDNといっても、導入が考えられる領域は多岐にわたる。その点において、2012年から本イベントに参加している伊勢氏は「キャリア系SDNと非キャリア系SDNでハッキリと分かれてきた」という印象を持ったと語る。前回までは丸ごとSDNとして扱われて、話を聞いていてもあまり面白くなかったが、非キャリア系の事業者に対するソリューションが事例として増えてきて、SDNが今までより身近になってきたという。
自分で作るネットワーク
オープン化が進み、ネットワークに欲しい機能を自分たちで作っていこうという機運が高まっていることについては、ベンダーの立場、ユーザーの立場でさまざまな意見があるようだ。
浅羽氏の所属するストラトスフィアはSDNを制御するソフトウェアを提供している。「スキルレベルとやりたいことにもよるが、われわれの提供するプロダクトに顧客が手を入れる場合、通常の利用とはライセンスを分けることも考えていかなくてはいけない」(同)
一方、山下氏が所属するNTTコミュニケーションズは、まさにユーザー企業の立場で開発を手掛ける体制も備えているが「最終的には、自社がやるより効率的で良いものを作れるところが開発することになるのではないか」と語る。ただ、発注する側が自ら開発に携わろうとすることは、作ってもらおうとするものについて理解を深めることにつながると、その意義は認めている。
また、データセンターのホスティングやクラウド運用代行を手掛けるテコラスの伊勢氏は、SDNでネットワークにコンピューティングの考え方が芽生えてきたことを歓迎しつつも「われわれがSDNのツールを自分で作ってしまうのは、単に使いやすいツールがないからでもある」という事情を明かす。
SDNでなければできないこと
SDNに期待される役割の一例として、加納氏は海外の事例についても言及した。
米NSF(National Science Foundation)は“インターネットの次”を目指し「GENI」(Global Environment for Network Innovations)と呼ばれる新たなネットワークの開発を模索しているが、そこでもインフラとしてSDNが活用されるという。
加納氏は他にも、災害時に無線LANアクセスポイント(AP)を積んだドローン(無人飛行機)やロボットを連係させて、人の立ち入れないところにネットワークを仮設する「Smart Emergency Response Systems」、工場内の製造設備をネットワークで制御する「Smart Manufacturing」、電力の供給網をモニタリングし、有事の際に制御計を瞬時に切り替える「Smart Energy CPS」など、SDNを利用して新しいアプリケーションを作る米国のプロジェクトを紹介した。
こうした取り組みは迅速でコスト最適かつ柔軟という、SDNならではの特質が生かされたものだといえるだろう。
2015年に向けての課題
ガートナーが毎年発表する「先進テクノロジのハイプ・サイクル」によれば、「ソフトウェア定義」はまだ黎明期であり主流として採用されるまでに10年以上掛かると見られている。果たして2014年の時点で、SDNというテクノロジーはどういったポジションを占めるのか。これについても意見が交わされた。
浅羽氏は「どの立場で見るかによって違うと思うが、ユーザーである一般企業にとっては、一部のニッチな需要を除いては、SDNの普及はまだこれから」という見方を示した。一方、山下氏は、通信キャリアとしてSDNを利用してきた立場から、「現状のSDNには少なからず課題が残る」と主張。一方で「企業向けソリューションがまだ十分に出てきていない」と、非キャリア、つまり一般企業向けにも普及するのはこれからであると強調した。
これからのSDNは、運用しつつその成果をフィードバックして開発を進めるDevOps的な展開で発展していく可能性もあるという。地道に事例が蓄積され、2015年にはSDNがより一般的なテクノロジーになっていくことを期待したい。
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