SDNや仮想化の台頭で評価軸が複雑に
ネットワーク業界ナビ SDN時代のリーダー企業に選ばれるのは?
SDNやネットワーク仮想化などネットワーク業界は大きな技術変革のさなかにある。多くのエンジニアはこれからのネットワークインフラをどうすべきか戸惑いを見せている。本稿では、ネットワーク業界の現状を考察する。
SDN(Software Defined Network)やネットワーク仮想化が盛んにもてはやされているが、ネットワークエンジニアにとって最大の関心事は、物理スイッチングインフラだ。
だが、SDNや仮想オーバーレイネットワークは、IT部門の市場における選択を難しくしている。多くのCIO(最高情報責任者)は以前から、適切な購入決定を行うための指針として、調査会社、米Gartnerの「Magic Quadrant」(マジッククアドラント)を参考にしてきた。GartnerがMagic Quadrantで「リーダー」に位置付けたベンダーを選べば、間違いないというわけだ。ところが、データセンターネットワークに関しては、こうした確実な選択肢は見つからない。データセンターネットワーキングのMagic Quadrantでは2年連続で、「リーダー」に位置付けられている企業がないからだ。出荷ポート数が業界最大の米Cisco Systemsにもそのお墨付きは出ていない。このことは、この業界が過渡期にあり、ネットワークエンジニアには慎重なかじ取りが求められることを示している。
同じ土俵でのスイッチングベンダーの比較がSDNで厄介に
ほとんどのベンダーが急ピッチで新たな技術展開を行い、SDNや仮想オーバーレイネットワークへの対応を推進している。そのために多くのエンジニアが、今後どのように進んでいくべきか戸惑っていそうだ。しかも、追い打ちを掛けるかのように、Gartnerは米VMwareを(VMwareはネットワークポートを持つ物理的な機器を出荷したことはなく、今後も恐らくないだろう)、Magic Quadrantで「概念先行型」に位置付けた。オーバーレイソフトウェア「NSX」を手掛けているからだ。
SDNが広く注目される前は、ベンダーは優れたデータセンターファブリック製品の開発でしのぎを削っていた。Ciscoと米Brocade Communications Systemsは「TRILL」(Transparent Interconnection of Lots of Links)を採用。米Avayaと仏Alcatel-LucentはSPB(Shortest Path Bridging)を、米Hewlett-Packard(HP)は両方を採用した。米Juniper Networksはプロプライエタリなファブリック「QFabric」を開発。米Arista Networks、米Dellなどはリーフ/スパイン型アーキテクチャ(※)が効果的と判断した。
※ 従来の3層設計ではなく、リーフ(葉)とスパイン(幹)の2層で構成されるフラットなアーキテクチャ
今も業界ではこれらの技術が乱立したままだが、それらは以前ほど話題にならなくなっている。
「顧客が私と話をするときに、ファブリックに触れることはあまりない」と、Gartnerの副社長で、データセンターネットワーキングのMagic Quadrantの作成責任者を務めるマーク・ファビ氏は語る。「ファブリックは古いニュースになったのかと言われれば、私はある程度否定しない。データセンターアーキテクトにしてみると、あまりに多くの新しい技術が売り込まれるため、とても全てを吸収しきれない。過去5年間にネットワークストレージ統合、FCoE(Fibre Channel over Ethernet)、そしてファブリックと来て、今度はSDNが姿を見せ始めた。受け止める側としては、ちょっと手に負えない。われわれがファブリックについてあまり話さないのは、SDNが旬で、勢いがあるからだ。しかし、ファブリックは依然として重要だ」
そうした中で、Ciscoは「Application Centric Infrastructure(ACI)」を軸としたSDNのビジョンをネットワークエンジニアに広めようとする一方で、物理アンダーレイのことも忘れていない。現在も、コアとアクセスの両方のレベルでスループットを高めることに力を入れている。
「われわれが2008年に『Nexus 7000』で顧客のために解決した問題は、10ギガビットイーサネット(GbE)への移行だった。今は、どうやって10ギガビットから40ギガビットに移行するかが問題となっている」と、Ciscoの上級副社長を務めるソニ・ジャンダニ氏は説明する。「10GbEがサーバのマザーボードでサポートされるようになるからだ。これはクラウド企業から始まったが、2014年はエンタープライズを含む企業市場でも主流になる見通しだ。コアでは40ギガビットへの移行が、そしてサーバアクセスレイヤーでは1ギガビットから10ギガビットへの移行が進むだろう」
大半の企業では今も物理データセンターネットワークが優先
あるネットワークコンサルティング会社でネットワークアーキテクトを務めるボブ・マクーチ氏によると、同氏の顧客のほとんどは、優れた物理ファブリックの基本的な要素を重視しているという。「彼らは信頼性の高い機器、ベンダーの的確なサポート、優秀なネットワーク管理者を見つける眼力を求めている」と同氏。「DevOpsや自動化に移行し始めている顧客もいるが、少数派だ。顧客の間では、APIを使ったプログラミングの自由度が高い製品や、OpenStackと連携できる製品への関心は低いとみられる」
「きちんと物事を進めるには、ファブリックが間違いなく重要だ」と、あるグローバルシステムインテグレーターでコンサルティングシステムエンジニアを務めるテレン・ブリソン氏は指摘する。「ファブリックは、全てを支える土台だ。実はVMware製品やオーバーレイの効果は、どのような物理マシンの上で運用されるかによって左右される。スイッチングとルーティングの基盤を整える必要があることに変わりはない。ファブリックが肝心要というわけだ。その導入以降に行われる意思決定にも影響を与えることになる」
データセンターネットワーキングのMagic Quadrantは、ファブリックを同じ土俵で比較した結果では必ずしもない。SDNとネットワーク仮想化の影響があるからだ。Magic Quadrantの位置付けでは、Ciscoは唯一「チャレンジャー」とされている。HP、Arista、Juniper、Brocadeは、いずれもファブリックまたはファブリック的なアーキテクチャを持っているが、仮想ポートしか販売しないVMwareと同じく、「概念先行型」と位置付けられている。
しかし、こうした仮想ポートは現在のデータセンターネットワークに欠かせない。SDNとネットワーク仮想化が、ネットワーキングというパズルのピースとしてますます重要になっているのはそのためだ。
「データセンターアーキテクチャをみると、最初の物理アグリゲーションレイヤーは、ハイパーバイザーと仮想スイッチに肩代わりされるようになってきている」と、Gartnerのファビ氏は語る。「それらの仮想ポートが有料で販売されているかどうかはさておき、ソフトウェアベンダーと仮想スイッチは、データセンターで一定の役割を果たしている」
ベンダーの過剰な提案に要注意
ネットワークエンジニアがSDNやオーバーレイを導入したいかどうかにかかわらず、ネットワークの基盤となるファブリックが極めて重要なことに変わりはない。ファビ氏は、技術の選択よりも、企業がどのようなアーキテクチャアプローチを採用するかの方が重要だと強調する。企業は、「Cisco FabricPath」「Brocade VCS」「Juniper MetaFabric」「HP FlexFabric」「Avaya VENA」のどれを選択しても、特定のアーキテクチャ原則(例えば、ネットワークのフラット化、オペレーションの簡素化、最大限の自動化など)を推進する必要がある。
また、ネットワークエンジニアは、ベンダーから提案されるアーキテクチャが本当に自社のニーズに対応しているかどうかを見極められる力量を身につける必要がある。スケーラビリティと高い信頼性を併せ持つシャーシスイッチは、データセンターネットワークのコアやバックボーン用のスイッチとして長らく主流の座を占めてきた。ネットワークの拡張に応じてラインカードを追加できるシャーシスイッチをこれらの用途で設置することは、21世紀のデータセンター設計の定石となっている。
しかし、マーチャントシリコン(ネットワーク機器向けの汎用チップセット)を搭載する固定フォームファクタスイッチを採用したリーフ/スパイン型アーキテクチャは、新たな可能性をもたらしている。このアーキテクチャでは、データセンターは、高価なシャーシスイッチに新しいラインカードを追加するのではなく、固定スパインスイッチを増やしてスケールアウトできる。
「ベンダーのエンタープライズデータセンター向け提案は、過剰装備になりがちだ」とファビ氏。「彼らは、私には昔ながらの、あるいは時代遅れの原則に思えるものを採用している。私が目にする提案はどれも、いまだにデータセンターコア向けにシャーシスイッチの冗長ペアを用意している。これらのスイッチに搭載されたラインカードはせいぜい1~2枚かもしれない。その場合、こんな風に考えてしまうのではないか。『使えるスロットが7~10基や12基もあるシャーシスイッチを買う意味があるだろうか。その4分の1のスロットしか使いそうもないのに』」
多くのベンダーは、ネットワークエンジニアに提供するアーキテクチャのライトサイジング(適正規模化)を学んでいないと、ファビ氏は指摘する。
「固定フォームファクタスイッチの方がずっと経済的であり、多くの場合、パフォーマンスも高い。バックプレーンなどがあるシャーシスイッチとは異なり、多数のASICの処理が不要だからだ」とファビ氏。「ほとんどのベンダーは、ライトサイジングされたソリューションを持っている。一部のベンダーがそうしたソリューションで市場をリードするだろう。企業が実は大規模対応を求めているのでなければ、Dell、Arista、Alcatel-Lucentが固定フォームファクタでリードする可能性が高い。いずれにしても、どのベンダーも、その気になればライトサイジングできる」
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