コンシューマーヘルスケアITサミット
医療IT最前線、患者本人が医療記録にアクセスする意味とは
新しい技術を使って自身の医療記録にアクセスする患者がかつてないほど増えてきている。その事例と課題を取り上げる。
電子健康記録(EHR)の全米への普及を目指す取り組みの主たる目的は、患者を自身の健康管理に関与させること(患者エンゲージメント)にある。だが、自身の医療記録の閲覧や医療提供者との情報共有を患者が簡単に実行できるようにするのは容易なことではない。
それでも、コンシューマーヘルスケアの年次サミット「2014 Consumer Health IT Summit」では、主催者である全米医療IT調整官室(ONC)が“明るい材料”として、全米各地の先駆的な成功事例や今後有望な事例を幾つか紹介した。中でも特筆すべきは、テキサス州のダラス小児医療センターの取り組みだ。同センターはONCと米Microsoftと提携し、鎌状赤血球貧血症(SCA)の子どもを持つ家族を対象とした医療情報交換のプロジェクトに取り組んでいる。
この取り組みにはダラスからはるか遠く離れた田舎に住む貧しい家族も参加しているが、いずれの家族も米Verizonが寄付した米Appleの「iPhone」とMicrosoftの健康管理プラットフォーム「Microsoft HealthVault」を使い、ネットワーク経由で自身の医療記録にいつでもアクセスできるようになっている。
全米各州で医療情報交換を推進するためのONC主導のプログラム「State Health Information Exchange(HIE)Program」でポリシーディレクターを務めるリー・スティーブンス氏は、「ダラス小児医療センターの取り組みは“データの解放”をもたらした」と指摘する。ONCは同センターの取り組みとその成果をまとめた動画を作成し、年次サミットに集まった数百人の聴衆に披露した。
「患者本人が介在する医療情報交換」をテーマとするパネルディスカッションでモデレータを務めたスティーブンス氏は、次のように語った。「この技術を使いこなすためには大学で学ぶ必要があると誤解している人が大勢いた。だがこの動画に出てくる母親もHealthVaultを使いこなしている。全米の誰もが使いこなせる。この国には電子医療情報への障壁は何もない」
患者自身に医療記録を管理させるという点では、カンザス州が草分け的な存在だ。パネリストを務めた米Kansas Health Information Network(KHIN)の専務取締役ローラ・マクラリー氏によれば、同州では282の病院と医療提供者が参加する医療情報交換(HIE)システムを介して500万人の患者が自身の医療記録を閲覧できるようになっているという。このプログラムは「MyKSHealth eRecords」と呼ばれている。
患者エンゲージメントと遠隔医療技術を専門とする医療情報技術ベンダー、米Get Real Healthの共同創業者兼CEOのマーク・ヒーニー氏もパネリストを務めた。医療提供者が検討するに値する選択肢として、同氏はMicrosoft HealthVaultの他、ONCの「Blue Button」プロジェクト、米Googleの「Fit」、Appleの「HealthKit」など、モバイルヘルス分野のアプリケーションや取り組みを幾つか紹介した。
また別のパネリスト、ギルバート・サリナス氏は17歳のときに、子ども時代を過ごした貧しい地域で友人に銃で誤射され身体に障害を負って以来、さまざまな慢性的疾患を抱え、車いす生活を送っている。西海岸のカリフォルニア州で生まれ育ったサリナス氏は現在、東海岸マサチューセッツ州のInstitute for Healthcare Improvement(米国医療の質改善研究所)で特別研究員を務めている。地元を離れ、東海岸で特別研究員として働いている間、同氏はオンラインで自分の医療記録にアクセスし、治療内容を調整しているという。「皆で協力して治療内容を組み立て直した」と、同氏は語る。
さらに同氏は「患者への質問は“どうしましたか”ではなく、“あなたにとっては何が重要ですか”であるべきだ」と語り、もっと患者に焦点を合わせるよう医療業界に促した。
4人目のパネリストを務めたのは、全米19州で運営されている非営利健康情報ネットワークOregon Community Health Information Network(OCHIN)の最高医療情報責任者(CMIO)で医学博士のティム・バーディック氏だ。「医療記録への患者のアクセスを定着させるためには、医師や看護師による支持が不可欠だ」と、同氏は語る。
セッションの後、聴衆の1人からは、「現場では優れた取り組みが数多く進められているが、まだ対処すべき課題の方がはるかに多い」との発言があった。患者の医療情報共有サービスを手掛ける米Medyearの共同創業者兼最高技術責任者(CTO)で、患者本人による医療情報交換の擁護者でもあるマーク・スクリムシャー氏だ。
「ヘルスケア業界の核心にかかわる大事な取り組みだ。これまで患者はまるで製品のように、本人のあずかり知らないところで自分の医療情報をやりとりされてきた」と、同氏は語る。
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