リアルタイムな経営判断とグローバル化の壁を越えるには
世界を攻める中堅・中小企業の経営に、クラウド型ERPが“効果あり”な理由を探る(2/2 ページ)
これからのグローバル化を見据えてクラウド化の道へ
ERPに限らず、今システム導入や更新を考える際に忘れることができないポイントが、グローバル化への対応だ。製造業だけではなく、業種や規模を問わず海外にビジネスを広げる企業は増え続けている。ただしそのトレンドには近年変化が見られるという。
以前の“中小企業の海外進出”といえば、アジア各国への工場移転など安価な生産拠点を得ることが目的のケースが少なくなかった。今では逆に、世界をマーケットと考えて売り込みにいくために拠点を展開する企業が増えているのだという。そうして現地法人を立ち上げ拡大していく過程で、会計の課題が浮かび上がってくる。
「海外拠点が小規模なうちは、現地法人ごとに現地の税制にあったERPを使い、決算期にデータを統合してグループ全体の経理データを作成したりする企業が多いですね」と山田氏は語る。しかし海外事業が本格化するにつれて、毎年1回や毎月1回の集計では経営判断の材料として役立て難くなる。「経営陣の迅速な意思決定のためには、グローバル環境に対応したERPをグループ全体で使うことが理想形でしょう」
ERPがグローバル環境に対応するために必要な条件は幾つかある。1つ目の条件は、各国の税制に対応可能で、世界中で安心して使えること。この点で先んじているのは、大規模なグローバル企業で実績を積み上げてきたSAPやOracleなどが販売する大型ERPだ。利用企業の習慣や国の税制に応じて利用可能な仕組みを備える。
2つ目は、クラウドサービスとして利用できること。オンプレミス型ではユーザー企業のどこかの拠点にサーバを設置して運用することになり、エンドユーザーがどの拠点にいるかによって使い勝手に大きな差が生じてしまう。また時差を考慮するとグローバル展開している企業の場合、24時間常に誰かが使っている状態になるため、メンテナンスも難しい。その点、クラウドサービスとして提供されていれば、世界中どこからでも使えてサーバのメンテナンスも不要、ERPのバージョンアップもベンダーがバックグラウンドで進めてくれる。
クラウドサービスであればサーバ資産や管理者などを社内に持たなくていいというメリットもある。中堅・中小企業にとってERPは大きな資産となり、社内に設置したサーバなどの機器の運用管理が負担になることも考えられる。機器更新コストが高くて入れ替えられず、ERPの最新版へのバージョンアップ要件を満たすことができないことを理由に、陳腐化したERPを使い続けている企業もあるのではないだろうか。
先述の通り、ERPは今や経理や人事部門だけが使うツールではなく、経営の意思決定を早めるために役立てるツールに変化しつつある。旧来のビジネス設計に準じたERPを使い続けることは、これからのグローバル化社会で生き残るためのスピード感を、経営に持たせることは難しいかもしれない。クラウド型ERPなら乗り換えも比較的簡単で、オンプレミスに比べてイニシャルコストも低い。低リスクで、経営判断のスピードアップに必要な情報を手に入れやすくなるというわけだ。
とはいえ企業規模が拡大していくと、実はオンプレミスの方が安上がりになる、といったコストメリットの逆転が将来的に起こらないとは言いきれない。クラウド型ERPはインターネットを介しての利用となるため、データ送受信時の認証やセキュリティの面に不安要素が残る点も否めない。これはクラウドサービスである以上、避けては通れないデメリットでもある。ERPのリプレースの機会があれば、クラウドサービスそのものが持つメリットとデメリットを正しく理解した上で、クラウド型ERPを検討の選択肢に加えるべきだろう。
「自社で資産を抱えず、経営判断に必要な情報をオンラインでリアルタイムに参照する。金融業が劇的に変化した『FinTech』というトレンドと同様に、ERPもクラウドコンピューティングと組み合わせることでビジネスが劇的に変わります」と山田氏は語る。
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