Amazonの商魂が潜在顧客を遠ざける?
徹底レビュー:Amazonが本気を出した新タブレット「Fire HDX 8.9」、たった2つの欠点とは
米Androidの新しい「Fire HDX 8.9」(2014年モデル)は、市場に出回っている中型タブレットの中でも屈指の製品となっている。だが、Amazonストアとの結び付きが強いことが、一部の潜在顧客を遠ざけてしまう恐れもある。
米Amazonは2014年秋に「Amazon Fire HDX 8.9」の新型をリリースした。2013年モデルと比べて、プロセッサの高速化、サウンド機能の向上、ソフトウェアの更新が施されている。その一方で、ディスプレーとデザインについては従来モデルを踏襲している。
本稿でレビューする新しい2014年モデルは、価格はわずか379ドル、画面は9インチに満たないが、Amazonの最大かつ最も高価なタブレットだ。
仕上がりとデザイン
米Appleの「iPad Air 2」を「大きくて重い」と思わせるタブレットはわずかしかないが、Fire HDX 8.9はその1つだ。サイズは231(高さ)×158(幅)×7.8(厚さ)ミリ、重さは375グラムで、非常に薄く、軽い。そのデザインは、決して洗練されているとはいえないAmazonの小型タブレットとは似ても似つかない。
筐体は全てプラスチックで、カラーはブラックのみとなっている。四隅は丸みを帯びているが、デザインは全体的に角ばっている。SF映画『スターウォーズ』シリーズのダース・ベイダーが使う小道具のようにも見える。
Fire HDX 8.9は持ちやすい。剛性もかなりあり、ひねったり曲げたりしようとしてみたが、たわむことはなかった。
ディスプレー
初代となるFire HDX 8.9の2013年モデルは、市場で最高レベルのディスプレーを搭載していた。2014年モデルでも同じディスプレーを採用したのは賢明だ。その解像度は2560×1600で、ピクセル密度は339ppiと極めて高い。おかげで画像やフォントがくっきりとシャープに表示される。
さらに、このディスプレーは色を美しく表現でき、Amazonは反射率をほぼゼロに抑えることに成功している。ディスプレーキャリブレーションソフトウェアを手掛け、あらゆる種類のコンピュータのディスプレーを比較評価している米DisplayMate Technologiesは、このディスプレーを、「われわれがこれまでテストした中で最高のパフォーマンスのタブレットディスプレー」と評している。
もっとも、これは8.9インチのディスプレーであり、Fire HDX 8.9の2014年モデルはフルサイズタブレットのカテゴリーには入らない。このサイズのディスプレーは窮屈な感じはしないが、iPad Air 2の9.7インチディスプレーよりも小さく感じるのは確かだ。
ボタンと端子
電源ボタンと音量コントロールが側面ではなく、背面に配置されている。これらは背面にあると操作しやすいため、この配置は見た目がすっきりするだけでなく、実用的でもある。
横置き時の右側面上部にはヘッドセットジャックがある。ヘッドフォンで音楽を再生すると、米Dolby Laboratoriesのサウンド技術によって平均以上の音質が提供される。より臨場感あるサウンドで映像を楽しめるようにすることを目的とした「Dolby Atmos」技術もサポートされている。
左側面上部のmicroUSBポートは、Fire HDX 8.9の充電に加え、各種の機器との接続に使われる。例えば、画像などのファイル転送のためにデスクトップPCやノートPCと接続できる。SlimPortアダプター(別売)を介してHDMIまたはVGAでテレビやモニターと接続することも可能だ。
このタブレットにおける設計上の問題の1つとして、microSDメモリーカードスロットがないことが挙げられる。それでも、Fireシリーズのどのモデルでも、購入者はクラウドストレージ「Amazon Cloud Drive」に、Fireタブレットで撮った写真やAmazonで購入したコンテンツを無料で容量無制限に保存できる。また、Amazon Cloud Driveは、これら以外のファイルの保存にも5Gバイトまで無料で利用できる。
パフォーマンス
Fire HDX 8.9は、米Qualcomm製32ビットプロセッサ「Snapdragon 805」(クアッドコア、2.5GHz)を搭載する。そのために演算能力はかなり高い。このプロセッサは最先端ではないが、日常的な作業を余裕で処理できる。
また、ベンチマークアプリ「Geekbench 3」によるシングルコアテストで1080、マルチコアテストで3050というスコアを記録した。これに対し、他のタブレットでは、韓国Samsung Electronicsの「Galaxy Tab 4 10.1」が約340と1150、台湾HTCの「Nexus 9」が約1900と3300、AppleのiPad Airが約1470と2660となっている。
さらにFire HDX 8.9は、「Quadrant」ベンチマークでは22500という高スコアをたたき出している。
Fire HDX 8.9は、ストレージ容量が16Gバイト(4万980円)、32Gバイト(4万7180円)、64Gバイト(5万3280円)のモデルが用意されている。microSDメモリーカードスロットがないことから、内蔵ストレージの容量は一段と重要になる。インストールするアプリや保存する動画などのファイルが多くなりそうな人は、Amazonの無料クラウドストレージが重宝するものの、32Gバイト/64Gバイトモデルを購入するか、米Kingstonのワイヤレスデバイス「MobileLite Wireless G2」のような製品にも投資するとよいだろう。
