理想的なクラウド基盤を構築する方法【最終回】
ハイブリッドクラウドで今すぐ実現できる技術、近未来に実現される技術(1/2 ページ)
理想的なハイブリッドクラウドを構築しようとした場合、現時点では何ができて何ができないのか。サーバ、ハイパーバイザー、ストレージ、ネットワーク、運用といった要素ごとに解説する。
本連載の第1回では、原点に立ち戻り、ITシステムのクラウド化の目的がビジネスの伸長であることを再確認した。その上で、ビジネス部門/情報システム部門の両方の視点からITインフラ基盤に対する要望事項を精査し、理想的なITインフラ基盤がクラウドであり、現時点での理想的なクラウドがハイブリッドクラウドであることを紹介した。
第2回~第6回にかけては、理想的なクラウドを構成する際に検討が必要となる要素を、幾つかの専門分野に分け、最新の情報を含めて解説した。
最終回となる今回は、これまで個別に検討してきたクラウドの構成要素を組み合わせ、現時点で構成可能なクラウドを具体化する。さらに、今後各分野で予定されている将来像を組み込んだ構成もイメージし、理想的なクラウド環境をどこまで実現できるのかを確かめる。
| 1 | 理想的なクラウド環境のおさらい |
|---|---|
| 2 | 現在実現できる構成 |
| 3 | 将来的に実現が予定されている構成 |
| 4 | 理想的な環境実現への第一歩 |
1.理想的なクラウド環境のおさらい
まずは、これまで連載してきた構成要素ごとに、理想的なクラウド環境について簡単にまとめておく。
第1回の概要でも触れたように、理想的なクラウド環境では、利用するシステムがどのクラウドに存在するかといった概念を考慮する必要はない。プライベートクラウドやパブリッククラウドを意識することなく、利用者が要求するサービスレベルに従って自動的にシステム領域が配置され、最適なインフラ環境が利用できる。
本連載で取り上げた要素は、以下の5つである。
- ノード(サーバ、ハイパーバイザー、クラウドOS)
- ストレージ
- DR(災害対策)
- ネットワーク
- 運用、自動化
各要素の要件をまとめると表1のようになる。
これらの要件をより高いレベルで達成できれば、理想的なクラウド環境が実現できるといえる。
2.現在実現できる構成
クラウドの各構成要素と実装状況を簡単に解説した後、それらを利用したクラウドをイメージしてみる。
ノード(サーバ、ハイパーバイザー、クラウドOS)
サーバに関しては、クラウド基盤に求められるSLA(サービス品質保証)を担保できるものであれば問題ない。しかし、プライベートクラウド基盤の運用管理などの観点から、より理想を追求する場合は、統合管理、プロビジョニングツールがあるハードウェアを採用できるとよい。
ハイパーバイザーについては、相互接続の容易性から、接続先のパブリッククラウドで採用されているハイパーバイザーと同じものであれば、理想的なクラウド環境により近づくことができる。
クラウドOSは、全てのリソースを管理・制御するために必須であるが、現時点ではハイパーバイザーの種類によって利用できる選択肢が限定される。そのため、マルチハイパーバイザーで利用するのは困難といえる。逆に言えば、単一のハイパーバイザーに限定した環境であれば、比較的自由度の高いクラウド環境が構成できる。ただしベンダーロックインによるリスクは伴う。
ストレージ
クラウド環境でのストレージは、抽象的なデータの格納先としての役割を担う。そのため、後述のDR(災害対策)でデータが十分に保護できればよいため、現時点でもハイブリッドクラウドに適応できると考えてよい。
なお、サーバと同様に理想を追求する場合は、統合管理が実現できるハードウェア/ソフトウェアを採用するといいだろう。
懸念点としては、今後もデータの爆発的増加によって、クラウド間で大容量のデータを送受信する機会が増えることが予想されるが、その部分についての実装があまり進んでいないことだ。
DR
単一クラウド内のローカルクラスタ、プライベートクラウドからパブリッククラウドへのバックアップデータのレプリケーションおよびプライマリデータのレプリケーションについては、現時点でも十分に実現可能だ。
バックアップについては、ハイパーバイザーと連係することで、システム(OS)データに関しても取得できる。
クラウドをまたいだグローバルクラスタに関しては、仮想マシン単位の切り替えは一部のハイパーバイザーとパブリッククラウドでの組み合わせ(「VMware vSphere」と「VMware vCloud Air」、「Hyper-V」と「Microsoft Azure」など)で可能だ。また、アプリケーション単位の切り替えは、クラスタソフトがサポートされていれば、ハイパーバイザーとパブリッククラウドの組み合わせはある程度自由がきく。
ネットワーク
現時点では、専用線やVPNを利用してクラウド間を接続することで、シームレスに接続することは可能である。しかしながら、現状ではクラウド間でIPアドレスを引き継ぐことは難しく、クラウド間をシームレスに移動するのは困難な状況だ。理論上は専用線を用意しL2延伸を行うことで実現できないことはないが、SDN(Software-Defined Networking)を採用する必要があり、それに合わせてプライベートクラウド側はオーバーレイ方式に対応する必要が生じる。
現在オーバーレイ方式を採用したパブリッククラウド環境はほぼ提供されておらず、提供先の出現が待たれる。
運用、自動化
プライベートクラウド環境はオンプレミスと大きな差異はなく、現状のツールでほぼ問題なく運用が可能だ。パブリッククラウドについては、ネットワーク接続が確保される前提であれば、監視やジョブ管理、リソース管理などはほとんどに対応できる状態であり、一元管理がある程度は実現できる。
ただ、パブリッククラウドでオーケストレーションツールを使用して実現する、パターンデプロイメントのようなオペレーションを実現する際は、パブリッククラウド事業者側の仕様に依存する。各パブリッククラウド事業者の仕様は統一されておらず、少なからずベンダーロックインは避けられない。プライベートクラウドのような管理性を実現するには、まだ時間を要するといえる。
全体
サーバ、ストレージ関しては、現状でも十分ハイブリッドクラウドに対応可能だろう。ハイパーバイザーの選定は、利用するプライベートクラウドとの親和性を考慮して選定する必要があるが、実現には十分耐え得るといえる。DRについても、現時点で特に問題ないだろう。
ただしネットワークに関しては、実現性を考えると、現時点ではIPの変更が必要不可欠であり、シームレスなクラウド間の移動の実現は難しいといえる。
以下、現時点での実現状況をまとめた(表2)。
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理想的なクラウド基盤を構築する方法
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