業務課題から考えるデスクトップ仮想化 徹底解説【第2回】
違いが分かる デスクトップ仮想化の配信方式
デスクトップ仮想化の配信方式は大きく2つに分けられる。よく耳にするVDIやサーバ共有は、そのうちの画面転送型に分類される方法だ。それぞれの違いを理解しよう。
デスクトップ仮想化といっても、サーバ共有(デスクトップ/アプリ)、VDI(Virtual Desktop Infrastructure)、リモートPC、オフライン型、クライアントでのアプリケーション仮想化、DaaS(Desktop as a Service)など、さまざまな配信方式がある。それぞれの仕組み、メリット/デメリットについて解説する。
関連記事
デスクトップ仮想化の基礎
デスクトップ仮想化のコストを削減する
デスクトップ仮想化の事例
デスクトップ仮想化のモバイル利用
デスクトップ仮想化のハードウェア選定
デスクトップ仮想化には大きく分けて2つの配信方式がある。画面転送方式とネットブート方式だ。
画面転送方式はクライアントやサーバをリモートから操作する仕組みで、ユーザーが操作する端末ではデータの移動がないことが特徴だ。前回の記事「物理PCと何が違うの? デスクトップ仮想化、基本の『き』」の通り、セキュリティ対策、TCO削減、事業継続性の確保、ワークスタイルの変革など、さまざまなユーザーニーズに対応する方式である。
画面の差分情報のみをユーザーへ転送することで、狭いネットワーク帯域でも利用できるため、モバイル通信や海外からの利用も可能となる。
ただしリモート操作しているため、動画再生、Web会議システムやCADなどのグラフィックス処理要求の高いアプリケーションや、ユーザーが端末で利用する周辺機器、印刷機能に課題がある。Citrix Systems、Microsoft、VMwareが提供しているソリューションで、これらの課題を解決する機能については次回説明する。
一方、ネットブート方式はネットワークからOSイメージをダウンロードして、ユーザーが操作する端末でOSを起動する仕組みである。画面転送方式との大きな違いは、物理PCと同じように、ユーザーが操作する端末においてデータ移動があることだ。OS起動後は、物理PCと同じパフォーマンス、同じ操作感で利用することができる。
また、OSイメージを一元管理することで、毎回リフレッシュされたOS環境となるため、セキュアに利用することができる。一部のネットブート方式ソリューションは、ダウンロードしたOSイメージをHDDにキャッシュすることで、ネットワーク帯域の負荷を軽減する機能を持っている。だが、初回起動時やOSイメージ更新時はネットワークからOSイメージをダウンロードするため、LAN内などサーバとクライアント間で十分なネットワーク帯域が必要といえる。
画面転送方式の種類
画面転送方式には、サーバ共有、VDI、ブレードPC、リモートPC、DaaSなどさまざまな方式がある。各方式の仕組みとメリット/デメリットを説明する。
サーバ共有(デスクトップ/アプリケーション)
サーバ共有(デスクトップ/アプリケーション)は、サーバのデスクトップやアプリケーションを複数のユーザーでリモート操作する仕組みである。移動ユーザープロファイルを利用することでユーザーごとに個別のデスクトップ、個別の設定などを保存可能だ。
| メリット | ・CPU、メモリ、HDDなどの物理リソースを集約できるためVDIに比べてコストが低い。仮想化ライセンスのコストがVDIに比べて低い ・VDIに比べてユーザーの集約率が高く、管理対象のサーバが少ないため、運用管理コストが低い |
|---|---|
| デメリット | ・サーバOSで利用できるアプリケーションに制約がある ・アプリケーションがマルチユーザー対応している必要がある ・ユーザーごとに違うアプリケーションを利用するなど複雑なユーザー環境での対応が難しい |
VDI
仮想化したクライアントまたはサーバをユーザーが占有して利用する仕組みである。ユーザーが利用するデスクトップを管理する機能があり、接続するホストPCの情報なしに利用できる。
| メリット | ・ユーザーが仮想マシンを占有して利用できるため、高負荷のアプリケーションを利用できる ・ユーザーごとにOS、アプリケーションを準備できるため複雑なユーザー環境で利用できる |
|---|---|
| デメリット | ・CPU、メモリ、HDDなどの物理リソースをユーザーごとに準備する必要があるためインフラコストが高い ・仮想化ライセンスのコストがサーバ共有に比べて高い ・サーバ共有に比べてユーザーの集約率が低く管理対象のサーバが多くなるため、運用管理コストが高い |
ブレードPC
ブレードラックに集約したクライアントPCをリモートから操作する仕組みである。以前のブレードPCでは専用クライアントが必要でホスト、クライアント間の距離に制限があったが、現在のブレードPCではCitrix、Microsoft、VMwareのソリューションと組み合わせて利用することで、ホスト/クライアント間での距離制限がなくなってきている。
| メリット | ・CPU、メモリ、HDDなどの物理リソースをユーザーごとに分散できるため高負荷のアプリケ-ションの利用ができる ・ブレードラックに集約するため物理PCを一元管理できる |
|---|---|
| デメリット | ・物理PCを利用しているため故障対応が必要となる ・ユーザーごとに物理PCを準備する必要があるためサーバ共有に比べてコストが高い |
