COTS環境やクラウドへの移行
「レガシーデータセンター」のたそがれ、移行を実現する4つの視点とは
独自のコードが使用され、複雑で混沌とした時代遅れのシステムが温存されているレガシーデータセンターはまだ至るところにある。脱却は難しいのか。
30年もずっと現役のメインフレームで膨大なCOBOLコードが使用されて、実装に何カ月かかかるプロセス変更が懸案になっている――。これはIT業界で驚くほど多くの人が直面している問題だ。
併せて読みたいお薦め記事
システムの進化はIT部門の仕事を奪うのか
- IT部門“30年選手”がクラウドを受け入れる日
- 現実味が増すIT担当者の“クラウド失業”、企業はもうサーバを持たない
- 「SDNとDevOpsで仕事を失いました」と嘆くネットワーク担当者の微妙な立場
- クラウドに仕事を奪われて失業する人、しない人
レガシーシステムからの移行事例
レガシー技術を使い続けるCIOの言い分
スーパーマーケットチェーンの米Wal-Martは、全米で地元の小規模商店を打ち負かしてきた。ビジネスモデルとともに同社の発展の原動力となってきたのが、仕入れをスピードアップでき、需要動向を素早く分析できるアジャイルなITシステムだ。しかしWal-Martも、極めて柔軟に事業を展開するネット小売業者の米Amazon.comには苦戦している。小規模小売業者はAmazonのITプラットフォームによって同社のWebサイトで販売ができる。
Wal-MartやAmazonの大成功は、優れたビジネス戦略を最良のITインフラを駆使して実行することで競争力が発揮されることを示している。それはレガシーデータセンター、サーバ、アプリケーションは退場させなければならないということだ。
レガシーデータセンターシステムや機器は低速で、運用・保守コストが高い。また、多くのレガシープログラミング言語は進化が止まっている。例えば、COBOLはもう学校で教えられておらず、ほとんどのプログラマーは、このプログラミング言語と関わりたくないと思っている。実際、履歴書にCOBOLのスキルを記載すると、最先端とは程遠い分野でキャリアを積んだ人と思われてしまい、就職で不利になると考えるプログラマーもいる。
「どうしてレガシー技術を使い続けるのか」と聞かれると、CIOは大抵、IT予算の制約と、現代的なシステムに移行する場合のコストとリスクを理由に挙げる。CIOは少なくともこの10年間、そうした説明の仕方を続けており、恐らく、前任者も同じことを言っていたのだろう。だが、会社の他の部分は全て折に触れて刷新する必要があり、さもないと会社は倒産してしまうだろう。
レガシー技術に依存したデータセンターを利用し続けるコストは、年々上昇していく。特定のコードモジュールに精通した人が退職していき、やがてある時点で新しい標準化されたアプリケーションとシステムに移行せざるを得なくなるからだ。ただし、これは移行に掛かるコストに限っての話だ。さらに重大なコストは、システムが硬直的で柔軟性に欠けるために、ビジネス機会を逃すことによるものだ。そのコストは通常、ITコストをはるかに上回るが、非常に定量化しにくい。そのために、レガシーデータセンターから移行することの費用対効果を証明するのは、非常に困難になっている。
レガシーシステムから移行するにはどうするか
レガシーシステムから移行するにはどうするか。以下の4つの視点から考えたい。
スコープを設定し、計画を立ててから移行を開始する
レガシーアプリケーションは近世の1666年における英ロンドンと似ていて、継ぎはぎのような改修や無秩序な拡張が繰り返されている。そうした状態が放置されていたために、ロンドンでは同年に発生した大火で甚大な被害が生じた。
だが、現代的なITプラットフォームに移行しようとする取り組みの大部分は、システムの見直しが課題として浮上すると、立ち消えになってしまう。レガシーシステムは一般的に、30年またはそれ以上前のビジネスのやり方に沿って作られている。このため、レガシーシステムを利用したビジネスプロセスを変更する必要があるのは間違いない。ところがほとんどの場合、企業はそうした問題意識を募らせながらも、現状維持に陥っている。
レガシーシステムを置き換えることができるパッケージ製品を探す
例えば、COTS(Commercial Off-The-Shelf:市販の既製品)タイプのERPシステムは、高いアジリティとベストプラクティスを提供する。
モジュラー構成のビジネスアプリケーションを展開することを検討する
従来のレガシーアプローチでは、さまざまな部門向けのアプリケーションモジュールが相互に密接に結合されていた。だが、最新のモジュラーアプリケーションの考え方では、モジュールとそのデータ交換機能とのインタフェースが重視されているため、各モジュールの高い独立性が確保される。
独自開発のビジネススイートは効率的に移行する
レガシーコードの必要性を評価する際は、思い込みに陥ることなく現実を直視しよう。ある調査報告書では、古いコードの約40%が使われていないとされている。だとすれば、不要なコードを特定し、無駄な移行措置を除外する必要がある。古い不要なビジネスプラクティスをサポートするコードは、かなりの量に上るかもしれない。
独自開発のコードはモジュール性が低く、一部を書き直さなければならない可能性が高い。必ずCOBOL以外の言語でコードを作成するようにする。
未来のIT部門:あなたの居場所はあるか
移行は決して容易なことではない。会社としての変革への決意が必要になる。
多くのIT担当者は、レガシーデータセンターを代替する方法として、COTS環境、さらにはクラウドへの移行を考え、こうした移行に伴って職を失う可能性を恐れている。レガシーデータセンターからこれらに移行した場合、COBOLプログラマーには居場所が見当たらない。管理者も、コモディティハードウェアやクラウドハードウェアでは、必要な人数は少なくなることを認識している。CIOと直属の幹部にとっても、自らのキャリアを通じて仕事と自らの能力の基盤だったものから離れるのは恐ろしい。
だが、レガシーサーバやプラットフォームから現代的で柔軟なモジュラーサーバやプラットフォームへの移行は、一朝一夕には完了しないだろう。また、そうした変化が人員体制に影響を与えるまでには、人々が考える以上に長い時間がかかる。レガシースキルがすぐに時代遅れになることもない。例えば、COBOL専門家は業界全体で不足しており、レガシーからの移行が進む中、人材不足は深刻化するだろう。レガシーシステムと新しいCOTSシステムの連係に関するスキルにも大きな需要がありそうだ。
一方、移行に抵抗があるのはIT部門だけに限らない。ビジネス部門も混乱が不気味に迫っていることを感じており、いずれ抵抗するだろう。移行プログラムには、全経営陣の明確な後押しに加えて、レガシーITの考え方からの脱却をトップダウンで強力に推進することも必要になる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー