理想的なクラウド基盤を構築する方法【第4回】
ハイブリッドクラウド環境での理想的なDR方式と製品選定ポイント(1/3 ページ)
ハイブリッドクラウドを実現する際に考えておきたいのがDR(事業継続)だ。DRを構成する4つの技術要素とともに、可用性を高める仕組み、バックアップ/DRソリューション選定のポイントを解説する。
今回は、ハイブリッドクラウド環境のDR(事業継続)を検討する。実現方式と製品選定のポイントを下記の流れで解説する。
| 1 | DRの技術要素を理解する |
|---|---|
| 2 | プラベート/パブリッククラウド、それぞれの可用性を高める 2-1 バックアップしデータを保護する 2-2 クラスタ化し、サービスの可用性を高める |
| 3 | DRを考える 3-1 バックアップデータをパブリッククラウドにレプケーションする 3-2 プライマリデータをプラベート/パブリッククラウド間でレプリケーションする 3-3 プライベート/パブリッククラウドでグローバルクラスタを構成する |
| 4 | 見えてきた、次世代ハイブリッドクラウドDRソリューション |
これまでの連載
- 第1回:ビジネス部門から見た、理想的なクラウドの要件とは?
- 第2回:ハイブリッドクラウド環境ではここに注目、サーバ/ハイパーバイザーの選び方
- 第3回:ハイブリッドクラウドのためのストレージ/データ保護製品を一挙に比較
連載インデックス「理想的なクラウド基盤を構築する方法」
1.DRの技術要素を理解する
DRという言葉を漠然と捉えてしまっては、具体的な検討が一向に進まない。まず、4つの技術要素「(1)バックアップデータのレプリケーション」「(2)プライマリデータのレプリケーション」「(3)ローカルクラスタ」「(4)グローバルクラスタ」の理解が不可欠だ。そして、「技術要素の理解 → 方式(実装方法)検討 → 製品選定」という流れがプロジェクトの成功パターンである。
| DRの技術要素 | 特徴と概要 |
|---|---|
| (1)バックアップデータの レプリケーション |
DRを構成する際の必須の仕組み。プライベートクラウドのバックアップデータをパブリッククラウドへ複製すること。プライベートクラウドのサイト障害時にパブリッククラウドに複製したバックアップデータで復旧できる |
| (2)プライマリデータの レプリケーション |
プライベートクラウドのプライマリデータをパブリッククラウドに複製すること。パブリッククラウドにて、リストア不要で(マウントするだけで)使用できるため、復旧時間を短縮できる。ただし、データの整合性が確保する仕組みが必須である。アプリケーションデータのみに対応しているか、システム(OS)データも含め対応しているかで、グローバルクラスタの方式が異なってくる |
| (3)ローカルクラスタ | プライベート/パブリッククラウド内で、アプリケーションに障害が発生した際に自動でサービス復旧させる仕組み。プライベートクラウドでは、HW障害についても検討する必要がある。グローバルクラスタと連係・併用ができることが必須である |
| (4)グローバルクラスタ | プライマリデータのレプリケーションを使用して、パブリッククラウドにてサービスを自動/半自動で復旧させる仕組み。仮想マシン自体を切り替えるものと、アプリケーションのみを切り替える方式がある。また、ネットワークの切り替えや切り替え訓練を行えるものもある |
次章より方式/製品選定を検討していくが、下記の筆者の連載が参考になるだろう。内容は仮想環境のバックアップ、クラスタ、DRについてである。DRの技術要素について理解を深めるためにもご一読頂きたい。
【参考】仮想環境の“データ保護”製品選定 完全解説
VMware環境におけるデータ保護を「バックアップ」「HAクラスタ」「事業継続計画(BCP)/災害対策(DR)」の3つテーマで完全解説。それぞれのテーマで、技術解説、製品選定のポイント、製品機能/コスト比較の記事を提供する。
仮想環境ではハイパーバイザーの機能やAPIと連係するバックアップ/クラスタ方式が一般的になってきている。運用効率化のため、それらを使用することが多い。プライベートクラウドには、その方式をある程度そのまま適用することが可能だ。しかし、パブリッククラウドではハイパーバイザーやストレージへの操作が許可されていないため、そのままでは適応できない。それでは、現状の実現可能な方式と製品を検討していこう。
2.プライベート/パブリッククラウド、それぞれの可用性を高める
2-1.バックアップし、データを保護する
まず、プライベートクラウドのデータ保護は、ハイパーバイザーのバックアップAPIと連係したバックアップ方式がお勧めだ。VMwareの「VADP(vStorage API for Data Protection)」、Hyper-Vの「Hyper-V VSS Writer」がそれであり、多くのバックアップ製品(※1)が対応している。さらに、仮想マシンを丸ごと高速にバックアップし、リストアは細かな単位(仮想マシン、ファイル、アプリケーションデータ)で行える製品もある。
※1 大規模向けでは、「Veritas NetBackup/NetBackup Appliance」「IBM Tivoli Storage Manager」「CommVault Simpana」など。
