決して無視できない「WYOD」
お手本は「iPhone」――「Apple Watch」のビジネス利用はどこまで期待できる?
ウェアラブル端末の業務利用が進むことで、「WYOD」(Wear Your Own Device)の時代がすぐそこまで迫っている。IT部門は今、ウェアラブル端末の管理とセキュリティという新たな課題に直面しようとしている。
ウェアラブル端末が一般に浸透しようとしている中、IT部門は端末の管理やセキュリティ対策を準備する必要がある。時計や眼鏡型のスマートデバイス、健康やフィットネス情報の活動量計をはじめとするウェアラブル技術は、IT部門に新たな課題をもたらす可能性がある。
全米家電協会(CEA)が2015年1月に発表した半期報告書によれば、ウェアラブル端末市場は2015年に急成長するという。その出荷台数は3090万台、2014年と比べて61%の増加になると見積もっている。また、スマートウオッチは、韓国Samsung Electronicsの「Gear S」や米Appleの「Apple Watch」など最新の製品に後押しされて、359%の急成長を遂げると予想している。
Appleの「iPhone」がBYOD(私物端末の業務利用)のきっかけとなったのと同じように、Apple Watchなどの新製品が「WYOD」(Wear Your Own Device)のトレンドを生み出すことになるだろう。エンタープライズ市場もこの潮流を決して無視することはできない。
ウェアラブル技術の業務利用
米Googleの眼鏡型端末「Google Glass」をはじめ、スマートアイウェアは困難なスタートを切った。だが、ウェアラブル技術の活用はビジネスにとって大きな可能性を秘めている。従業員のネットワーク接続はより容易になり、端末操作やデータの閲覧、顧客対応といったさまざまな作業をハンズフリーで行えるようになる。また、その場の状況に応じた情報を端末に表示させることも可能になる。端末を使ってドアやキャビネットを施錠したり、業務装置や車両を始動したり、タスクをバイブレーションで知らせたりと、あらゆる業種・職種で活用の可能性がある。
ウェアラブル技術とその活用方法は、まだ生まれたばかりの段階である。ヘルスケアや小売り、フィールドサービスなどモバイル技術と親和性の高い分野では、ウェアラブル端末の導入がいち早く進むだろう。これらの業界に限らず、先進的な企業は、既にウェアラブル技術の活用とその可能性を模索しているはずだ。だが、たとえ状況を見守っている状態であっても、企業は今、WYODの方針を準備しておくべきである。
WYODを取り巻く課題
BYODにおけるスマートフォンやタブレットと同様、IT部門はWYODで利用する端末に対する管理とセキュリティの課題を解決しなければならない。ただ、今の時点では対象となる端末の数は少なく、リスクは比較的低いといえる。
例えば、ウェアラブル端末はWi-FiやBluetoothを通じて、企業のネットワークや会社支給のスマートフォンに接続される。その際には考慮すべき重要なことは次の通りだ。
- 社内の無線LAN基盤には、ウェアラブル端末が接続され、新たな通信が生まれたとしても十分に対応できるか
- Bluetoothの接続と動画の通信量が増えることで、通信の集中や干渉が発生しないか。また、Bluetoothを悪用した攻撃のリスクが高まることはないか
- 社内ネットワーク、デバイス、データを危険にさらす恐れのある未承認のWYODをどうやって検出、防御するか
- 使用を許可するウェアラブル端末の種類と環境をどうやって決めるか
WYODは、BYODの新たな形だとする意見もあるだろう。だが、基本的には全くの別物である。ウェアラブル端末は、スタンドアロン(単独)で機能する必要はない。少なくとも初期の製品の多くは、周辺機器としてスマートフォンやタブレットを経由して、インターネット接続、データ保存、アプリケーション分析などの処理を行っていた。
大半の企業では、ウェアラブル端末の業務利用に最適なユーザーエクスペリエンスを構築できるノウハウを持ち合わせていない。ウェアラブル端末は、音声とタップによる操作を基本として、そのアウトプットを音声や映像、触覚で受け取る仕組みとなっている。キーボードとマウスによる従来型の操作方法ではないため、既存のユーザーインタフェースを見直す必要がある。
ウェアラブル端末には、あまり多くのデータを保存することができない。だが、そこから収集・保管される情報は、デバイスの種類によってさまざまである。個人のプライバシーとビジネスリスクの両面から、総合的に再評価を実施すべきである。
ウェアラブル端末は、いつでもタイミングよく使える環境にあることで、その真価を発揮することができる。それには、ユーザー認証とアクセス制御の新しいアプローチが求められる。
ウェアラブル端末をIT部門の管理下に置く
これらの課題を克服するには、まず状況の把握から始まる。具体的には、有線/無線LAN向けの不正侵入防御システム(IPS)、エンタープライズモバイル管理(EMM)システム、無線LAN管理ツールを用いて、職場に持ち込まれるウェアラブル端末を検出し、そのカタログを作成する。従業員が使っているウェアラブル端末の種類、ネットワークに接続する場所と手段、アクセスする業務データの種類を把握することが、ビジネスのニーズとリスクを評価する最初のステップとなる。
次に、会社で定めたモバイルの利用に関する既存方針を見直して、ウェアラブル端末の社内持ち込みを許容できるようにする。規制が厳しい業界では、ウェアラブル端末を全面禁止する企業もあるかもしれない。例えば、ヘルスケアの分野においては、スマートアイウェアの使用を許可することで、そこから米HIPAA法(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)で保護された患者データが流出する潜在的リスクが高まる恐れがある。
ビジネスリスクが明確になっていない場合は、より柔軟な方針を取ることもできる。会社のシステムやデータに接続しないことを条件に、ウェアラブル端末をほぼ無制限の状態で利用できるようにすれば、生産性を高めることができるかもしれない。だが、WYODが浸透するにつれて、従業員はウェアラブル端末から社内の無線LANやデータへのアクセスを求めるようになるだろう。IT部門は集めた情報からユースケースを作成し、端末の管理基準を策定する。そして、アクセスの制御とポリシーの適用を可能にするため、EMMの機能を評価する。
ウェアラブル技術がコンシューマーおよびビジネスの分野において軌道に乗るかどうかは時が経てば分かることだろう。しかし、職場に持ち込まれるウェアラブル端末の検出と評価を開始するタイミングは今において他はない。なぜなら、IT部門は間もなく、より一層大きい規模で、WYODの管理と保護に関する方針をまとめなくてはならないからだ。
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