Johnson&Johnsonは15万人が最終的に利用
「Microsoft Office」を「Office 365」へ、移行を拒む人をどうするか(1/2 ページ)
オンプレミスのSharePointから、クラウドベースの「SharePoint Online」に移行する場合どのような課題を解決する必要があるのだろうか。移行を成功させるポイントを事例と併せて紹介する。
総合ヘルスケア企業の米Johnson&Johnson(J&J)がドキュメント共有とチーム共同作業の基盤を米Microsoftの「SharePoint 2007」からクラウドへ移行することを決めたとき、目的ははっきりしていた。場所や端末を問わず、従業員がドキュメントにアクセスできるモバイル対応のクラウドベース技術を導入するためだ。
ベビーシャンプーや鎮痛剤などを製造しているJ&Jでは、社内でドキュメントを共有する方法として、バージョン管理やデータセキュリティに課題の残る共有パブリックドライブや電子メール以外の手段を必要としていた。同社はクラウドベースのオフィススイート「Office 365」を選択することにした。Office 365には「SharePoint Online」とクラウドストレージ「OneDrive for Business」も含まれており、従業員は社内でも社外でもドキュメントを保存して共有できる。
クラウドに懐疑的な企業や、クラウドへの移行を段階的にしか進めていない企業が多い中、J&Jは大々的な移行に踏み切り、2015年末までに15万人の従業員をクラウドに移す予定だという。J&Jのような企業では、ドキュメントを一元管理する一方、2要素認証でデータの安全性も確保するというクラウドの柔軟性が求められる。J&Jにおいては、部署間で分散されたチームのためのみならず、若手従業員の期待に応えるためにも、Office 365は適していたと同社のIT責任者トーマス・マンスマン氏は語る。
「IT部門の上層部からは、従業員がどの端末からでも場所を選ばすにコンテンツにアクセスできることが求められ、新しく入社してくる若手からはモビリティを期待される。それが今回の選択につながった」(マンスマン氏)
だが、クラウドは従業員をデスクトップから解放してくれる一方で、的確な準備をしておかないとリスクにつながる。セキュリティのリスクではなく、ライセンスに関するリスクだ。Office 365のエンタープライズライセンスに必要以上の高額料金を支払ってしまったり、逆に、コスト節約のために必要な機能を契約しなかったりする可能性がある。前者の場合はコストが増大し、後者の場合は従業員の作業に影響する。マンスマン氏によると、J&Jはコストを抑えようとして初めてこの問題に気付いたという。
当初、J&Jはコスト節約のため、「Office 365 Enterprise」の「E3」ライセンスより安価な「E1」ライセンスを従業員に支給しようと考えていた。ところが、それでは2015年末までにSharePoint Onlineへ移行予定の従業員15万人の作業に支障が出ることが明らかになった。
「『PowerPoint』や『Excel』『Word』などのオフィスアプリケーションで使えない機能が数多くあった。例えば、マクロが動かなかったり、一部のテーブルが機能しなかったり、リッチメディアが使えなかったりと、作業に支障が生じることが分かった。こうした幾つもの制約は、小規模なレベルではあまり問題にならないとしても、大企業レベルでは重大な問題になる」とマンスマン氏は話す。
Microsoftのミッション
Microsoftは、ユーザーをクラウドに移行させるミッションを進めているが、Office 365のライセンス制度と導入によって、ユーザーに予想外のコスト負担が発生する可能性がある。特に既存のオンプレミスのSharePointに投資している企業は注意が必要だ。Microsoftのライセンス制度は単純ではなく、顧客やインテグレーターは、オンプレミスの資産とその他を移行する必要性を注意深く見極める必要がある。
Microsoftの技術を専門とする米調査会社Directions on Microsoftの副社長ロブ・ヘルム氏は、「Microsoftは新しいライセンス制度への移行を進めているが、ライセンス面の開発は技術面ほどうまくいっていない」と話す。
また、Microsoftが同社の将来がクラウドにあることを表明している一方で、ほとんどの企業は、クラウドに移せないか移したくない社内情報を多く保有している。2015年の米調査会社Forrester Researchの報告書「SharePoint's Future: Engagement Workplaces for Customer Operations」によると、Office 365とSharePoint Onlineの導入率は、2012年の12%から2014年には23%に増加している。だがまだ回答者の4分の1未満だ。しかも、71%は依然としてオンプレミスのSharePointを使用しているという。
Microsoftのライセンス制度は、この現実に向き合う必要がある。ヘルム氏は、「多くのMicrosoftユーザーは既にMicrosoftのアプリケーションに多額の投資をしており、それらはクラウドに置き換えられることになる。問題は、オンプレミスとクラウドの両方に支出することではなく、既存の資産をどうやってOffice 365に移行するかだ」と話す。
だが、ハイブリッドクラウドのSharePointシナリオを選ぶかどうかにかかわらず、ライセンスプランと機能の適切な組み合わせを入念に検討しなければ、SharePointの機能に過剰なコストを掛けてしまうことになる。マンスマン氏は、移行段階に進む前に従業員のニーズを確認することが重要だという。時間はかかるものの、ニーズとライセンスプランをあらかじめ照らし合わせておけば、後で問題や想定外のコストが発生するのを防ぐことができる。
「自社の状況や従業員の役割、ペルソナ分析をよく確認し、各職務と照らし合わせて、最適なライセンスを選ぶ必要がある。誰にどのようなライセンスが必要かを調べるのに半年から1年はかかるだろう」(ヘルム氏)
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