ビットコイン以上の衝撃?
ブロックチェーンであらゆる契約を自動化する「スマートコントラクト」とは
ビットコインの主要技術であるブロックチェーンを利用し、取引の自動化を実現する「スマートコントラクト」。多くの業種で役立つといわれるスマートコントラクトの実力を探る。
暗号研究者のニック・サボ氏は、仮想通貨「ビットコイン」の先駆けである「ビットゴールド」の生みの親で、ビットコイン自体の考案者だといううわさもある。同氏は1997年に、一定条件下で取引を自動実行する「スマートコントラクト」に関する書籍を執筆している。スマートコントラクトが話題を呼んでいるのはここ数年のことだ。これはビットコインやそれを支えるブロックチェーンが開発されたことによる影響が大きい。
ビットコインは、銀行などのサードパーティーを介在させない革新的な支払方法として2009年に誕生した。一方ブロックチェーンは、資産譲渡に利用できる可能性が高いことから、幅広い業界からの注目を集めている。さらに金融機関や送金会社といった多くの仲介会社を介在させずに済むことも、関心を集めている理由の1つだ。スマートコントラクトはブロックチェーンと連動し、多くの業界で手続きを自動化できる可能性を秘めている。
神童として知られるビタリク・ブートリン氏によれば、スマートコントラクトは「一部のデジタル資産を直接操作するコンピュータプログラム」だという。若干22歳のブートリン氏はビットコイン専門誌「Bitcoin Magazine」の共同創立者で、“ビットコイン2.0”として知られ、スマートコントラクトの基盤となっている「Ethereum」に取り組んでいるプログラマーだ。
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スマートコントラクトをスマートたらしめる要素
従来の適法契約では、合意に関わる規則は、複数の人や関係者の間で定義されていた。スマートコントラクトはその一歩先を行き、特定条件下における通貨や資産の譲渡を管理し、定義された規則を実質的に強化する。スマートコントラクトのアプローチでは、資産や通貨をプログラムに移管する。
「プログラムはスマートコントラクトのコードを実行し、ある時点で自動的に条件を評価し、判断を下す。資産を特定の個人に移すべきか、もう一方の人に戻すべきか、資産を送った人にすぐ払い戻すべきか。はたまた、これらの組み合わせを遂行するのかといった判断をするのだ」。ブートリン氏は、2015年にワシントンD.C.で開催された「DC Blockchain Summit」のパネルディスカッションでこのように発言した。
DC Blockchain Summitでは、ブロックチェーンサービスのベンチャー企業であるBloqの共同創立者ジェフ・グラツィック氏が、スマートコントラクトが従来の適法契約の魅力的な代替である理由を次のように説明した。「スマートコントラクトは具体的な契約結果を保証する。混乱が生じることはなく、訴訟が必要になることも一切ない」
従来の適法契約と同様、多くのスマートコントラクトは標準化されることになる。「ほとんどの契約では、2つの当事者組織が契約について一から交渉することはない」とブートリン氏は語る。標準化された契約はテンプレート化され、その中からユーザーは目的にあったものを選べるようになることだろう。
パネルディスカッションのパネリストは、スマートコントラクトの幅広い応用性に注目した。ブロックチェーンソフトウェアベンダーSymbiontの共同創立者でCEOを務めるマーク・スミス氏はパネルディスカッションで次のように語った。「スマートコントラクトは大きな可能性を秘めている。だがその可能性にとらわれることなく、自社の強みが何なのかを考えることが必要だ」
導入事例
IBMのブロックチェーンテクノロジー部門でバイスプレジデントを務めるジェリー・クオモ氏によると、スマートコントラクトは金融サービスやロジスティクス、保険業界に至るまで、幅広い分野で役立つという。
保険業界
自律走行車が事故を起こした場合、その責任は誰にあるのか。クオモ氏はこうした問題を引き合いに出し「スマートコントラクトとブロックチェーンがあれば、実際に車両を操作していた人物を特定する”知恵”が得られる」と語る。「ドライバーの場合もあれば、センサーの場合もあるだろう。車が自律走行モードにシフトしていたかどうかも特定できる」(同氏)
保険会社がスマートコントラクトを使用すると、例えば消費者が車を操作する条件や場所に基づいて、異なる料金を請求することが可能になる。晴れた日に道路が補修されているエリアを走行した車は、悪天候の中で起伏の激しい道を走っていた車よりも低い料金が請求される、といった具合だ。気象情報は気象サービスから収集した天候条件の情報、道路の状況は車両管理局が提供する道路補修情報などを利用して確認する。
不動産
ガーツィック氏はブロックチェーンを使ったシステムにより、不動産取引を効率的に処理するシナリオを示す。その1つが「エスクローサービス」の代替である。
米国では、不動産の注文から納品までの間、一時的に料金を預かるエスクローサービスの利用が盛んだ。エスクローサービスは、契約が履行されれば料金を売り手に渡し、破棄されれば買い手に戻す。
不動産物件の料金を送金する際、このエスクローサービスの代わりにブロックチェーンシステムが使える可能性がある、というわけだ。「ブロックチェーンシステムでは、買い手と売り手が電子媒体を使って契約を結ぶと、対価と居住用財産の所有権が移管される」とガーツィック氏は説明する。
クオモ氏は「非常に複雑な種類の契約がブロックチェーンの世界に持ち込まれるのは、当分先になるだろう」と前置きしつつ、「コンプライアンスの保証など、早ければ2016年のうちにブロックチェーンの世界に進む可能性があるシンプルな種類の契約もある」と語る。
正道のビジネスを進む
スマートコントラクトはプロセスの自動化だけでなく、行動を制限できる可能性も秘めている。スミス氏は次のように語る。「ストックオプションの行使条件や証券取引上の規則などは、契約の観点では全て行動の制限であり、自動化ではない。こうした活動をスマートコントラクトで実現可能にすることで、ビジネスチャンスが開く」
コンプライアンスの監査にも、スマートコントラクトは大きなメリットをもたらす。具体的には事象が発生するタイミングと、監査人がその事象を評価するタイミングとのギャップを埋めることができる。ガーツィック氏は次のように語る。「機械で評価可能なスマートコントラクトがあれば、監査人は非常に高い視点から状態を観察できる。四半期ごとや月ごとではなく、分単位というほぼリアルタイムの監査も可能になる。トランザクションが発生するたびに、社内外の両方についてリスク評価や監査がリアルタイムにできる」
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