ソフトウェアの違いより重要な問題
知っておきたい4つのLinuxディストリビューション、ユーザー目線で比較する
全てのエンタープライズサーバに最適なLinuxディストリビューションは存在しない。最適なディストリビューションは企業のニーズによって異なる。
今日、Linuxは、自由に構成できる無償のOSというものではなくなっている。重要な業務アプリケーションがLinuxで実行されている。企業が一般的なLinuxディストリビューションを比較するときに重視するのは、全スタックでサポートが提供されているかどうかだ。魅力的な機能セットが提供されているかどうかだけではない。
サーバ管理者にとっての懸念事項は、OSのメンテナンスライフタイムとサポートだ。メンテナンスライフタイムは、Linuxディストリビューションの提供元が製品のパッチやアップデートを提供する期間である。サポートには「アプリケーション」「ハードウェア」「トラブルシューティング」の3種類がある。企業がデータセンターでLinuxを使用している場合、最良のメンテナンスライフタイムとサポートを獲得するために費用は惜しまない。
無料のLinuxディストリビューション
無料でオープンソースのLinuxディストリビューションはエンタープライズ環境で実行可能だが、多くの場合は大きな制限がある。特に、大半の無料ディストリビューションではメンテナンスライフタイムが限られている。例えば、人気のあるOpenSUSEディストリビューションのメンテナンスライフサイクルは18カ月だ。つまり、リリースの24カ月後にセキュリティの問題が発生しても、それに対応するパッチは提供されない。そのため、メンテナンスライフサイクルが短いディストリビューションの導入は検討にも値しない。
メンテナンス期間が変更される可能性のあるディストリビューションも避けることをお勧めする。エンタープライズクラスのLinuxディストリビューションは適切に組織化されているのが望ましい。完全なオープンソースプロジェクトの場合は、プロジェクトが分裂したり、ベンダーによって買収されたりする可能性があり、メンテナンスライフタイムが消えてなくなることがある。
ソフトウェアの違いを見極めて、サポートを求める
一般的にサポートされているエンタープライズLinuxディストリビューションは、米Red Hatの「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」、英Canonicalの「Ubuntu Long Term Support(LTS)」、独SUSEの「SUSE Linux Enterprise Server(SLES)」、米Oracleの「Oracle Unbreakable Kernel」だ。
Linuxディストリビューションを選ぶときに重要なのはソフトウェアの違いではない。全てのLinux OSの特に重要な部分では、ほぼ同じオープンソースコンポーネントが使用されている。
重要なのは提供されている機能に関するサポートだ。導入するLinuxディストリビューションで必要な主要機能が技術的に可能かどうかだけでなく、サポートされているかを確認されたい。例えば、サーバインフラストラクチャでLinuxコンテナ(LXC)の仮想化を使用している場合について考えてみたい。SLESは1つのカーネルで多数のOSインスタンスを実行するLXCを提供している。一方、RHELではLXCはサポートされていない。つまり、技術的に実行可能であっても、Red HatはLXCのサポートを提供していないのが現状だ。
エンタープライズLinuxディストリビューションに求められるのは、企業が使用しているバージョンで安定したソフトウェアを提供していることだ。最新バージョンのソフトウェアパッケージがデフォルトで含まれているかどうかをディストリビューションのWebサイトで確認されたい。ソフトウェアパッケージに含まれているものは頻繁に変更される。そのため、数カ月前に確認した場合でも、導入するOSを決めるときには再度確認することをお勧めする。
エンタープライズLinuxディストリビューションの価格は分かりづらい。ソフトウェアに対する支払いは発生しない。支払いはサポートに対して発生する。また、どのサポートで支払いが発生するかはディストリビューションによって異なる。Ubuntuでは無償でパッチが提供されるが、他のベンダーではパッチは有償提供となる。全てのベンダーは、基本サポートパッケージから本格的なプレミアムサポートまで、さまざまなレベルのサポートを提供している。一般的にOracleとRed Hatのサポートは他のベンダーより高額になることが多い。だが、最終的に支払う金額は状況によって異なる。
Red Hat Enterprise Linux(RHEL)
RHELはエンタープライズディストリビューションの市場シェアの65%~80%を占めている。RHELは多くのデータセンターで採用されている。その要因はハードウェア/ソフトウェアベンダーによるサポート契約にある。他の多くのLinuxディストリビューションでも、同じアプローチを採用している。
Red Hatは他のLinuxベンダーよりも多くの開発者を抱えている。そのため、Red Hatは多くのオープンソースプロジェクトで重要な役割を担っている。最先端のオープンソースプラットフォームが必要な場合は、Red Hatの製品で標準化することをお勧めする。
Red Hatは完全なオープンソースインフラストラクチャの実現に使用できる多くの製品を提供している。特筆すべきは「Red Hat Enterprise Virtualization」と「Red Hat Cloud」だろう。また、「JBoss」というミドルウェアプラットフォームも提供している。ITチームは、このプラットフォームをアプリケーションの開発に使用できる。
Red Hatのソフトウェアを無償で使用するのは困難だ。そのため、「CentOS」や「Scientific Linux」などの安価なディストリビューションを提供している。だが、現在、CentOSはRed Hatが管理している。無償の再コンパイル済みRed Hat OSとしてのCentOSの将来は未知数だ。
