「どこでもMY病院」構想にも波紋
モバイルに頼りきった医療現場に不安はないか?
医療技術が発達し、携帯型の医療機器によって確実に患者の状態を観察できるようになった。だが、携帯医療機器が広く導入されるためにはセキュリティ技術が追い付くのを待たなければならない。
医療スタッフが医療情報にアクセスするときに使うデバイスの保護が、医療機関のIT部門にとって最重要事項の1つであることに変わりはない。スタッフが所有するデバイスの監視を支援するソフトウェアの導入により、管理しやすくなっている。
だが、医療現場ではBYOD(私物端末の業務利用)のイニシアチブが進んでいる。そのため、IT部門はデータ漏えいから確実に情報を保護するためにプロセスと手順の見直しを迫られている。患者データの保護に使用している既存のプロセスの大半は、医療施設に流入している複雑なデバイスに脅かされているのが現状だ。
脆弱な医療機器のセキュリティ対策
侵害されると深刻な健康被害をもたらす医療機器もある。例えば、ワイヤレスのインスリンポンプ、バイタルサインモニター、ペースメーカー、人工すい臓などだ。だが、これはほんの数例にすぎない。データ漏えいの問題は、上述の医療機器の機能に影響するセキュリティの脅威の問題より優先順位が低くなっている。また、このような新しく複雑なデバイスを保護するために導入できる一般的なセキュリティツールはない。
セキュリティカンファレンス「Black Hat 2011」では、セキュリティの専門家がインスリンポンプのハッキングを実演した。専門家の巧みなハッキングの技術によって、医療機器の遠隔操作は成功した。このような攻撃が現実のものとなった場合、病院、メーカー、患者にとって最悪の事態となり得る。
これまでIT部門は、2通りの方法で機器の脆弱性に対処してきた。1つは機器のファームウェアのアップデート。もう1つは、ウイルス/マルウェア対策ソフトウェアを導入して感染を防止することだ。残念ながら、植込み型医用機器のアップデートのためにIT部門のスタッフが往診することはできないだろう。これは病院にとって深刻な課題となっている。上述の機器を購入する前に、これらの機器の多くのセキュリティリスクに対処しなければならないからだ。
医療機関が抱える懸念事項は、これだけではない。医療機器から転送されるデータをどのように保護するかも懸念されている。転送されるデータに重要な健康情報が含まれている場合、情報が傍受されて変更されると深刻な事態を招く恐れがある。
HIPAAにとどまらない懸念
懸念される問題の中にはHIPAA(米国における医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令)のコンプライアンスの範囲を越えるものもある。プロバイダー、医療機器メーカー、ITセキュリティの専門家が対処しなければならないほど、問題は深刻だ。医療機関の不安を抑え、働くスタッフを教育するために、プロバイダーはメーカーと協力してセキュリティに関するベストプラクティスを定義する必要がある。また、データの転送中および保管中に患者データを保護するために全てのデバイスがどのような動作をしているのかを把握する必要もある。
医療機関が医療機器に依存する度合いは高くなり、医療現場ではBYOD方針を導入して遠隔で健康データの送受信を行うようになっている。この傾向が強まるほど、リスクの増加が現実のものになるだろう。実際IT部門にとって最も深刻なセキュリティ課題へと発展する恐れもある。
「Black Hat 2014」の参加者はあらゆる最新のセキュリティ脅威と闘う方法を学んだ。このイベントを新しいハッキングの技術を学ぶ機会と受け止めた参加者もいるだろう。だが、医療分野のサイバーセキュリティの専門家は、健康情報がどこにあっても、情報を適切に保護する方法について何かしら学んで会場を後にしたことを願いたい。
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