J-SUMMITS 連載コラム「電気羊はユーザーメードがお好き!?」
電子カルテの3原則を、「機密性」「完全性」「見読性」「検索性」の4原則に変えよう(1/2 ページ)
医療情報の電子保存の3原則としては「見読性」「真正性」「保存性」が長らく意識されてきた。だが情報セキュリティやe-文書法の要件と比べると重要な視点が欠けているのではないか、と筆者は説く。
医療現場における電子カルテの導入や利用に関するエッセイ集『電子カルテは電気羊に食べられる夢を見るか』(加藤 五十六 著)を題材に、「日本ユーザーメード医療IT研究会」(J-SUMMITS)のメンバーが、現場が抱える課題の解決策をリレー形式で提案する本連載。
今回は、電子カルテのサブシステムにおけるデータの記録・参照方式というテーマを取り上げる。ITシステムの硬直化を防ぐためにも、データの記録・参照方式については、厚生労働省通知における「見読性」「真正性」「保存性」の3原則ではなく、e-文書法では電子保存の基本要件における「機密性」「完全性」「見読性」「検索性」の4要件で考えよう、と恵寿総合病院の山野辺 裕二氏は説く。【編集部】
本稿内では病院情報システムの意で「電子カルテ」を用いさせていただくことにする。
加藤 五十六先生との出会いは、彼の「電子カルテ内で診療科を識別する色を統一すべきだ」という学会発表を見たときに始まる。その発想のユニークさと、およそ実現できそうにない難題に挑む突破力に感銘を受け「電子カルテのユーザーインタフェースガイドラインを作ろう」という研究班にお誘いした。『電子カルテは電気羊に食べられる夢を見るか』の中でも、この研究班を含め私に関連する記述が2カ所あり、読むたび苦笑を禁じ得ない。
今回は本書の中から「非統合化の危機」の章を題材として取り上げる。この章では電子カルテのサブシステムにおけるデータの記録・参照方式を4つに分類した上で、サブシステム参照方式ではサブ側の世代交代でデータの「見通し」が悪くなり、1人の患者の生涯データを参照することが困難になると述べている。そして「安易にWeb参照に流れない不断の努力を地道に続ける必要がある」と結んでいる。
「電子カルテの3原則」と電子保存の4要件
近年は厚生労働省が、医療や介護、生活支援サービスなどを一括提供する「地域包括ケアシステム」を推進している。だが一施設内でも困難だった「見通し」を多施設・多職種で確保するのは一段と困難になる。これに関連して今回は、近年筆者が注力していることの1つである「電子カルテを3原則でなく4要件で考えよう」という主張を紹介する。なお木村映善先生の「一患者一生涯カルテは実現可能? そのシステム要件を整理してみた」の末尾部分も併せてお読みいただくとよいだろう。
電子カルテの3原則の、
- 見読性
- 真正性
- 保存性
は1999年に厚生省(現厚生労働省)が診療録などの電子保存を認めた通知を出した際に用いられたものだが、この通知は2005年のいわゆるe-文書法施行時に廃止された。しかしそれを引き継いだ「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」でもこの電子カルテの3原則を踏襲している。一方、視野をe-文書法に広げると、e-文書法は電子保存の基本要件として、
- 機密性
- 完全性
- 見読性
- 検索性
を挙げる。数の上では1つ増えただけだが、電子カルテの3原則では「機密性」「検索性」の表現が不足していると筆者は考える。ひいてはこの視点不足が、わが国の医療のIT化の妨げになっているようにも感じる。図1では「情報セキュリティの3要素」も含めて整理した。
今回はこの「見読性」と「検索性」に着目する。電子カルテの3原則では曖昧だったこの2つを分けて考えることで、課題解決の糸口が見えてくる。見読性は不変に保つべきものであり、検索性は後付けで付加できるものである。IT化を考えるときは、無意識に当初の設計段階から「あれもこれも」検索できるような設計にしてしまうことが多い。加藤先生も述べているが、多くの情報システムがリレーショナルデータベース(RDB)を設計の基盤にしている。このアプローチが知らず知らずのうちに、ITシステムの硬直化を招いていないかどうか省みる必要があるだろう。
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