SUSE Linux Enterprise Server(SLES)
SUSEはエンタープライズLinuxユーザーの約25%がSLESを使用していると見積もっている。つまり、SLESはLinux OSの市場で第2位のシェアを占めていることになる。
SUSEは、特定のビジネス分野に注力し、独SAPや米VMwareなどの大手業界ベンダーとパートナー提携を結んでいる。VMwareユーザーは「VMware ESXi」を入手するとSLESを無償で利用できる。また、SAPユーザーにはSLESがプラットフォームとして推奨されている。加えて、MicrosoftはLinuxを使用する必要があるユーザーにSLESを推奨している。同社は、そのサポート期間を2016年まで更新した。この互換性のパートナーシップは2006年から始まっており、Microsoftは同社の顧客である米Wal-Mart Storesの環境にSLESを導入している。
技術的な観点では、SLESは他のサポートされているLinuxディストリビューションよりも入手しやすい。また、管理者にとっては最も使いやすいディストリビューションである。統合されたYaSTプラットフォームにより、Linuxの複雑な管理タスクが簡略化されている。SUSEは現在のLinuxディストリビューションの高可用性クラスタの標準ツール「Pacemaker High Availability」の主要開発企業である。
Red Hatと異なり、SUSEは独自の仮想化プラットフォームを提供していない。だが、「SUSE Cloud」と「SUSE Manager」を提供している。前者はOpenStackベースのツール。後者は、一元管理されたインタフェースから多数のSUSEとRed Hatの展開のパッチ適用や管理を行うことができるツールだ。
Ubuntu Long Term Support(LTS)
当初Ubuntsuは無料のディストリビューションだった。後にUbuntuの後援企業であるCanonicalが、Ubuntuに関連する専門サービスを提供するようになった。サポートされている環境でUbuntu LTSを実行したいと考える企業はCanonicalに問い合わせる必要がある。単純にUbuntuソフトウェアを使用して、一定期間アップデートを入手することを希望している場合は、Ubuntuを無料でダウンロードしてインストールすることが可能だ。
サーバプラットフォームとしてUbuntuをインストールするときには、LTSバージョンを使用することをお勧めする。LTSのパッチは少なくとも7年間は利用できる。一方、アップデートサイクルが早い通常バージョンでは、パッチの利用期間が限られている。
UbuntuのデスクトップOSは使いやすさに定評がある。だが、サーババージョンは、それほど使いやすいわけではない。大半の管理タスクの実行方法は難解だ。構成ファイルを変更したり、コマンドを実行したり、プロセスを開始したりする必要がある。一部のユーザーにとっては非常に残念な点だろう。
Ubuntuは「Debian」をベースとしている。Debianは開発と教育の現場で人気があるLinuxディストリビューションだ。Debianではエンタープライズサポートは提供されていない。だが、Ubuntu LTSを使用すると、サポートが得られる。
Oracle Unbreakable Kernel
Oracle Unbreakable Kernelは、Oracle Databaseのプラットフォームを作成するためにオープンソースのRHELソフトウェアを変更したのが始まりだ。
OracleデータベースDatabaseを運用している企業以外では、大きな成功を収めていない。Oracle Unbreakable Kernelは、企業で使用するLinux OSをデータベース管理者が選択した場合にデータセンターで導入されることが多い。とは言うものの、多くの企業は、Oracleがオープンソースイニシアチブに取り組む前から、Linuxのポリシーと標準のディストリビューションを確立している。つまり、多くのOracle DatabaseがSLESやRHELで実行されており、これらのディストリビューションでOracle Databaseがサポートされていることを意味している。
Xenベースの仮想化プラットフォームである「Oracle VM」以外に、Oracleのプラットフォームを完成させるオープンソースの製品は多くない。また、OracleはUNIX OSの「Oracle Solaris」を所有している。そのため、Oracle Unbreakable Kernelの重要性は低くなっている。
どのディストリビューションが優勢か
RHELは、自社開発アプリケーションを運用するサーバプラットフォームが必要な企業に最適な選択肢である。また、最大かつ最強のブランドであるため多くの企業に適したディストリビューションでもあるだろう。技術的および統合の観点から、SLESやOracle Unbreakable Kernelを使用するのが適していても、信頼できる企業が提供する安定したソフトウェアであることからRHELを使用するのが賢明な場合もある。一方、Fortune 500に名を連ねる企業ではUbuntuの導入は進んでいない。このことから、Ubuntuの親会社であるCanonicalが、大企業にUbuntuを売り込むことに苦戦している状況が見て取れる。
最も普及しているLinuxディストリビューションがRHELであることは間違いない。だが、Oracle製品を使用していて、Oracle Databaseを運用することにしか関心がない場合は、どうだろうか。そのような場合は、Oracle Unbreakable Kernelが最良の選択肢となるだろう。また、安価であっても、管理が容易で、Microsoft環境と適切に統合するLinux OSが必要な場合には、SLESの導入を検討されたい。
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