Appleによるセキュリティ強化の一方で
iPhone/iPadから「iCloud」への自動バックアップがいまだに心配される理由
iOS端末はTouchIDやVPNなどのセキュリティ機能によってデータを保護している。だが、そのデータを「iCloud」にバックアップしている場合、IT部門は非常に不安になるだろう。
映画「ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間」の中でフロド・バギンズは、住み慣れた村を離れて旅に出るとき、叔父のビルボに言われた言葉を思い出す。「自分の家を離れるのは危険な行為だ。旅に出たら慎重に足を運ばなければ、どこへ行き着くか分からない」
フロドは指輪を破壊するために冒険に出かけ、その危険を思い知る。データがiOS端末を離れてAppleのオンラインストレージ/バックアップサービス「iCloud」に行き着いたとき、ITプロフェッショナルがその危険を思い知るように。
平和な村と同じように、iOS端末はデータが保護され指紋認証機能「TouchID」や仮想プライベートネットワーク(VPN)といったセキュリティ機能もある安全地帯だ。この機能には、暗号規格「AES」(Advanced Encryption Standard)が使われており、ユーザーのパスワードがなければデータの暗号を解除できない。たとえ何者かが端末に侵入したとしても、情報は暗号化された状態が保たれる。誤ったパスワードを何度も入力するとiOS端末が使用不能になるため、総当たり攻撃は通用しない。
これに対してiCloudは、村の外のような状態だ。従業員のiOS端末が自動的にiCloudにデータをバックアップしていれば、保存先はデバイスだけではなくなる。iCloudサーバのセキュリティはAppleが管理している。そのため、クラウドにバックアップされた会社のデータをIT部門が目を光らせ続けることは難しい。ファイアウォールを使ったトラフィックの監視といった従来のITセキュリティ対策は、クラウドに流用できるとは限らない。さらに、クラウドバックアップによってファイルの存在場所は2カ所になる。つまり攻撃者が情報を盗み出せる場所が複数存在するということだ。
2014年に起きたiCloudからの大規模情報流出事件を受けて、AppleはiCloudのセキュリティを強化するための新機能を追加した。2段階認証は、アカウント情報を変更したりiTunesでの買い物といった行動を新しい端末でする場合に、既知の端末でID確認を求められる。Appleは電子メールでユーザーに認証コードを通知し、アクセスできる状態にする。それでも攻撃者がiCloudのデータにアクセスしてからAppleがユーザーに通知するまでの短い時間を突かれる可能性はある。
データの守りをさらに強化するため、iCloudではデータの転送中もサーバに保存されているときも情報が暗号化されるようになった。データの暗号を解除する唯一の方法は、パスワードの形で提供しているセキュア認証トークンを使うことだ。
「iPhoneを探す」といったiCloudベースのアプリケーションにも、セキュリティ対策を内蔵したものがある。このアプリケーションは初期設定で無効になっているため、ユーザーが有効にする必要がある。位置情報はユーザーが求めたときにのみ収集され、データは1日しかiCloudサーバに残らず、完全に暗号化される。
iCloudはかつてなく守りが厳重になった。それでも物理端末に比べれば環境ははるかに流動的だ。データがいったんiOS端末を離れれば、何が起きるか分からない。
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