リモートPC
物理PCをリモートで操作する仕組みである。リモートからVPN接続し、物理PCへ直接ログインする仕組みや、セキュリティ対策のために中間サーバを経由して物理PCへログインする仕組みがある。一部のVDIソリューションには物理PCに対応しているものもあり、そうしたソリューションを使えば大規模での利用も可能だ。
| メリット | ・既存環境を流用できるため、小規模で利用開始できる ・仮想化技術を利用しない構成を取れるため、運用管理者への仮想化技術の教育コストが低い |
|---|---|
| デメリット | ・物理PCが分散されているため管理性が煩雑 ・物理PCの電源管理に課題がある |
DaaS
VDIをクラウドサービスで利用する仕組みである。パブリッククラウドサービスとプライベートクラウドサービスがあり、各DaaSベンダーによってさまざまなメニューがある。パブリックサービスとプライベートクラウドを併用して利用可能なサービスもある。
| メリット | ・初期コストが低く従量課金、月額課金などで利用ができるため、小規模から始められる ・VDIリソースの拡張、縮小が容易に可能 ・ユーザーが複雑なデスクトップ仮想化環境を運用する必要がない |
|---|---|
| デメリット | ・クラウド利用のため既存システムとの連係に考慮が必要 ・サービス利用のため個社別のカスタマイズ構成が難しい |
その他の方式 ~オフライン型、クライアントのアプリケーション仮想化
画面転送方式、ネットブート方式には含まれない方式として、オフライン型、クライアントでのアプリケーション仮想化がある。
オフライン型
物理PCをカスタマイズしデータ書き込みを禁止する仕組みや、クライアントハイパーバイザーを利用し、クライアント上で仮想マシンを管理する仕組みなどがある。
クライアントでのアプリケーション仮想化
バージョンが違うアプリケーションの共存や新しいOS環境で利用できないアプリケーションの延命のために、アプリケーションをパッケージ化してクライアントで利用する仕組みである。
以上、一般的なメリット/デメリットを挙げたが、デメリットをカバーするために複数の配信方式を組み合わせて利用することも可能だ。これによって、ユーザー環境に合わせた構成を取ることができる。次回は主要VDI製品の機能について紹介する。
保川幸弘(やすかわ ゆきひろ)
アセンテック株式会社 システムエンジニアリング第二部 プリセールスG
プリセールスエンジニアとしてデスクトップ仮想化ソリューションの普及啓蒙活動、デスクトップとオフィス環境の変革に全力を注いでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
業務課題から考えるデスクトップ仮想化 徹底解説
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[ファインディ株式会社] AI利用率だけでは説明できない成果 開発組織の競争力を生む「開発資本」とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] AI活用を成功へ導く、シンプルで費用対効果に優れたクラウド基盤とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] マネージドKubernetesには限界も――メリットをフル活用する新たな選択肢とは? -
技術文書・技術解説
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] 決断の日が迫る「vSphere 8」サポート終了問題 考慮すべきリスクと選択肢は? -
製品資料
[サイバーソリューションズ株式会社] メール誤送信対策のルールが肥大化 苦しむ情シスはどうすれば救われるのか?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
3
kintoneで実践 製造業のための「見積もり管理」改善のヒント
-
4
パッチなしで「今すぐサーバを落とせ」 Kiteworks異例警告の波紋
-
5
「IoT通信環境の構築・運用」に関するアンケート
-
6
祝10周年! 創業者も予想できなかったRaspberry Pi活用例
-
7
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
8
ネットアップ、クラウド時代を見据えてストレージ製品群を刷新
-
9
「VMware旧ライセンス」ユーザーに届いた“最後通告”が波紋を呼ぶ
-
10
鉄道とIT、老舗企業はスマホアプリでいかに息を吹き返したか
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
3
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
8
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
9
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
10
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー