速い、静か、省電力――注目技術の現状と未来
1Gバイト1ドルも、「オールフラッシュアレイ」の “高コスト”は解消されるか
オールフラッシュストレージアレイの導入が進んでいる。同技術が大きな注目を集める理由は何か、またどういったアプリケーションが最もその恩恵を受けることができるのだろうか。
オールフラッシュストレージアレイ(オールフラッシュアレイ)の認知度は高まり、企業での導入率が上がっている。筆者が経営する米Demartekでは、一部の大手IT部門がオールスフラッシュアレイを購入計画に組み込んでおり、そのような企業ではオールフラッシュアレイがTier-1ストレージプラットフォームの標準になりつつあるという話も聞いている。
本稿では、オールフラッシュアレイの購入プロセスを紹介する。IT部門でオールフラッシュアレイがTier-1ストレージと見なされている理由や、フラッシュの性能向上で最大の恩恵を受けるアプリケーションについて説明する。
オールフラッシュストレージアレイの歴史
企業はオールフラッシュアレイをTier-1ストレージとして使用することを検討している。その理由は、現在の外部HDDストレージシステムと同レベルの管理機能などがオールフラッシュアレイに搭載されるようになったことにある。当初、オールフラッシュアレイにはエンタープライズクラスの容量や機能はなく、特定のアプリケーションのパフォーマンスを向上する目的で使用されていた。だが、現在のオールフラッシュアレイの容量、物理的な特性、アプリケーション、機能、耐久性は、業界をリードするHDDアレイに匹敵するまでになった。
現在、エンタープライズ向けオールフラッシュアレイで使用されている個々のソリッドステートドライブ(SSD)の中には、1.6Tバイトや1.9Tバイトの容量のものがある。これは、エンタープライズ向けの1万rpmまたは1万5000rpmのHDDの容量に勝っている。現在、7200rpmのHDDには上述より大きな容量のものもある。だが、SSDの容量は急速に増えている。
オールフラッシュアレイの物理的な特性も、IT管理者にとって魅力的だ。多くのオールフラッシュアレイでは、2Uストレージシステム当たりの消費電力が1000ワットを大きく下回っている。データセンターでは、大量の電力を地元の電力会社から入手できないことが多いため、消費電力を削減するテクノロジーであれば、どんなものでも役に立つ。
オールフラッシュアレイは消費電力が少ない。HDDと同等の冷却装置は必要なく、概してあまり発熱しないため、データセンターの空調要件が緩和される。さらに、同じラックスペースに収まるオールフラッシュアレイとHDDアレイを比較すると、動作音に関してはオールフラッシュアレイの方が静かなことが多い。
複数のアプリケーション
オールフラッシュアレイの出現と時を同じくして、興味深いワークロードのトレンドが現れている。当初、IT部門は1台のオールフラッシュアレイで1つのワークロードやアプリケーションを実行していた。オールフラッシュアレイでは1つのアプリケーションを非常に速い速度で実行できるため、パフォーマンス面でアプリケーションを増やす余地があることは多かった。その結果、IT部門は1台のオールフラッシュアレイに別のワークロードを追加するようになった。そして、複数のワークロードを追加するように変化した。
例えば、複数のオンライントランザクション処理(OLTP)とデータウェアハウスのワークロードを同じ1台のオールフラッシュアレイで実行して、非常に高いパフォーマンスを実現することができた。だが、同じ容量のHDDでは、これと同じ複数のOLTPとデータウェアハウスのワークロードを実行して、同じように高いパフォーマンスを達成することはできなかった。
エンタープライズクラスの機能
現在、多くのオールフラッシュアレイには、高度な機能が搭載されている。例えば、圧縮、データ重複排除、シンプロビジョニング、複製、スナップショット、暗号化テクノロジーなどだ。圧縮やデータ重複排除など、一部のデータ削減テクノロジーは、一定量の未加工のフラッシュに対して処理を行って、使用可能な実効容量を増加させることができるため、価格引き下げに役立つ。
ただし、さまざまなベンダーが同じ実効データレートに基づいて価格を算出しているわけではなく、実効容量は格納するデータの種類によって異なる。そのため、これは混乱の原因にもなり得る。また、圧縮してからデータ重複排除を行うのがよいか、その逆がよいかについては、製品ベンダーの間で議論がなされている。オールフラッシュアレイのアーキテクチャは適切な順序を左右する一因となる。
一般的に、オールフラッシュアレイの管理は、従来のHDDアレイよりも簡単であるように思える。従来のHDDアレイでは論理ボリュームの作成方法に制約があった。ディスクグループの作成にはグループ内の定数のディスクを使用し、そのディスクグループには特定のRAIDタイプを関連付けなければならなかった。また、ストレージの管理者はディスクグループを把握する必要があり、大規模なアレイでは、この作業に多くの時間を要する場合があった。ディスクグループを変更する場合も、非常に多くの作業が必要になった。現在のオールフラッシュアレイでは、ワイドストライプや可変ストライプのバリエーションを使用して、システム内の多くまたは全てのドライブやフラッシュモジュールにまたがるボリュームを構築することが可能だ。