ソフトウェア
Fire HDX 8.9は、米Googleの「Android 4.4.3」をベースにした「Fire OS」を搭載する。アプリランチャーなどのデザインは、Amazon独自のカスタマイズが施され、よりシンプルになっている。
Fire OSのユーザーインタフェース(UI)の最大の特徴は、最近開いたアプリの一覧が大きなアイコンで左右に並ぶ「カルーセル」だ。その下にはアイコンがグリッド表示され、これはユーザーがアレンジできる。アイコンはサブフォルダに移動でき、ホーム画面が1つだけなので便利だ。
カルーセルには電子書籍やアルバム、映画のアイコンが含まれている。Amazonはこうしたコンテンツへのアクセスのしやすさに力を入れるとともに、タブレット利用者への販売を伸ばそうとしている。Fire OSでは、Amazonの書籍、ビデオ、音楽、ゲーム、アプリなどのデジタルストアへのリンクが目立つように表示されている。AppleもiPadで、GoogleもAndroidで同様のことをしている。だが、どちらの場合もFire OSほど露骨ではない。Fire OSではAmazonストア(従来のオンライン販売サイト)へのリンクも目立つところに配置しているだけに、なおさらそういえる。
買い物に関しては、このタブレットでは画像認識機能「Amazon Firefly」もサポートしている。このアプリにより、ユーザーはタブレットのカメラを特定の対象に向けたり、マイクをオンにして楽曲や映画、TV番組の音を拾って、Amazon Webサイトでアイテムを検索できる。
便利な機能として「Family Profiles」がある。最大で大人2人と子ども4人から成るグループが、1台のFire HDX 8.9を簡単に共有し、各ユーザーがこのデバイスを自分用にカスタマイズできるというものだ。機能を制限することもできる。
ワイヤレス
Fire HDX 8.9の2014年モデルは、無線LAN規格のIEEE 802.11acに対応した。これにより、従来モデルよりも最大4倍高速にデータを転送できる。新型はMIMO(Multiple Input and Multiple Output)にも対応している。これは、複数のWi-Fiアンテナを備えているということであり、この機能強化も転送速度の向上につながる。もちろん、こうした速度向上を実際に享受するには、これらの技術をサポートする無線ルータが必要になる。
また、4G LTE通信が可能なモデルもラインアップされている(日本では未発表)。これらのモデルでは、米AT&T、米T-Mobile、米Verizonの4G LTEネットワークが利用できる。このオプション機能の搭載で、これらのモデルは非搭載モデルよりも150ドル高くなっているが、ほぼどこでもワイヤレスでインターネットにアクセスできる。当然のことながら、そのためには適当なキャリアの月額サービスプランに加入する必要がある。
カメラ
Fire HDX 8.9は、LEDフラッシュを備えた800万画素のリアカメラを搭載する。写真撮影には一般的に、タブレットよりもスマートフォンが好まれる傾向にある。小さいデバイスの方が扱いやすいからだ。だがAmazonは、このデバイスに高品質のカメラを組み込んでいる。理想的な条件下だけでなく、暗い場所でも良い写真が撮れるカメラだ。1080pのHDビデオ撮影にも対応している。
フロントカメラは720p HDに対応し、ビデオ通話や自分撮りに利用できる。
バッテリー持続時間
Amazonによると、Fire HDX 8.9のバッテリー持続時間は、読書、Web、ビデオ、音楽などの通常使用で最大12時間、書籍のみでの使用で最大18時間であるという。われわれのテスト結果からすると、これは実は控えめな数字だ。例えば、3日間普通に使った後でも、バッテリー残量は50%以上あった。
それに貢献しているのが「SmartSuspend」機能だ。この機能は、夜や昼にWi-Fiが使われていないときに、Wi-Fiを自動的にオフにするように設定できる。
このタブレットに同梱の充電器は、約5時間で完全に充電できるように設計されている。
結論
Fire HDX 8.9の価格は、379ドル(4万980円)からとなっており、お買い得だ。台湾HTCの「Nexus 9」(399.99ドルから)やAppleのiPad Air(399.99ドルから)にも十分に太刀打ちのできる製品である。
薄型軽量なデザインは優れた特徴となっている。美しい画面や高いパフォーマンス、長いバッテリー持続時間、優秀なカメラも同様だ。一方、大きな短所は、Amazonサイトとビルトインサービスのややあざといマーケティングと、microSDメモリーカードスロットの欠如だ。
Fire HDX 8.9の2014年モデルは、素晴らしいハードウェアのおかげで、市場に出回っている中型タブレットの中でも屈指の製品となっている。だが、Amazonストアとの結び付きが強いことが、一部の潜在顧客を遠ざけてしまう恐れもある。
長所
- 現在販売中のタブレットの中で最も美しい画面
- スリムで軽いデザイン
- 良好なパフォーマンス
- 長いバッテリー持続時間
- 高品質のカメラ
短所
- microSDメモリーカードスロットがない
- Amazonの広告が多い
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