ユーザーの心理も理解すべし
モバイルアプリ開発、iPhoneとAndroidの差だけではない「必須チェック項目」
モバイルアプリの設計は、いつも簡単であるとは限らない。実用的なアプリの設計プロセスは、ユーザーの操作性が最優先だ。操作性を無視すれば、エンタープライズモバイルアプリは失敗する。
エンタープライズモバイルアプリの設計には、あらかじめ検討すべき要素がたくさんある。インタフェースで使用する色やフォントは、ささいなことにすぎない。
必ず考慮しなければならないのは、アプリを使うユーザーの想定と彼らがアプリを使う目的の把握だ。ここでは、「テクノロジ一辺倒」になりがちな開発者に対して、モバイルアプリ設計に着手する前に認識しておく必要があるポイントを紹介する。
下準備
“実用的”なモバイルアプリでは、想定するユーザーグループが最も利用する特定のタスクを実行できることが必要だ。それ故に、モバイルアプリ設計の第一歩は、想定ユーザーのことをよく理解することだ。「そのユーザーグループの特徴は何か」「どのようなスキルを持っている」「どのような要望があるのか」を自問自答してみよう。想定ユーザーの理解を深めるほど、実用的なアプリを設計できるようになる。
次に、アプリで実行するタスクを決定し、そのタスクの実行に必要な機能を考える。このとき、優れた技術を採用したい気持ちは抑えて、実用的で便利な“道具”を作ることを考えるのが重要だ。
このタイミングでサポートするデバイスの種類を決定するのが望ましい。「iOS」と「Android」だけでは不十分で、OSのバージョンやデバイスの種類など、細部まで厳密に定義したい。
この下準備が終わっていると、「現場の営業スタッフが会社の在庫カタログにアクセスして発注できるようにするアプリ」のように、アプリの目的とターゲットユーザーを明確に表現できているはずだ。
モビリティを忘れずに
エンタープライズモバイルアプリの開発で、モビリティのことを忘れてしまうことが往々にしてある。モビリティが欠如すると、ユーザーの操作性は煩雑で快適とは程遠いものになるだろう。
ユーザーが求めるのは、操作が分かりやすいアプリだ。そのため、コンテンツを分かりやすくまとめ、背景に隠れて見つけにくいユーザーインタフェース(UI)機能がないようにするのが重要だ。モバイルアプリ設計プロセスでは、できる限り直感的で、応答が速く、操作しやすいUIになるように心掛ける必要がある。UIを直感的にできない場合は、単純明快な説明を添えるとよい。また、画像やアイコンの意味を全てのユーザーが分かっていると考えるのではなく、別の意味で解釈する可能性を想定しておきたい。
できる限り、デバイスの標準機能を活用することをお勧めする。ほとんどのユーザーは、使用しているモバイルデバイスの機能や特定のタスクの実行方法を熟知している。だが、その知識から推定できる動作と異なる動きが必要なUI要素を実装してしまったら、ごく簡単なタスクであってもユーザーは操作方法に悩んで作業を中断せざるを得なくなる。
併せて意識したいのが、連続バッテリー駆動時間、ディスプレイサイズ、CPU処理速度、システムメモリの容量など、デバイスのハードウェアによる制約だ。これらがデバイスごとに異なる点にも注意したい。
優れた設計原則に準拠せよ
何よりも大切なのは、乱雑さを排除して明確で単純なUIにすることだ。
従業員は、日常的に使用している個人向け商用アプリと同等の品質をエンタープライズアプリにも求める。適切な設計原則を採用していないモバイルアプリは、職場で導入している多くの個人向け商用アプリとの競争に間違いなく敗れるだろう。
モバイルアプリのレイアウトでは、UI要素をそれぞれの関係を反映した自然な階層構造にすることが重要だ。その場合、ユーザーが特定のタスクを実行する操作方法も考慮したい。例えば、スマートフォンユーザーは主に親指でUIを操作してする。それ故、親指で簡単に操作できる位置に重要な機能を配置するのが望ましいだろう。
フォント、色、スタイル、タイトル、ボタン、アイコンなどを決めるときは、読みやすさや使いやすさを重視したい。フォントは、どの画面解像度でも見やすいものとし、色は隣接する要素とはっきり区別できるものを選ぶことが重要だ。
コンテンツを第一に扱う
モバイルアプリの設計要素によって、アプリのコンテンツが影を潜めないようにしたい。エンタープライズモバイルアプリのコンテンツで重要なのはデータだ。
顧客が自分のアカウントにアクセスして、サブスクリプションサービスを表示できるアプリを設計していて、そのアプリには、顧客がアプリを評価できる機能も組み込むとする。顧客からのフィードバックは得たいだろうが、アカウントやサブスクリプション情報にアクセスする機能よりも評価機能を優先することはないはずだ。
データ管理も重要な検討事項だ。デバイスに保存できるデータ、キャッシュできるデータ、オンラインサービスとして利用できるデータをそれぞれ判断しなければならない。
アプリからサービスへの接続方法も、データの処理方法の判断に影響する。ユーザーが利用するのは安定した無線LAN接続なのか、通信事業者のサービスなのか、アプリからの接続は不定期に行われるのか、ユーザー側でネットワーク帯域幅の制限が生じる可能性はあるのかなどが検討課題となる。
アプリが常時ネットワークに接続している必要があっても、接続が断続的になる可能性を考慮した設計にしなければならない。他にも、ユーザーがオフラインで作業できるようにデータ同期システムの実装も必要だ。
モバイルアプリ設計で取り組まなければならない最大の問題の1つは、機密データとユーザープライバシーの保護をどうするかだ。開発者は、このような、保存したデータや転送中のデータ保護だけでなく、認証と承認でも保護の問題に対処する必要がある。この対策するには、SSL/TLS暗号化や、仮想プライベートネットワークなどを使用することになるだろう。これらのセキュリティは会社のディレクトリや管理システムに必ず統合して、組織のリスクがそれ以上高くならないようにしたい。
テスト、分析、フィードバック
アプリの完全なテスト、使用状況の分析、ユーザーフィードバックの取得も、設計プロセスに組み込もう。これらのメカニズムを実装しなければ、アプリの主目的が達成できているかを判断できない。できる限り多くのユーザーにアプリを試してもらって情報やフィードバックを集めるほど、実用的な設計になる。
可能であれば、ユーザーアクティビティを監視および追跡できる分析コンポーネントを含むようにアプリを設計して、アプリのパフォーマンスや他のデバイスの機能とのやりとりの方法を把握するとよいだろう。
最後に重要なのは、ユーザーがアプリに関するフィードバックを簡単に提供できるようにすることだ。アプリに適していれば方法は問わない。とにかくアプリに関するユーザーの意見や使用方法などを把握できるようにすることが重要だ。繰り返しになるが、情報を得るほど、アプリの実用性は向上する。
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