デジタル時代のERP再考(1)
情報技術の“ルネサンス期”、ERPの在り方とは?(2/3 ページ)
リアルタイム分析すら可能に
従来はこうしてネットワークを流れる大量のデータを処理することはおろか、保管することすらままならなかった。しかし昨今の技術革新により、ほぼリアルタイムに分析できるようになってきた。
その代表的な技術が「SAP HANA」で使われているインメモリコンピューティングである。この技術を利用した超高速データベースの出現は、データを収集する本来の意味である「分析から何らかの示唆を得て、判断をし、行動につなげる」ことを可能とした。
だが、少なくとも日本の企業活動においては、情報技術の進歩による恩恵を十分に受けているとは言い難い。最新の技術が世に出ているにもかかわらず、まだ数多くの企業が積極的に活用することに躊躇(ちゅうちょ)している。導入を検討していることは間違いないが、結局、事例が少ないことや、費用対効果が不明だという理由で見送られるようである。最新の技術なのだから事例は少ないのは当たり前だ。
一方で海外の進歩的な企業はFirst Mover Advantage(先行者利益)を得るために、事例が少ないというリスクを取って積極的に最新技術を取り入れている。データ活用の領域においても同じことがいえる。最新のテクノロジーをいち早く導入することで、他社よりも早くデータを集められる。集められたデータを分析することで新たな発見もあるかもしれない。今や蓄積されたデータを強力に分析することができるのである。データを蓄積、分析し、そこから得られた示唆を行動に移す。その結果とそこで得たデータをさらに分析し、新たな示唆を得るといった好循環が生まれる。もちろん、これは単純に最新技術を導入するだけではなく、導入によって得られたデータを活用する強い意思や目的があってこそのことである。
私は2015年5月、米国フロリダ州のオーランドで行われた「SAPPHIRE NOW」に出席した。2014年に引き続いての参加である。SAPやSAPに関係する企業から約2万人が参加する世界最大規模のIT関連イベントである。そこで基調講演や先進企業の事例などが紹介されるのだが、昨年と今年では趣が異なった。
2014年はSAP創業者の1人であるハッソー・プラットナー博士が次世代ERPを発表し、参加者間に衝撃が走った(正式リリースは2015年初め)。3億行とも4億行ともいわれるSAP ERPのソースコードをSAP HANAに最適化した形で書き直すなど想像もしていなかった。巨大化、複雑化し過ぎた情報システムを刷新することが極めて難しいのと同じように、そんなことはそもそも不可能だと思っていた。それだけにSAPが本気で次世代ERPの開発を進め、自社でそれを試験的に使い始めているという発表は衝撃だったのだ。
2015年のSAPPHIRE NOWでは、半年弱前に発表されたばかりの会計アプリケーション「SAP Simple Finance」の実績が発表された。想像を上回るスピードで浸透していることが分かった。確かにSimple Financeは会計機能の全てをカバーしているわけではないし、ロジスティクス系がそろっていなければ意味がないという意見もあるだろう。しかし、それを理解してSimple Financeを取り入れている企業は、来るべきリアルタイム経営とはどういうものかを体感し、その先に見える将来像を明確にした上で打ち手を考えているに違いない。新技術の導入が遅れることによって、競争力を失うことにつながるといっても過言ではない。
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