サーバOSとしてだけではなく、クライアントOSとしても注目を集めつつあるLinux。企業が導入した場合、デスクトップ環境の運用にはどのような利点があるのだろうか。
この記事を読んでいるほとんどの人は、Windowsのデスクトップ環境を使っているか、管理していることだろう。「全て」ではなく「ほとんど」と書いたのは、さまざまなアプリケーションを実行するために、他のOSを利用している企業もあるからだ。筆者の念頭にあるのはLinuxだ。サーバOSとしてスタートしたが、今やクライアントOSとしても注目を集めつつある。ここではクライアントOSとしてのLinuxの実力をチェックしたい。
クライアントOSとしてもサーバOSとしても、Linuxを利用するメリットとしてよく指摘されるのが、「ほとんどのLinuxディストリビューションにはライセンス料がない」という点だ。セットアップして必要なだけインスタンスを立ち上げても、料金は全く掛からない。ソフトウェアライセンスに資金を使うことなく、一定のシステム機能を構築できる手軽な方法といえる。
Linuxディストリビューションには、生産性ソフトウェア(OpenOffice.orgかLibreOffice)、Web ブラウザ(FirefoxやGoogle Chromiumなど)、多くのユーザーにとってなじみ深い一連のデスクトップ用アプリケーションが含まれている。ただし、Linuxを利用する場合はセットアップから運用まで全て自力で行う必要がある。何か問題が生じてもディストリビューションの製作者にユーザーを助ける義務はない。
ディストリビュータが運営するサポートフォーラムや、serverfaultなどの一般的なサポートサイトにオンラインでヘルプを求めることは可能だが、あくまで自力で解決しなければならない。どうしても一定のサポートが必要なら、ディストリビューションの製作者、あるいはコンサルタントや他の適正な資格を持つサードパーティーから購入する方法もある。
Linux上で動作するアプリケーションのほとんどはオープンソースのアプリケーションだ。それらの入手先としては、どのLinuxディストリビューションを利用するにせよ、インターネット上のソフトウェア倉庫である「リポジトリ」がベストだろう。オープンソースアプリケーションはエンタープライズ環境でも広く利用されてきた。既存のソフトウェアミックスに左右されるが、既に利用しているものと最も相性の良いアプリケーションを選べばよい。
留意したいのは、クローズドソースや商用アプリケーションでもLinux用に開発されたものがあることだ。それらの多くはサーバで実行するエンタープライズ向けの製品だが、Linuxの設計思想はソフトウェアベンダーによる一貫したアプリケーション展開を難しくしている。このため必要な製品が入手しにくい場合もある。クローズドソースのWindowsアプリケーションをLinux上で実行させる「Wineプロジェクト」もあるが、必ずしもそうしたアプリケーションの互換性や性能を保証するものではないことに注意したい。
また、特定のアプリケーションについてはバックエンド処理が問題になる場合もある。代表的な例がMicrosoft OutlookとMicrosoft Exchangeだ。特に前者はWindows、あるいはWine経由でしか動作しない。とはいえ、Outlook Web Accessを利用するなど、問題を回避する方法はある。
Linuxはメーカーのサポートが終了したものも含め、実に多様なハードウェアのドライバを保守している。筆者自身、数年前からドライバのアップデートがまったく行われていなかったスキャナを、Linuxで問題なく利用できた経験がある。だが、こうしたサポートは運しだいだ。「どのデバイスがサポートされるのか」「そのサポートは技術的に完璧なのか」「タイムリーにサポートされるのか」といったことに関する保証は一切ないからだ。
その他、Linuxを使うことによるハードウェア面でのポイントとしては、ローエンドのデスクトップマシンをキオスク端末にしたり、リモートデスクトップ用のシンクライアントとして再利用できることなどが挙げられる。
多くのLinuxディストリビューションは、MicrosoftのHyper-Vなど、Linuxをサポートするハイパーバイザーで実行できる。
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