ただ、KVM、Xenは物理環境と変わらないバックアップ方式(ネットワーク経由のバックアップ)のみ可能なため、VMwareやHyper-Vのような効率の良いバックアップは期待できない。また、最近注目されている「Docker」は使用されるシステムの性質上、バックアップを必要としないことが多い。
大規模な統合バックアップになるため、下記の機能を持つバックアップ製品を選定する必要がある。
プライベートクラウドのバックアップ製品選定ポイント
- ハイパーバイザーのAPIと連係したバックアップが行え、細かな単位(仮想マシン、アプリデータ、ファイル)のリストア
- 永久増分バックアップで高速なフルバックアップ
- 台数が増え、規模が大きくなってもシンプルな設定
- システムリソースを有効活用するための柔軟な並列ジョブ実行
- バックアップ対象が増減しても自動判別(運用開始後の設定変更の極小化)
- 教育不要なシンプルインタフェースのマルチテナンシー
一方、パブリッククラウドのバックアップ製品は、後述するバックアップのレプリケーションを考慮し、プライベートクラウドと同じものを選定するのが良い。そして、アプリケーションデータ、ファイルデータはパブリッククラウド上のバックアップサーバへネットワーク経由のバックアップを行うとよい。しかし、システム(OS)データはバックアップ製品でバックアップしてもよいが、クラウドのサービスメニュー(※2)を利用してのバックアップが効率よいだろう。
※2 「vCloud Air Data Protection」「Azure Backup」など
| バックアップデータの種類 | プライベートクラウド | パブリッククラウド |
|---|---|---|
| システム(OS)データの バックアップ |
ハイパーバイザーのバックアップAPIと連係した方法 | パブリッククラウドのバックアップサービスメニュー |
| アプリケーションデータの バックアップ |
ハイパーバイザーのバックアップAPIと連係した方法 または、ネットワーク経由のバックアップ |
ネットワーク経由のバックアップ |
| ファイルデータの バックアップ |
ハイパーバイザーのバックアップAPIと連係した方法 または、ネットワーク経由のバックアップ |
ネットワーク経由のバックアップ |
2-2.クラスタ化し、サービスの可用性を高める
プライベートクラウド内のサービスの可用性を高めるためにクラスタを構成しよう。ここではハイパーバイザーのHA機能と連係できるアプリケーション監視製品(※3)を推奨する。ハードウェアと仮想マシン自体の可用性は、ハイパーバイザーのHA機能に任せる。仮想マシン内のアプリケーションを監視し、障害時はアプリケーションまたは仮想マシンの再起動等を行う。仮想マシン間でクラスタを構成するより、仮想マシン数削減やハートビート、共有データ領域が不要になり構成がシンプルになる。
※3 「Veritas ApplicationHA」「SIOS Single Server Protection for Linux」など。厳密には異なるが、「CLUSTERPRO X SingleServerSafe」もVMwareやHyper-Vと併用が可能。「vSphere AppHA」はvSphere 6から提供が停止された。
なお、パブリッククラウドではハードウェアの可用性の担保はサービスとして行われるため、クラスタとしてはアプリケーションの可用性を考慮すればよい。アプリケーション監視製品を使用した場合は、別途仮想マシンの監視の仕組み(※4)を検討する必要がある。2台の仮想マシンでクラスタを構成したい場合は、仮想マシン上のレプリケーション製品と併用したソリューション(※5)が多い。なぜなら仮想マシン間でブロックストレージとしてのデータ領域を共有することは難しいからだ。
※4 「AWS CloudWatch」など。
※5 「WSFC+SIOS DataKeeper」「SIOS LifeKeeper+DataKeeper」「Veritas Cluster Server+Veritas Replicator」「NEC CLUSTERPRO」など。
| プライベートクラウド | パブリッククラウド | |
|---|---|---|
| アプリケーション障害 | ・アプリケーション監視製品 ・仮想マシン間クラスタ(共有データあり) ・仮想マシン間クラスタ+レプリケーション製品 |
・アプリケーション監視製品 ・仮想マシン間クラスタ+レプリケーション製品 |
| 仮想マシン障害 | ・ハイパーバイザーのHA機能 ・仮想マシン間クラスタ(共有データあり) ・仮想マシン間クラスタ+レプリケーション製品 |
・仮想マシン監視製品、サービス ・仮想マシン間クラスタ+レプリケーション製品 |
| ハードウェア障害 | ・ハイパーバイザーのHA機能 | ・クラウドベンダーの機能 |
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理想的なクラウド基盤を構築する方法
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