2人の専門家に聞いた
Linuxをメインフレームで運用? 「高いROI」「万人向けではない」と割れる専門家の意見
米IBMの「Linux on System z」とLinuxサーバディストリビューション。専門家の意見を踏まえ、どちらの選択肢が自社のIT環境に合うかを判断しよう。
「Linux」をメインフレームで運用すべきだろうか。
その議論については賛否両論があるように、「Linuxメインフレーム」(Linuxが稼働するメインフレーム)が全てのIT環境に適しているというわけではない。では、読者が所属する企業においては、どのように考えるべきだろうか。本稿では、その判断に役立つように、Linuxワークロードを「メインフレームで実行する」と「分散サーバ環境で実行する」という対極のアプローチをそれぞれ勧める2人の専門家の意見を紹介する。
「Linuxをメインフレームで運用する」派
Linuxメインフレームを利用する目的は、ワークロードをメインフレームに配置することで、信頼性、可用性、セキュリティ、パフォーマンスを確保することにある。
「簡単に言えば、大量のメモリを搭載し、極めて電力効率が高く、高度な管理が可能な環境で、多数の仮想マシンを運用しようとしているなら、米IBMの『IBM System z』の採用を検討すべきだ」と、米調査会社Clabby Analyticsのジョー・クラビー社長は語る。
メインフレームは一般に、情報セキュリティの国際標準規格「ISO/IEC 15408」(コモンクライテリア)のEAL(評価保証レベル)5+認定を受けており、高い安全性が保証されている。Linuxカーネルの最新版では、ミッションクリティカルなアプリケーションを中断や混乱なく実行できる。また、集中型のメインフレームの方が数百台の分散Linuxサーバよりもセキュリティを確保しやすい。後者では、管理者は個々のマシンのネットワークインタフェースごとに全てのアクセスポイントをロックダウンしなければならない。
さらに、メインフレームは分散サーバ環境よりもリソース使用率が高い。メインフレーム上のLinuxはワークロードを瞬時に効率的に処理することができる。また、System zメインフレームでLinuxワークロードを実行する方が、分散サーバで実行するよりもコストが安い。ソフトウェアライセンス料がプロセッサコア数などに基づいて設定されているからだ。
仮想化技術とプロビジョニング技術もメインフレームの使用率向上に寄与している。メインフレームの使用率を高く保てば、極めて高い投資対効果(ROI)が得られるだろう。
「Linuxメインフレームは自社に合わない」派
Linuxメインフレームが必要なければ、それはそれで構わない。システムプログラマーのロバート・クローフォード氏も不要派の1人だ。Linuxメインフレームは決して万人向けではない。
「われわれの場合は経済的に見合わなかった。愛用してきたハードウェアとLinuxディストリビューションのベンダー間の契約に加え、既に仮想化を積極的に進めていた分散環境がその原因だ。われわれのインフラツールの多くを、z/Linux(System z上で動作するLinux)に対応させることもできなかった」とクローフォード氏は説明する。これらのことから、同氏は「Linux on System z」を導入しなかった。
IBMは、「Integrated Facility for Linux(IFL)」エンジンを提供することで、Linuxメインフレームを実現している。しかし、このLinux専用プロセッサはどのくらい有益なのか。
使用率が低いサーバの多くのワークロードを少数のメインフレームIFLに統合することが、z/Linuxへの移行の成功につながる。しかし、ハイパーバイザーによるサーバワークロードの統合が進んでおり、ミッションクリティカルなワークロードもその対象に含まれるようになっている。これに伴い、IFLに移行する魅力は薄れることになる。Linuxメインフレームに切り替えることの経済性が、相対的に大きく低下するからだ。
パフォーマンスと価格に関する懸念材料もある。メインフレームプロセッサ上で全てのLinux OSが同様に動作するわけではなく、Linuxのエンタープライズエディションの価格もまちまちだ。Linuxディストリビューションベンダーは、メインフレームソフトウェアにそれぞれ独特の価格体系を適用している。
メインフレームなどのサーバインフラのハードウェアでは、要求されるスキルセットやノウハウも他とは異なる。しかも、メインフレームプロセッサはコモディティハードウェアよりも高くつく。
メインフレームをなくせば、IT部門のもめ事の種が1つ減るかもしれない。ワークロードをあるプラットフォームから別のプラットフォームに移行するという話が出ると、IT部門では論争が紛糾するだろう。全ての当事者に関わるワークロードについて、公平な調査を行うのがベストな解決法だ。そのタスクにどちらのプラットフォームが適しているかを判断するために、ワークロードをz/LinuxとLinuxサーバクラスタにそれぞれ配置して、実行状況を調べてみよう。
ただし、どの企業も違うように、どのワークロードもそれぞれ異なることに注意が必要だ。Linuxの2つの運用アプローチについて、以上に示した専門家それぞれの意見を踏まえて検討し、読者の所属する企業にとって最良の判断を下してほしい。
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