業務課題から考えるデスクトップ仮想化 徹底解説【第4回】
VDI導入で必ずと言っていいほどハマる落とし穴とは
VDI導入の際に必ずと言っていいほど課題になるストレージのサイジングや印刷、Web会議システムについて説明する。
「デスクトップ仮想化」(VDI:Virtual Desktop Infrastructure)とは、クライアントPCのデスクトップ環境を、仮想化技術を使いサーバで集約して利用する仕組みである。今回はVDI導入で必ずと言っていいほど課題になるストレージのサイジングや印刷、Web会議システムについて説明する。
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ストレージのサイジング
VDIの構築ではストレージのサイジングが課題となるケースが多い。ユーザー1人当たりのVDIと物理PCのコストを比較した場合、必要となるCPU、メモリ、ネットワークといったリソースに関して、必要となる処理能力は両者で大きく変わらないだろう。その一方で、ストレージに関しては、物理PCのときよりもVDIでコストが高くなる傾向にある。VDIでは、複数のユーザーが共有ストレージを集中的に利用するため、物理PCのときよりも高い安定性や高い処理速度がストレージに要求されるのだ。
サーバやストレージは、冗長性を確保するために複数のHDDを1つのHDDのように扱うことができる「RAID」という技術を利用する(RAIDには複数のレベルがあるが詳細は割愛する)。ランダムでHDDへ書き込み処理をする場合には「書き込みペナルティ」が発生し、一般に1回の書き込み要求に対して以下の書き込み回数が発生する。
- RAID 0……1回の書き込み
- RAID 1またはRAID 10……2回の書き込み
- RAID 5……4回の書き込み
例えば、1人のユーザーに必要なIOPS(1秒間に処理できるI/O数)を10、読み込みと書き込みの比率を50%と想定する場合、システムで必要となるIOPSは以下となる。
- RAID 1の場合……(10×1/2)+(2×(10×1/2))=15IOPS
- RAID 5の場合……(10×1/2)+(4×(10×1/2))=25IOPS
RAID構成によって必要となるIOPSが変わることが分かる。VDIは書き込みI/Oが多くなる傾向にあるので、書き込みペナルティを考慮したサイジングが重要だ。
ただし、ストレージによっては書き込みペナルティを無視してサイジングができる製品もある。こうしたストレージを活用することで、シンプルなサイジングが可能になる。
また、サーバやストレージが組み込むHDDユニットは、物理PCが搭載するHDDに比べてコストが高くなる。そのため、シンプロビジョニング、重複排除、圧縮といった容量を減らすストレージの機能を利用することで、コストを抑えた構成が可能だ。
VDIソフトウェアの中には、ストレージ容量を減らす機能や、転送速度を補う機能を持っているものも多い。大抵の場合は「リンククローン方式」を利用することでストレージの容量を軽減できる。ただし、リンククローン方式を利用した場合は、マスターテンプレートへのアクセス頻度が高くなり、ストレージへの負荷が高くなる。そこで、マスターテンプレートを保存するボリュームでパフォーマンスを確保するために、SSDを利用した高速ストレージや、SSDとHDDを組み合わせたハイブリッドストレージを利用する構成が注目されている。
その他、ログオンストームといった、複数のユーザーが一斉にログインするタイミングで発生するストレージ負荷を軽減する機能も各ソフトウェアで実装している。
ユーザーが利用するアプリケーションや用途によってストレージに掛かる負荷は変わる。そのため、ユーザーに必要なストレージのパフォーマンスを考慮してサイジングをする必要がある。
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印刷
VDIでは、印刷における課題も多く見受けられる。エンドユーザーが利用するプリンタと仮想デスクトップのロケーションが違うことや、印刷データが利用するネットワークリソースが回線を圧迫することなどが理由として挙げられる。また、利用するクライアント端末がトラブルの原因になることもある。
例えば、画面転送プロトコルを利用して印刷をする場合、クライアント端末側にプリンタドライバが必要となるため、Windows端末を利用することが一般的だ。もしゼロクライアントやプリンタドライバを追加できないクライアント端末を利用している場合は、専用ソフトウェアの追加が必要となる。
一方、プリントサーバを経由して印刷をする場合には、クライアント端末に制約がなくなる。ただしプリンタと仮想デスクトップの間のネットワークに専用線やVPN回線を利用する必要がある。
このように、印刷するロケーションやネットワーク構成によってソフトウェアやクライアント端末の選定には注意が必要だ。
Web会議システム
Web会議システムの利用も課題に挙がることは多い。Webカメラのデータをアップロードし、さらに画面転送をすることについては、以前からパフォーマンスが課題となっていた。
Webカメラの動画はスムーズな再生が難しく、コマ落ちしてしまったり、画面が固まってしまったりする場合がある。仮想環境を利用しながらクライアント端末と連係するVDIソフトウェアの機能によって、この課題に対処できる。仮想デスクトップへのデータ転送を止め、クライアント端末間で通信することで、Webカメラの動画をスムーズに再生可能だ。
クライアント端末へソフトウェアをインストールする方法もあるため、VDIでWeb会議システムを利用する場合は、VDIソフトウェアとクライアント端末の選定に注意したい。
印刷やWeb会議システムにおける課題の多くはVDIソフトウェアの機能で対処できるが、エンドユーザーが利用するデバイスによってはVDIソフトウェアでは対応できない場合もある。VDI導入では、アプリケーションや周辺機器などが落とし穴にならないよう、要件の整理や事前検証が大切だ。
保川幸弘(やすかわ ゆきひろ)
アセンテック株式会社 システムエンジニアリング第二部 プリセールスG
プリセールスエンジニアとしてデスクトップ仮想化ソリューションの普及啓蒙活動、デスクトップとオフィス環境の変革に全力を注いでいる。
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