J-SUMMITS 連載コラム「電気羊はユーザーメードがお好き!?」
電子カルテの3原則を、「機密性」「完全性」「見読性」「検索性」の4原則に変えよう(2/2 ページ)
2016年上半期「医療IT」記事ランキング(2016年1月1日~2016年6月20日)
1位 iPhone 3200台導入の東京慈恵会医科大学、情報共有の在り方を一新
2位 中小規模病院や診療所で電子カルテがそれほど普及しない理由
3位 「病院の予約もチャットボットにおまかせ」な時代は本当に来るのか
見読性は不変に保つ性質のものであり、検索性は後から付加できる
見読性と検索性の例として、インターネット電子図書館「青空文庫」とドキュメントスキャナーのOCR(文字認識)機能を挙げる。青空文庫(図2)は、有志のボランティアがデジタル化した著作権切れの文学作品を数多くそろえる。デジタル化により古典作品には数十年以上の時を経て検索性が付加され、作品中に「軍艦」という語が何回出現するか、といった研究が簡単に可能になった。
余談だが青空文庫では見読性の点で失われた部分もある。例えば当時の漢字字体がPCで規定された文字に置き換えられて変わっている。また底本(デジタル化のもとにした本)で「見開きで何文字×何行表示していたか」というオリジナルが持っていた見読性も失われている。筆者は雑誌の原稿で刷り上がりの段組レイアウトを考慮して文字表現を推敲(すいこう)することがあるが、往時の文豪も、ページをめくった瞬間に場面転換を図るなど、印刷出版時のレイアウトを知った上で原稿用紙に向かっていたかもしれないのである。ここまで考えつつ世間の電子カルテがシステム更新した後の見読性を顧みると、背筋が寒くなる思いがする。
もう1つの身近な例が、ドキュメントスキャナーのOCR機能である。イメージスキャナーはその名の通り、人が目にするイメージを画像として保存する。その画像の上にOCR機能で作成した文字を透明なテキストレイヤーとして重ね、PDF形式として保存する機能を備えることも多い。この画像部分が人の読める「見読性」、透明テキスト部分が機械で認識できる「検索性」に相当する。ただしOCRは誤認識が不可避であり、その限界を知っておく必要がある。例えば検索エンジンで「処方ぜん」という誤った単語を検索すると、図3で示したようにスキャン画像とOCR機能による透明テキスト部分の内容が異なるPDFが見つかる。
「Microsoft Office」文書の内容をデータベースに入力する
日本ユーザーメード医療IT研究会(J-SUMMITS)にはデータベースの達人が多いが、メンバーの多くが精通しているデータベースアプリケーション開発ソフトの「FileMaker」は、検索性に長けたデータベースを基盤に柔軟な見読性を付加できることも人気の秘密の1つだと考えている。一方、筆者が近年好んで用いている「Microsoft SharePoint」は基本的には情報共有・文書管理システムであるが、Webブラウザをフロントエンドとしたデータベースの側面も持っており、ドキュメントのメタデータをデータベースのように扱うことができる。具体的には「Microsoft Word」や「同Excel」など「Microsoft Office」の文書ファイル内の設定領域からデータを抽出し、検索可能なデータベースをプログラミングなしに構築できる(図4)。現場の医療職が親しんでいるMicrosoft Office文書は見読性だけを考えて作られていることが多いが、そこに検索性を付加するアプローチも提供できるようになった。これは医療現場の実情から大きく飛躍することなく文書内データを活用できる手法だと考えている。
この「見読性を前提としたドキュメントからデータを抽出してデータベースとする」という考え方は、非定型データを対象とするビッグデータ分析にも通じるところがあり、加藤先生が指摘するサブシステム参照の問題の解決の糸口ともなるように思う。電子カルテと連係する部門システムの多くはWeb参照という形や「レポート文書」の形で見読性を提供している。レポートドキュメントの見読性を保ったまま保管するとともに、検索性を付加してデータベースとして利用できれば、長期的な視点でデータの「見通し」を良くする手段の1つになるだろう。
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