幹部が語る成長シナリオ
フラッシュが火をつけたIBMの本気――10億ドル投資の意味とは
製品ブランド名の変更や継続的な投資の実施など、米IBMはフラッシュストレージや管理ソフトウェアに注力する姿勢をより鮮明にしはじめた。同社の幹部が語る成長戦略にもその本気度がうかがえる。
米IBMでストレージ担当GMを務めるジェイミー・トーマス氏は、同社の「IBM Spectrum Storage」がもたらす柔軟性により、同社のクラウドサービス「IBM SoftLayer」でコモディティハードウェア、オブジェクトインタフェース、拡張ストレージが使用できようになると語る。
米IBMのストレージ部門は2つの事象によってソフトウェアに比重を置くことを表明している。1つは、2015年2月に同社製品群ブランドを「IBM Spectrum」に変更したこと。もう1つは、今後5年間で10億ドルの投資を行うと公表したことだ。ストレージソフトウェアに対する予定投資額は、同社が2013年に公表したフラッシュストレージに対する投資額と同額の10億ドルである。
米TechTargetは、トーマス氏と対談し、IBMのストレージソフトウェアとフラッシュに対する取り組みについて話を聞いた。
――IBMは2013年にフラッシュに対して10億ドルの投資を行うと発表しました。また、最近では「IBM Spectrum Storage」のリブランディングに関連して、ソフトウェアに対して10億ドルを投資すると発表しました。一体何に対して投資するのでしょうか。
トーマス氏 IBMは2012年に米Texas Memory Systemsを買収しました。フラッシュに対する10億ドルの投資は、この買収が発端となっています。同社のノウハウを獲得して社内に統合し、この買収を足掛かりとしてフラッシュ事業に乗り出しました。そして、この事業は大きな成功を収めています。
Spectrum Storageに対する10億ドルの投資は、IBMが実現しようとしている機能とその支援のために行っている応用研究に対する投資の総額です。Spectrum Storageファミリーは、こうしたストレージ環境を管理する機能と最適化する機能の両方を備えています。
――新たに行っている投資について詳しくお聞かせください。
トーマス氏 新しい投資の対象となっている最新の製品は「Spectrum Scale」(Scale)と「Spectrum Accelerate」(Accelerate)です。Scaleは、IBMが長年注力してきたファイルシステム「GPFS」(General Parallel File System)を基盤としています。当社はScaleに新しいプロトコルのサポートを追加するため、大規模な投資を行いました。その狙いは「OpenStack Swift」との統合によってオブジェクトストレージのサポートを実現し、ファイルストレージとオブジェクトストレージの両方をサポートできるようにすることです。大規模なデータベース環境にフラッシュを効果的に統合し、当社の「LTFS」(Linear Tape File System)を使用してテープを統合するには、テープとのインタフェースとなるアーカイブ機能が極めて重要になります。特に、顧客がテープに保存されたデータを基本動かさない大規模なデータプールと見なしている環境では、このインタフェースが重要な役割を果たします。なお、現在LTFSは「Archive」という名前で提供しています。新たな投資の大部分はScaleに関連した分野を対象としています。
Accelerateに関する分野に話を移しましょう。IBMの「IBM XIV Storage System」は実績のあるアプライアンスですが、重要なのはXIVをハードウェアから分離するための技術革新です。XIVをハードウェアから分離すれば、顧客が所有しているコモディティベースのストレージでXIVを実行できるようになります。この分野には1年以上前から投資を始めています。
ScaleやAccelerateをはじめとしたストレージ製品に対する取り組みは、もう1つあります。それは、ストレージ製品をSoftLayerに組み込むことです。SoftLayerでは2014年に従量課金制価格モデルを導入しました。当社の顧客には、ストレージ製品を運用している企業があります。その目的は「Hadoop」ベースのデータ処理です。ビッグデータを処理したくても、それだけの処理能力が社内にない場合を考えてみてください。ストレージ製品を組み込んだSoftLayerがあれば、顧客は高い柔軟性を手に入れることができます。つまり、オンプレミスでストレージ製品を運用しながら、追加の処理能力が必要になったときには、自動的にSoftLayerに拡張することが可能です。
――Software -Defined Storageの長所の1つは、コモディティハードウェアで運用できることです。IBMはこの方向に進んでいるとお考えですか。IBMはハードウェアから離れてソフトウェア重視の路線に進んでいるのでしょうか。
トーマス氏 確かに、それはIBMの戦略に含まれています。ScaleやAccelerateなどの製品が目指しているところです。これらのインフラストレージ製品は手持ちのコモディティベースのハードウェアで運用することも、アプライアンスとしてパッケージ化された製品を購入することもできます。つまり、顧客に選択肢を提供しています。Scaleは米Intel製の全サーバで運用可能です。また、当社の「POWER」プロセッサを基盤としたサーバでも運用できます。
