IBMやCiscoなどとも提携
今度は「iPadでSAP ERP」、法人市場を狙ったAppleの“iOS提携”はそろそろ真価を問われる
AppleとSAPが提携を結ぶことで合意した。その内容はAppleとIBMとの提携に似ている。SAPは自社の技術を「iOS」用アプリで利用できるようにするといったものだ。両者は顧客企業のアプリ開発の支援でも協力する。
AppleとSAPの新たなパートナーシップを通じて提供されるSDK(ソフトウェア開発キット)を利用することにより、企業のIT部門は、「iOS」向けの業務用アプリの開発が容易になることだろう。だが、この提携は、SAPの方に大きなメリットがあるようだ。
AppleとSAPは、顧客企業がSAPの技術を利用したiOS用アプリを社内で開発するためのSDKを提供する予定になっている。SAP自身もiOS向けの新しい業務用アプリを独自に開発する。250万人のSAP開発者は、Appleのプログラミング言語「Swift」を使ってアプリを作成し、これらのアプリでSAPの技術が利用できるようになる。アプリで利用可能になるSAPの技術には、組み込み型データアナリティクス用のクラウドデータベース管理システム「SAP HANA」なども含む。
併せて読みたいお勧め記事
iOS提携と、Appleの開発言語「Swift」の魅力
AppleのiOS提携に関連する解説記事
無線技術に特化したコンサルティング会社のdBrn Associatesで、モバイル担当アナリストを務めるマイケル・フィネラン社長は、「この提携はユーザーの経費削減につながる」と評している。「ビジネスプロセスに技術をうまく統合すれば、必ず経費を削減できる。最も重要なのは、現場での作業手順を入力するなど、どういった業務であるかにかかわらず、優れた機能をアプリに組み込むことだ」(同氏)
今回の提携の狙いは、SAPのERPや、リアルタイムデータアナリティクスなどの高度なバックエンド技術を一般消費者向けのiOSインタフェースで提供することにある。両社が提供するSDKを使えば、企業のニーズに合ったSAPのソフトウェアを有効に活用できる。
ITコンサルティング会社のFive Nines IT Solutionsダグ・グロスフィールド社長兼最高経営責任者(CEO)は、「SAPの顧客は大喜びだろう。SAPのソフトウェアに対応することでiOSデバイスの機能が高まるからだ」と話す。
AppleとSAPは、2016年末までにSDKをリリースする予定だと発表している。
法人市場への影響
Appleにとって、この提携の目的は、SAPならびに自社の顧客やパートナーがSwiftを使ったiOS用エンタープライズアプリを、本格的に開発することを促すことだ。SAPソフトウェアに対応することで企業でのiOS端末の利用が拡大するのに加え、Swiftの市場も拡大する可能性がある。
Appleはこの2年間、IBMおよびCisco Systemsと提携を結ぶなど、企業市場での勢力拡大に力を入れてきた。Cisco Systemsとの提携は、企業でのiOS端末のネットワーク接続を改善するのが目的だ。AppleとSAPの提携と同様に、IBMとAppleの提携では、IBMがSwiftを使ってiOS用ビジネスアプリを開発する。
Appleは2015年9月に、同社のエンタープライズ事業の売り上げが250億ドルに達したと発表した。「こうした成長に加え、エンタープライズ分野での一連の提携が注目を集めているにもかかわらず、これらがAppleの成長に結び付くとは限らない」と話すのは、Technology Business Researchの上席アナリスト、ジャック・ナーコッタ氏だ。
2014年にIBMとの提携を発表した後、Appleのティム・クックCEOは、「iPad」の売り上げ低迷が契約締結を促したことを明らかにした。Appleの目標は、iPadのユーザーベースを拡大することであり、それを実現するための手段が企業市場への進出だと同社は考えたのだ。だがIBMとの提携以来、iPadの販売が増加した四半期はまだない。
「IBMとの関係がAppleのビジネスに大きな影響を与えたとは思えない」とナーコッタ氏は話す。「iPadの売り上げは回復していないし、Appleのエンタープライズビジネスが成長しているとしても、それがIBMとの提携によるものだという見方には疑問を感じる」(同氏)
ナーコッタ氏によると、Appleが企業市場で伸びたのは、企業の従業員が自分の個人端末をサポートするようIT部門に要求したからではないかという。
「AppleとSAPの提携は、既存のSAPユーザーを中心とする巨大な市場をターゲットとしている。SAPのユーザーでない企業が新しいアプリのためにSAPに乗り換える可能性は低い」とフィネラン氏は指摘する。SAPによると、世界の最大手企業2000社のうち87%が同社の顧客なのだ。
「例えば、Oracleを捨ててSAPに乗り換える、といったことは日常的に起きるわけではない。大企業がこうした基幹業務システムを変更することはあまり多くない」とフィネラン氏は話す。
SAPの目標は、ユーザーのアプリの機能を高め、iOSを利用して同社の技術を使いやすくすることだ。
「この提携により、企業はアプリを作成してモバイル化を進めることができる。その意味でiOSは最適なプラットフォームだ」(フィネラン氏)
だが、AppleとSAPは、最初のSAP製アプリ群のリリース時期を明らかにしていない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[株式会社キーエンス] PCが苦手でも自動化できる ポポラマーマなど4事例に学ぶ「ナビ搭載型RPA」活用 -
製品資料
[株式会社クレオ] IT部門を“価値創造組織”へ転換 IT管理プロセスの改革で戦略的リソースを確保 -
製品資料
[株式会社クレオ] Excel管理が限界に――ITサービス管理の脱・属人化と運用高度化を実現する方法 -
製品資料
[株式会社クレオ] 西武グループやイオングループも実践 事例に学ぶ「ITサービスデスク業務」改善 -
製品レビュー
[株式会社クレオ] 「使われないITシステム」から脱却 現場が求める業務改善を実現する方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
3
「レガシーシステム・老朽化システムの運用課題と刷新」に関するアンケート
-
4
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
5
セキュリティは「情シス任せ」が過半数 漏えい発生時やSCS評価制度の課題は?
-
6
1回で分かる:仮想マシンを丸ごとバックアップする「VADP」の仕組み
-
7
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
8
脱VMwareか、継続か? 仮想化ソフト主要6製品の運用管理と統制機能を徹底比較
-
9
世界PC出荷数が20%急減 情シスを直撃するPC先行調達の反動と価格高騰
-
10
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
6
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
7
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
ランサムウェア攻撃“究極の対策”はこれだ
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー