大学のIT部門が生きる道【後編】
学生の「勝手Dropbox」を禁止したいなら“代わり”を用意すればいい(2/2 ページ)
保存し、共有し、安全性を保つ
Texas A&M University System(テキサスA&M大学システム)は、およそ13万4000人の学生と教職員、パートナーからなる20万近くのエンドユーザーに、DropboxやBoxなどファイルダウンロードが可能なサービスの使用を止めさせようとしている。ただし、単に禁止しようとしているわけではない。
テキサスA&M大学システムを構成する11の大学、7の州立機関、ヘルスサイエンスセンターの最高情報セキュリティ責任者(CISO)を務めるダニー・ミラー氏は、「2014年に民間企業からやってきたとき、大学の環境は『手の付けられない状態になっている』と警告された」と明かす。
「学外には多くのサービスがあり、必要なときに無料のアカウントを作成できる。こうした環境を許可するのは本当に難しいことだ」とミラー氏は語る。「誰もが自由にコラボレーションできるようにしなければならない。そのためにセキュリティの観点からどうアプローチすべきなのか、データセキュリティを本当に制御しようと思ったらどうすべきかを思案した」(同氏)
その解決策としてミラー氏が目を付けたのは、EMCのオンラインストレージ同期サービス「EMC Syncplicity」だったという。EMC Syncplicityは無料のオンラインストレージ同期サービスとほぼ同じ機能を備え、かつ安全性に配慮した。ストレージはクラウドとオンプレミスのストレージが混在するハイブリッド形式を採用。エンドユーザーには異なるセキュリティクラスに情報を格納するよう求め、機密性の高いデータは大学の物理サーバに保存する。またストレージ管理者は、どの情報がどこに保存されるかを細かく制御できる。
テキサスA&M大学システムは全メンバーにEMC Syncplicityの使用を奨励しており、エンドユーザーは無料で使用できる。EMC Syncplicityのシステムが稼働してから約1年、徐々にではあるが採用者は好調に増加。大学組織の約20%がこのシステムを使用しているという。
ミラー氏は、学生が無料のコンシューマー向けオンラインストレージ同期サービスを使用することを止めさせておらず、止めさせるつもりもない。ただし積極的な売り込みで知られるベンダーが自社サービスに大量のエンドユーザーを登録させる事象が発生したら、特定種類のインターネットトラフィックを制御し、そうした登録を容易にできないようにすることも可能だ。
「Dropboxのトラフィックがネットワークを占有していて、EMC Syncplicityのトラフィックを強く促進させたいと思ったら、Dropboxのトラフィックを56kbpsの通信速度に制限できる」とミラー氏は説明する。56kbpsは、1990年代の一般的なダイヤルアップインターネット接続の通信速度だ。「実際にやると言っているわけではないが、それが可能であることは分かっている」(同氏)
脅し戦略の拒絶
Webサイトで1、2回クリックするだけで発生しかねないサイバー攻撃の脅威から大学を保護する上で、「少なくとも学生への対策としては機能しない戦術がある」と、Hofstra University(ホフストラ大学)でIT部門のバイスプレジデントを務めるロバート・ジャッキーウィズ氏は言う。それは、最悪のシナリオを提示して学生を怖がらせることだ。
「大学生という年頃は怖いもの知らずだ」とジャッキーウィズ氏は強調する。「19歳か20歳当時の私を止められるものは何もなかった。私たちは学生に不安を植え付けるつもりはない。ただ気付かせようとしているだけだ」(同氏)
教職員向けには、学生向けとは別のフェアを開催する必要があるかもしれない(ホフストラ大学が学生向けに開催するフェアの内容は前編「学生はなぜ“使ってはいけないアプリ”を勝手に利用したがるのか」を参照)。そのフェアでは、インターネットの安全性とセキュリティに関するもっと深刻な話をする可能性が高いだろうとジャッキーウィズ氏は語る。少なくとも今までのところ、同氏は教職員に対して、こうしたイベントは実施していない。もし実施するとしたら、教職員が参加してくれるような賢いやり方を考える必要がある。
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