当社の新規顧客の1社で、世界最大の電力会社である中国国家電網公司は、Accelerateを特に高く評価しています。同社は既に大量のIntel製サーバを保有していました。新規顧客の中には、数千台ものIntel製サーバを保有している企業もあります。そのような顧客が当社のソフトウェアを導入して既存のサーバにインストールすると、既存のハードウェアを自由に管理できるようになります。ある特定の日に25台のサーバでAccelerateを実行することを決めたとしましょう。この判断には何ら問題ありません。そして、翌日に、この同じ25台のサーバは別の目的に使用することもできます。サーバはAccelerateとひも付けられていないため、このような対応が可能になります。
顧客はさまざまなニーズを抱えています。ストレージインフラソフトウェアの管理は、データベースやアプリケーションサーバなど、大規模なソフトウェアの管理と同じようなものだと考えるのがよいでしょう。データベースを管理するとき、顧客はハードウェア環境で高可用性が必要になります。それから、年中無休でアクセスできて、フェイルオーバーの機能も必要になります。その全てを制御しなければなりません。大きなIT部門を保有していることで、この種の作業に自信を持っている顧客は少なくありません。サービスプロバイダー、大規模な金融機関、電力会社など、その業種はさまざまです。このような顧客は「ソフトウェアがあれば十分です。Intel製サーバの高可用性は社内で維持できます」と話します。これに対して、「このような管理作業については支援が必要なので、全部まとめてアプライアンスとして購入したいと考えています。アプライアンス形式であれば、こうしたソフトウェア以外の面をある程度IBMに管理してもらえます」と話す顧客もいます。IBMの戦略は顧客が選択できるようにすることです。
――IBMがコモディティハードウェアで実行できるソフトウェアを単独で購入できる選択肢を用意しなかったことが、顧客離れを招いていたことはご存じですか。今度はハードウェア関連の売り上げが落ち込む可能性について不安はありますか。
トーマス氏 :当初の目的は、次世代インフラに移行している顧客に訴求することでした。こうした顧客は、ビッグデータや分析とプライベートクラウドの導入において何が本当に必要かを検討していました。移行を検討している顧客や購買担当者と話をすると、当時インフラは既に大きく変化していることが分かりました。高度な柔軟性が求められていたのは、インフラでした。つまり、インフラの規模を容易に拡縮する機能が求められていました。このような要件は、私からすれば目を見張るレベルで既に実現されていました。ただし、社内の適切な人物から聞き取りを行わなければ、このような変化には気付かなかったでしょう。
今度はあらゆる事業と同じように、「この方向に進んだ場合は、既存の事業に悪影響を及ぼすことになるだろうか」と自問自答する必要が生じます。これは永遠の課題ですが、将来を否定することもできません。革新者が避けて通ることができないジレンマです。ただし、当社はこのようなSoftware Defined Storageに付随するニーズの兆候を目の当たりにしてきました。それは、フラッシュなどのテクノロジーを利用して、アプリケーションのさまざまなパフォーマンスを向上するというニーズです。Software Defined Storageとフラッシュは間違いなく好相性だと考えています。また、当社のフラッシュベース製品からお分かりいただけるように、「IBM FlashSystem V840」などの製品は、フラッシュとソフトウェアの組み合わせを強みとしています。
――IBMのハイエンド製品「DS8000」のような製品で、今後はフラッシュの搭載率が上昇すると予想されますか。それとも、IBMでは他のシステムではなくFlashSystemを売り込んでいくのでしょうか。
トーマス氏: 両方の路線を維持するつもりです。当社のオールフラッシュエンクロージャを搭載したDS8000は、メインフレームに付随するワークロード環境向けのサーバです。ストレージ機器とメインフレームとの相互接続性を実現した当社の技術によって、高速接続が可能になっています。DS8000のシステムは、メインフレームで実行するデータベースワークロードに合わせて最適化しています。また、2014年末にDS8000を導入した顧客数社は、フラッシュとソフトウェアの組み合わせにより並外れたパフォーマンスの向上を実現しました。IBMはこうした新しい特徴がメインフレーム環境とうまく連携するように注力してきましたが、この路線を変更する予定はありません。
ハイエンド製品のフラッシュ対応が向上するにつれて、ハイエンド製品がフラッシュに移行する割合は上昇すると考えています。多くのハイエンド製品には更新が付き物です。このような更新のタイミングで顧客がフラッシュの導入を検討する可能性が高まるでしょう。
――オブジェクトストレージに対するIBMの戦略を教えてください。中核はOpenStack Swiftとの統合になりますか。
トーマス氏 OpenStack Swiftとの統合には確かに投資しています。Scale製品では統合が完了しています。そのためOpenStack Swiftと統合した場合でも顧客はオブジェクトストレージをサポートできます。当社のクラウド環境に関して、SoftLayer担当チームが、既にSwiftによってオブジェクトストレージのサポートを実現しています。また、これまでずっと研究チームとソフトウェア提供チームが進めてきた有機的な活動が多数あります。現時点で、お伝えできることはありませんが、当社は間違いなくエンタープライズオブジェクトストレージ市場に注目しています。
――IBMがオブジェクトストレージ市場に自社製品を投入する状況は想像できますか。
トーマス氏: もちろん想像できます。ただし、現時点で、当社の具体的な予定について明言できることはありません。
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