ガートナーが予測
PHSが意外に人気? ユニファイドコミュニケーションの普及が進まない理由とは(1/2 ページ)
多くのベンダーがコミュニケーションを促進するためさまざまな製品を提供しているUC市場。だが、意外に普及が進んでいない。ガートナーにその理由と今後の展望を聞いた。
米IT調査会社Gartnerの定義するユニファイドコミュニケーション(UC)システムは、メールやインスタントメッセージ(IM)、音声/映像通信、会議システムのようなさまざまな機能を持つ総合製品のことを指す。
多くのベンダーがこの市場で多種多様の製品を提供しているが、市場は爆発的な伸びを示していないとガートナージャパン リサーチ部門 ITインフラストラクチャ&セキュリティ リサーチディレクターの池田武史氏は解説する。
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なぜUC市場が“低空飛行”を続けているのか
UC市場の中でも代表的な製品ともいえる日本マイクロソフトの「Skype for Business(旧Microsoft Lync)」は、ガートナーが実施した2014年11月の調査時で、従業員2000人以上の企業での導入率が約15%。2013年の導入率も同程度で、2012年は10%以下だった。「ここ数年で多少の伸びを示しているが、こうした製品が普及するまでには時間がかかるだろう」と池田氏は話す。
一方、PBX(機内交換器)やテレビ会議専用のセットトップボックスなどは、従業員2000人以上の企業においては7~8割程度の普及率だと池田氏は説明。「これらの技術は一般的なインフラとなっている」という。
そのPBXは、置き換え先の選択肢としてUCがある。また、PBXの機能をオンラインサービスとして提供する「クラウドPBX」へ移行するという選択肢も存在する。とはいえ池田氏は、「いまだにPBXの更新時に従来型PBXを延長する企業も多く、クラウド型PBXの普及率は15%程度にとどまる」と述べる。
従来型PBXから、UCやクラウドPBXへの移行が進まないのはなぜか。
「さまざまな選択肢は出てきているものの、一気に従来のPBXを撤廃するとなるとちゅうちょするユーザーが多い」と池田氏は説明する。特にクラウドPBXについては、価格的にも従来型のPBXと比較して劇的に下がるほどではないため、「積極的にクラウドへ移行する理由を見いだせない企業が多い」という。
最新技術を積極的に導入するアーリーアダプターの大企業がUCやクラウドPBXを採用するケースもあるという。だが、「コストもかかる上、導入効果が測定しにくく、注目されているというだけでは導入に踏み切れない企業が多いようだ」と池田氏は説明する。
新テクノロジー普及の阻害要因は
UCの普及に時間がかかっている理由はどこにあるのだろうか。池田氏は、「多くの企業は、音声や映像システムに多大なコストをかけたくないと考えているからだ」と指摘する。「固定電話が普及していなかったころは、コミュニケーションをするために、膨大な費用を掛けてでも固定電話を導入する意味があった。しかし今では、携帯電話や『Skype』など手軽で安価な通信手段も増え、簡易的な手段でコストを下げつつコミュニケーションすることに注目が集まっている」と説明する。
携帯電話の普及は、企業のPBXの在り方にも影響を与えている。今では使われなくなったテクノロジーと思われがちなPHSも、企業内の内線システムとしてはいまだ根強い人気を誇っていて、追加導入を検討する企業も存在するという。池田氏は、「携帯電話を会社で支給している場合、PBXの更新時に携帯電話保持者の固定電話をなくしてはどうかとアドバイスすることもある」と話す。各携帯電話キャリアも、企業内で利用する携帯電話の通話料金を定額にして内線電話のように利用できるFMCサービス(固定通信と移動通信を組み合わせたサービス)を提供しており、こうしたサービスの存在もユーザーがUCから遠のく要因の1つではないかと池田氏は見ている。
「各ベンダーがさまざまなツールを提供しているが、PBXの更新期間が長いこともあり、ユーザーのリプレース間隔はあまり縮まっていない。またこの先、数年で突然UCの普及が進む理由も現在のところ見当たらない。企業の多くが、今あるツールの快適さから抜け出せないのが現状だ。オフィスの移転がきっかけになったり、モバイル環境に対応したいという思いがあったりと、移行のきっかけは少なからずある。だが、実際にはそのようなニーズに応えられるテクノロジーがあっても、大幅にコスト削減できるといった動機付けがない限り市場が大きく動くことはないだろう」と、池田氏は慎重な見解を示す。
成長を見せるWeb会議サービス
UC市場全体の伸びが緩やかな一方で、Web会議サービスは普及が進んでいると池田氏は指摘する。Web会議を利用して、スマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスでコミュニケーションを取ったり会議に参加したりすることが増えているというのだ。2014年11月のガートナーの調査によると、従業員数2000人以上の企業でWeb会議を利用している企業は約70%弱。2013年の50%弱から約20ポイント成長したという。
この成長の理由として池田氏は、Web会議がテレビ会議よりも手軽に利用できることや、サービス化されているため運用の手間が掛からないことなどを挙げる。「テレビ会議は、実際に会うことのできない人と会議ができるシステムとして普及した。だが、システムが設置されている場所に参加者が集まる必要がある。それがWeb会議の場合、手元にあるデバイスでインターネットを介して会議に参加できる。お互いの時間さえ確保できれば、システムが設置されている場所に集まる必要もなくなるのだ。場所を選ばない自由な使い方ができるという点で、Web会議は注目されている」と同氏は説明する。
もちろん、既に導入が進んでいるテレビ会議も廃れることはないと池田氏は言う。「実際に会って話をしたいが、距離などのさまざまな理由で無理だという相手には、Webよりもクオリティが高く大画面で臨場感のあるテレビ会議が最適だ。新規導入はもちろん、追加投資を検討する企業も存在する」(同氏)。ただし、オンプレミスでの運用から、サービス化されたテレビ会議システムを検討する企業が多いと説明する。
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