「1人1台タブレット環境」も見据える
“使われない電子黒板”をなくすには「常設化」しかない――青山学院初等部 井村教諭(3/3 ページ)
「見せる道具」から「発表のツール」へ
教員による電子黒板の用途として多いのは、「デジタル教科書や資料の提示」「拡大表示」「比較表示」などだと井村教諭は話す。低学年では指導者用デジタル教科書を電子黒板に表示し、教員が画面に映った文字や図をマーキングしながら、「ここを見て」と児童に見てもらいたい場所を差し示すことができるのが便利だという(写真2)。「一覧性に優れた電子黒板を活用することで、説明がしやすくなった」(同教諭)という。
実物投影機(書画カメラ)やドキュメントスキャナーを使い、児童が書いたノートを読み込んで電子黒板に表示するといった使い方も多いという。児童の異なる意見や回答を電子黒板に表示して比較したり、その中の1つを拡大して見やすくしたりするなど、児童の思考を深めるツールとして電子黒板を生かしている。
「児童による電子黒板の利用も増えている」と井村教諭は話す。主な用途はクラス全員へ向けた発表の場面だ。今までは発表の際に黒板に書いたり、紙に書いたものを貼ったりしていたが、電子黒板の活用で写真やドキュメントといった発表用のデータをそのまま表示するだけでよくなり、スムーズな発表が可能になった。「児童の発表が増え、積極的に発言する姿も見られるようになった」(同教諭)といった副次的なメリットも得ているという。
4人で1台のタブレット環境を試験的に整備している4年生の教室では、xSync Boardに加え、パイオニアVCの協働学習支援ソフトウェア「xSync」を活用して双方向型の授業も実践している。グループ学習の際に議論のテーブルとしてタブレットを使い、グループ内で考えた結果を電子黒板に転送して全体で共有するといった使い方をしている(写真3)。
企業も巻き込む「ICT教育戦略委員会」でスキル向上
青山学院初等部では、IT活用の推進組織「ICT教育戦略委員会」を設け、同委員会が中心になって電子黒板をはじめとするIT製品の整備や運用を進めている。同校は2012年にIT導入を検討し始めた当初から同委員会を立ち上げ、製品選定や運用、トラブル対応などを担ってきた。
ICT教育戦略委員会の特徴は、青山学院初等部の教員だけでなく企業や大学からもメンバーを集め、産学共同で構成されていることだ。企業や大学と連携することで、情報収集や授業研究の充実を図るのが目的だ。企業と共同でIT活用の実証に取り組み、教員のIT活用スキル向上の機会にする狙いもある。参加する企業にとっても製品の改善点や不具合を知ることができる利点がある。
青山学院初等部は、電子黒板を共用ではなく常設にすることで活用促進を図った。一方で電子黒板が使われない理由として、多機能過ぎてどう使うべきかが分かりにくいことを挙げる教育機関は少なくない。同校では「電子黒板の使用目的を明確にし、それに必要な機能や操作のみを教えることで複雑さを感じにくくしている」と井村教諭は話す。「『使え、使え』と言うだけでは、教員は電子黒板を使いたくなくなる。電子黒板を使う意義やメリットを伝え、後は教員自身に自分の授業でどう使えるかを考えてもらうことが重要だ」(同教諭)
今後は、現在4年生で進めているタブレットの4人1台環境を他学年にも拡大する青山学院初等部。電子黒板を中心に教員がITを活用する段階から、いよいよ児童一人一人がIT活用の主役となる段階へと移っていく。「デジタルとアナログの特性を知り、教員がその使い分けができるように段階的に進めていきたい」と話す井村教諭。ITのメリットを見極めながら、一歩ずつ前進していきたい考えだ。
執筆者紹介
神谷加代(かみや かよ)
教育ITライター。「教育×IT」をキーワードに教育機関で進むタブレット導入事例やIT活用、子ども向けプログラミング教育、EdTech関連の話題などを、Webメディア、書籍、雑誌などで執筆。著書に『iPad教育活用 7つの秘訣』(共著、ウイネット)、『こどもプログラミング読本――「未来をつくる力」を育てる』(共著、技術評論社)、『子どもにプログラミングを学ばせるべき6つの理由 「21世紀型スキル」で社会を生き抜く』(共著、インプレス)。
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