オールフラッシュアレイの耐久性は、いつも議論の的になっている。ウェアレべリング、エラー訂正コード、その他のフラッシュコントローラーレベルの関連機能の向上により、耐久性に関する多くの問題が解決された。オールフラッシュアレイ製品は、現場でもある程度使用されており、エラーの発生率は非常に低いことが判明している。場合によっては、HDDのエラー発生率よりも低いほどだ。そのため、ベンダーがオールフラッシュアレイに5年保証を付けていることも珍しくない。
オールフラッシュアレイの価格についてはいつも興味深い議論がなされている。数年前、オールフラッシュアレイの目標価格は1Gバイト当たり5ドルだった。この目標価格は、NANDフラッシュテクノロジーの容量拡大と、圧縮やデータ重複排除などのデータ削減機能の進歩により引き下げられている。現在、大容量モデルを購入した場合、この価格は実効容量1Gバイト当たり約2ドルまで下がっている。大容量モデルのオールフラッシュアレイでは、1~2年のうちに1Gバイト当たりの価格が1ドルに到達するという話もあるほどだ。
顧客にとって魅力的なポイントの1つは、今現在必要な容量のフラッシュストレージを購入して、2~3年後に価格が下がったときに容量を増やせることだ。そのためには、ある程度のサイズのドライブ/フラッシュモジュールを今購入して、それより大きなドライブ/フラッシュモジュールを翌年に購入するという計画を立てる必要がある。
パフォーマンスの向上
Demartekには独自のテスト部門があり、多くの時間をかけてサーバ、ネットワーク、ストレージシステムなど、さまざまなパフォーマンスの側面について測定している。ストレージシステムについては、通常、次の3つのストレージパフォーマンスの基本的な指標を測定している。
- 1秒当たりの入出力操作(IOPS)
- Mバイト単位で測定した1秒当たりのスループット(MBps)
- ミリ秒(ms)またはマイクロ秒(µs)単位で測定した遅延時間とアプリケーションホストサーバに関するその他の指標
オールフラッシュアレイをテストして最初に気付いたのは、HDDベースのアレイと比較して、3つの基本的な指標とパフォーマンスの一貫性に大きな違いがあることだった。ワークロードに左右されるが、HDDベースのアレイよりもオールフラッシュアレイの方が、全体的なパフォーマンスに一貫性が見られることが多い。その傾向は遅延時間の測定で顕著だった。
OLTPデータベース、仮想デスクトップインフラ、Webサーバをはじめとする多くのワークロードは、遅延の改善によるメリットを享受できる。このようなワークロードをオールフラッシュアレイに移行すると、応答時間が短縮され、パフォーマンスが一貫して向上するため、エンドユーザーの操作性が大幅に向上する。具体的な値はワークロードによって異なるが、多くのオールフラッシュアレイでは、平均遅延時間を1ms未満に抑えられる。
IOPS
トランザクションベースのワークロードの大半は、IOPS向上の影響も受けやすい。同一フォームファクターで、個々のHDDが実行できるIOPSは数百であるのに対し、個々のSSDが実行できるIOPSは数千にも上る。このような種類のドライブ(2.5インチ)をオールフラッシュアレイに配置した場合、2Uシステムで10万~40万IOPSという性能が実現できることも少なくない。
他のオールフラッシュアレイでは、さまざまなフォームファクターでフラッシュを使用している。例えば、PCI Express(PCIe)カードや独自のフォームファクターなどだ。これらは「モジュール」と呼ばれることもある。このような非ドライブフォームファクターの多くは、PCIeなどのインタフェースを使用しているため、SSDよりもモジュール当たりのパフォーマンスが高い。このようなシステムの中には、ドライブフォームファクターシステムよりも高いIOPSを実現するものもある。一部の顧客にとっては、トランザクションワークロードを処理して余りある性能だろう。また、このレベルのパフォーマンスが顧客に新しい応用のチャンスをもたらす可能性もある。
一部の大企業はスループットが向上できることから、オールフラッシュアレイを活用している。大規模なデータベースでは、一部の抽出/変換/読み込みのワークロード、分析プロセス、アプリケーション固有の複製タスク、バックアップタスク、ストリーミングタスクの実行時間を大幅に短縮することができる。オールフラッシュアレイを使用すると、具体的な時間はワークロードによって異なるが、通常、数時間(場合によっては数日間)単位で実行時間の短縮が可能だ。毎日または毎週繰り返し行うことで、ストレージシテムに掛かる高いコストを埋め合わせできる。
オールフラッシュアレイが使用されるようになって久しい。オールフラッシュアレイの多くは企業が必要とする高度な機能を備え、高いパフォーマンスを実現している。この状況を踏まえると、オールフラッシュアレイを買わない理由を見つけるのは難しい。また、オールフラッシュアレイの価格は数年前よりかなり手頃になっており、信頼性も大幅に高くなっている。
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