あの注目のSDNプロトコルは今
誰も話題にしなくなったOpenFlow、それでもSDNは前へ進む(1/2 ページ)
SDNとOpenFlowは、かつてはほとんど同義だった。だが今では、OpenFlowはいかにも影が薄い。この変化はネットワーク担当者にとって重要な教訓だ。
「SDN」と「OpenFlow」はしばらくの間、同列に考えられていた。ネットワークの専門家がSDN(Software Defined Networking)という言葉を盛んに使い始めた頃、OpenFlowも併せて取り上げるのが常だった。しかし今では、SDNが話題に上っても、OpenFlowは言及すらされないことが多い。かつては注目度が高かったこのSDNプロトコルはどうなったのか。悪いアイデアだったのか。OpenFlowはもう過去のものになってしまったのだろうか。
こうした疑問に答えを出すため、まず、OpenFlowが何を目指していたのかを確認しよう。OpenFlowプロトコルの仕様を管理する非営利の標準化団体Open Networking Foundation(ONF)は、次のように述べている。
併せて読みたいお薦め記事
SDN導入を成功に導くには
OpenFlow/SDN、誤解の構造
SDNの基礎知識
OpenFlowとは何だったのか
「OpenFlowは、SDNアーキテクチャのコントロールレイヤーと転送レイヤーの間の標準通信インタフェースとして初めて定義された。OpenFlowを使用することで、物理的および仮想的な(ハイパーバイザーベースの)ネットワーク機器(スイッチやルータなど)の転送プレーンに対して直接アクセスし、操作することができる」
転送プレーンは従来、コントロールプレーンとともにネットワーク機器に組み込まれていたが、OpenFlowは基本的に、SDNコントローラーから送信されるフロールールに基づいてトラフィックの転送に関するルールを設定し、転送プレーンに適用することを可能にする。これは、コントロールプレーンから転送プレーンを分離できることを意味する。これによってオープンでシンプルなスイッチの構築が可能になる。米Google、NTT、米Goldman Sachsといった大手企業がいち早くOpenFlowを導入し、大きな成功を収めた事例が報告されている。ベンチャーキャピタリストは、OpenFlow対応機器を手掛ける企業に多額の資金を投じ、多くの人が、OpenFlowは2015年までに業界を席巻するだろうと予想した。だが、それは見込み違いだった。
これまでのところ、OpenFlowが広く普及していない理由としては以下が挙げられる。
OpenFlowの新しいバージョンに対応するスイッチが乏しい
「OpenFlow 1.0」に対応するスイッチは多いが、ベンダーは「OpenFlow 1.3」のサポートには消極的になっている。その一因は、この新プロトコルで採用されている記述方式にある。OpenFlow 1.3では、属性の多くがTLV(Type:タイプ、Length:長さ、Value:値)として定義されており、多くのベンダーがこのTLVをサポートしないことを選択した。ONFはテストおよび適合性プログラムにより、OpenFlow 1.3のサポートを促進しようと最善を尽くした。だが多くのスイッチベンダーが、メリットよりもサポートのコストの方が重要であると考えた。
半導体チップにおける大規模OpenFlowテーブルのサポートの遅れ
カスタムチップやマーチャントチップ(汎用ネットワークチップ)のメーカーがOpenFlowの大規模なフローテーブル(あるいは単に多くのテーブル)をサポートするには、自社製品に変更を加える必要がある。だが、この変更がまだ行われていないため、これらのチップの多くは、高速のTCAM(Ternary Content Addressable Memory:三値連想メモリ)を有効利用できない。対応チップの投入が遅れていることが、OpenFlowの普及のネックになっている。
平均的なネットワークエンジニアは、OpenFlowプロトコルの展開方法を理解していない
ネットワークエンジニアは、未知のプロトコルを学ぶことに慣れているが、それはSDNやOpenFlowが登場する以前のプロトコルに限ってのことだ。ほとんどのエンジニアは、転送プレーンではなく、コントロールプレーンを規定するプロトコルを学んできた。OpenFlowを展開するには、スイッチのパイプライン処理のような事項を新たに理解する必要がある。この処理はほとんどのネットワークエンジニアにとってなじみのない概念だ。
業界では、こうしたOpenFlowの課題解決に向けた取り組みが行われてきたが、他のインタフェースも定義され、市場にひしめいている。一方、OpenFlowスイッチを作っていたベンダーのマーケティング部門では大半が、OpenFlow自体は売りにくいことをすぐに理解した。そこでこうしたマーケティング部門の多くは、OpenFlow製品の位置付けをより広い観点から見直し、“SDNソリューション”と銘打った。販売アプローチが変わっても、OpenFlowプロトコルを使ったソリューションであることに変わりはなかったが、ユーザーはそのユースケースだけを見ていればよかった。すなわち、ユーザーは上位の抽象化レイヤーで操作や構成を行うことができ、下位レイヤーで機能するこのプロトコルを学ぶ必要がなかった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー