3G通信などスマートフォン並みの機能を搭載
徹底レビュー:通話可能なTizen搭載スマートウオッチ「Gear S」の実力は?
韓国Samsung Electronicsの「Gear S」は、実力派のクールなスマートウオッチだ。3G通信に対応し、スマートフォンを必要としない独立した利用が可能な一方で、価格の高さやソフトウェアの少なさなど課題も残る。
韓国Samsung Electronicsのスマートウオッチ「Gear S」は、驚くほどの実力を備えたクールなガジェットであり、利便性の高さを潜在的に秘めている。ただし、まだ割高感は強く、利用できるソフトウェアが少ないことから、現時点ではニッチな製品という域を出ない。
Gear Sは、従来製品よりもスマートフォンからの独立性が高く、色鮮やかなディスプレーや多数の新機能を備えている。同製品はスマートウオッチの購入を検討する消費者のニーズに十分応えることができるだろうか? 詳しく検証してみよう。
外観とデザイン
長方形の大型画面に金属加工の施されたフレーム、曲面が特徴的なガラスパネルは、スマートウオッチというより、小型の「iPhone」にゴム製の時計用ベルトを取り付けたようなイメージだ。実際、スマートフォンに似ているのは、見た目だけではない。スマートウオッチの競合製品とは違い、Gear Sは「Bluetooth」でモバイル端末と接続しなくても利用することができる。一部のモデルは、3G通信などスマートフォン並みの機能を備えている。詳しくは後ほど説明する。
ベルト部分の材質はゴム製で、価格の割には若干の安っぽさがある。しかしながら、ベルトは簡単に取り外すことができるので、気に入らなければ交換することも可能になるだろう。端末の前面には、電源ボタンとホームボタンを兼ねたボタンが1つしかない。背面には充電用の端子が付いている。
Gear SはIPX7の防水機能とIP6Xの防じん機能を備え、水中に最大30分沈めても内部に浸水しない仕組みとなっている。強化ガラスとプラスチックが用いられた端末は、擦り傷や切り傷に対する強い耐性がありそうだ。Gear Sの操作は、ボタンと充電用端子を除けば、全てをタッチスクリーンで行うか、ペアリングするスマートフォンのGearアプリで行う。その他に特筆すべき点は見当たらないが、非常にしっかりした作りになっている。
ディスプレー
ディスプレーは2.0インチと小型だが、性能は決して低くない。解像度は360×480、画素密度は300ppiで、このサイズのディスプレーとしては十分過ぎるほどだ。曲面スーパー有機EL(Curved Super AMOLED)ディスプレーが採用されているため、コントラスト比に優れ、発色が鮮やかで、黒色表示に発光が不要なのでエネルギー効率もよい。これはバッテリー持続時間や品質全般の向上につながっている。Samsungは近年、スマートデバイス向けディスプレーの製造で評判を高めており、Gear Sもその流れを継いでいる。
性能
Gear Sを実際に使ってみると、購入意欲がくすぐられる気持ちが分かる。ハードウェア面は、1GHzのプロセッサ、512MバイトのRAM、4Gバイトのストレージ、Bluetooth/Wi-Fi/GPS対応と、ほんの少し前のローエンド向けスマートフォン並みのスペックだ。さらに、センサーの種類も豊富で、加速度センサー、気圧計センサー、ジャイロセンサー、電子コンパス、心拍数センサー、照度センサー、紫外線センサーを備えている。これらの組み合わせによって、さまざまな使い道が考えられる。スマートフォンを用いたこれまで通りの使い方や、健康計、活動量計、紫外線チェッカーなど、従来の健康支援機器のように利用することもできる。
Gear Sはスマートフォンを持ち歩かなくても単独で利用可能だ。スマートウオッチは通常、Bluetoothで通信を行うためスマートフォンの10メートル以内にないといけない。Gear Sの場合は、3G通信に対応しているため、スマートフォンから離れた状態でも機能する。それによって、スマートフォンを持ち歩かなくても通話やメールの送受信ができる。スマートフォンの近くに戻ると、BluetoothかWi-Fiの接続に自動で切り替わる。
ソフトウェア
Gear Sのインタフェースは、Samsung製のAndroid端末を使ったことがあれば、すぐに使い慣れるように工夫されている。下方向へのスワイプで「戻る」コマンドになるといった新しい操作も多少追加されているが、左右へのスワイプ操作による画面移動をはじめ、大半のタッチジェスチャーは共通だ。アイコンも同じものか似たようなデザインになっている。しかし、Androidと共通しているのはその外観だけで、Gear Sが搭載しているOSは、Androidではなく「Tizen」である。Tizenを搭載する端末はGear Sが初めてというわけではないので、インストール可能なアプリは既にある程度そろっている。
ただし、スマートフォンとペアリングしてアプリをインストールするには、Gear SをAndroidスマートフォンに接続しなければならない。しかも、どのスマートフォンでもできるわけではなく、「Galaxy S」シリーズ、「Galaxy Note」シリーズなど特定のSamsung製ハイエンド端末でなければいけない。その点では、Gear Sを“スタンドアロン”なスマートウオッチと呼ぶのはあまり正確ではないだろう。管理アプリはシンプルで、アプリの検索とインストールは難なく行える。全般にアプリの選択肢はまだ少ないが、「Opera Mini」、GPS関連アプリ、アラートシステムなど実用的なプログラムも幾つかある。
音声認識機能「S Voice」が新しくなり、2.0インチしかない小さなタッチスクリーンを操作することなく、通話やメールの送受信など幅広い操作を行える。2.0インチの画面でWebサイトを閲覧するのは、かなり懐かしい感覚だ。モバイル端末の画面が2インチ程度だった時代はそう昔ではないが、「Blackberry」「Treo」「Blackjack」ではソフトウェアキーボードを使う必要はなかった。そういう意味では快適とは言い難いが、あまりじっくり閲覧しようとしない限り、思った以上に使い勝手はいい。
その他にも細かい機能が数多く搭載されている。例えば、Bluetoothヘッドフォンがあれば、Gear Sから直接音楽を聴くことができる。さらに、スマートフォンがある状態ならば、Gear Sからスマートフォン上の楽曲をリモート再生することもできる。
一方、何らかの対処が必要な不具合も幾つかある。ジェスチャーに対する反応は完璧ではなく、検出されやすい“適切な”動きができるまで慣れが必要だ。また、3G通信のみでは、「Spotify」のような通信量の多いアプリを使おうとしても期待通りにはいかない。もっとも、これだけ小さな画面でできることは限られるのだから、LTE非対応を決定的な欠点とはいえないだろう。
バッテリー持続時間
300mAhのバッテリー容量では、Gear Sの連続使用時間はあまり期待できないと考えたとしても当然だろう。しかしながら、そんなことはない。小さな画面サイズ、効率性の高い有機ELディスプレー、4G通信の非対応などが奏功し、Gear Sは平均で約2日間は連続使用できる。スマートウオッチ以外のウェアラブル端末と比べるとかなり短いものの、常時接続端末としては悪くない。また、小型のバッテリーなので短い時間で充電できるだけでなく、出力電流のあまり高くない電源からも充電できる。
一方の欠点は、通常のスマートフォンよりも充電方法が複雑なことだ。端末に通常のmicroUSBポートはなく、防水カバーの下にも用意されていない。背面にあるのはスプリングピン端子が1つだけである。端末を同梱の充電台に取り付け、充電台に付いているmicroUSBポートから電源を取る仕組みだ。外出先でも充電したい場合は、充電台も持っていく必要がある。なお、この充電台には350mAhのバッテリーが内蔵されており、端末のメインバッテリーのバックアップとして、電源のないところでも充電が可能だ。
結論
ウェアラブル・コンピューティングにはまだ懐疑的な雰囲気が残る。クールなコンセプトではあるが、実用性があまり明確に定まっていない。スマートウオッチをスマートフォンと同様に必要だと考える人はまだまだ少なく、Gear Sでもそれは変わらない。
だが、Gear Sを使ってみると、スマートウオッチはスマートフォンの代わりとしてではなく、スマートフォンの利便性を拡張する常時接続端末として、有用であるという点に強くうなずける一般のスマートフォンにはできないことができ、スマートフォンよりもさらに携帯性が高く、楽しんで使える。Gear Sは、制約はあるものの、多くのことを的確かつ驚くほど実用的に実行できる。
もし金銭的な余裕があるのであれば、購入することをお勧めしたい。ただ1つ、重大な問題がある。Gear Sは、そのスペックの割に高額である点だ。Verizonモデルの希望小売価格は、契約有りの場合で250ドル、契約無しでは300ドルとなっている。他の通信事業者でも、条件によって異なるが200~350ドルだ。スマートフォンを助成金付きの契約を利用している場合、Gear Sの方が高額になる可能性が高い。ハードウェアを小型化するコストを考慮に入れたとしても、並外れて高い。
もっとも、これはGear Sに限ったことではない。もっと機能の少ない競合のスマートウオッチも、その多くが同じような高価格帯の設定になっている。だが、それもある意味で当然の成り行きといえる。メーカー各社は、スマートウオッチの購買層を一部のハイエンドユーザーと定めており、ハイエンド市場向けの価格を設定しているからである。市場価格が下がるまでは、この点が普及の大きな障害になるだろう。
長所
- しっかりとしたハードウェア
- Bluetooth以外の通信手段にも対応
- 十分なバッテリー駆動時間
短所
- 高い価格設定
- 限定的な互換性とアプリの選択肢
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