「Google Apps」 vs. 「Office 365」
Gmailが大人気でも「Microsoft Outlook」が使われ続ける“切実な事情”(1/2 ページ)
「Google Apps for Work」と「Office 365」の戦いにおいて、Microsoftは自社製品に対するユーザーの強い愛着をフルに利用している。ただし、忠実な支持者はGoogleにもいる。
カナダの鉱業企業Hudbay Mineralsで最高情報責任者(CIO)を務めるジョー・アビダウド氏は2012年、社内のメールシステムをMicrosoftの「Microsoft Exchange」からGoogleのオンライングループウェア「Google Apps for Work」へ切り替えた。その際、アビダウド氏が従業員に出した指示は「今後はGoogleを使うように。デスクトップメールクライアント『Outlook』はもはや使えなくなる」という極めてシンプルなものだったという。
この指示に対する従業員の反応は冷ややかだった。
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クラウド時代のオフィススイート選定術
「Outlookに戻せないのか」
「多くの従業員がGoogleサービスのフロントエンドを非常に嫌がった」。2010年にCIOとしてHudbay Mineralsに加わったアビダウド氏は、こう語る。機能が制限的で、メールが見つけにくく、メール検索もしづらいと感じたようだ。「さまざまな機能に対して否定的な意見が寄せられた」(同氏)
話はこれで終わりではない。従業員から「Outlookに戻すわけにはいかないか」との要望が繰り返し出されたのだ。2年後、アビダウド氏はついに折れ、希望者にOutlookの使用を認めることにした。
そこには意外な落とし穴もあった。Outlookに戻すということは、すなわち複数ユーザーで同じドキュメントを同時に編集したり、動画で顔を見合わせながらチャットしたりするためのGoogle Apps for Workのツールが使えなくなる、ということでもあったからだ。
1300人にOutlookの使用を認めたが、実際にOutlookをインストールしたのは恐らく十数人程度だったとアビダウド氏は説明する。
業界標準のソフトウェアスイート「Microsoft Office」のオンラインサービス版として知られるMicrosoftの「Office 365」と、Google独自の企業向けサービスであるGoogle Apps for Work。クラウドメール市場におけるこの2大勢力の激しい競争で1つ明らかになったのは、「使い慣れた技術の安心感と信頼感を重視する企業」と、「顧客へのメールにせよ、ドキュメントの入力にせよ、勤務スケジュールの調整にせよ、新しい働き方を導入することに対して前向きな企業」との文化の違いだ。
当初はGoogle Apps for Workが優勢
近年はメールの他にも、カレンダーやワープロといったオフィスソフトウェアのオンラインサービスへの移行を検討する企業が増えつつある。コストの低減、ディザスタリカバリー(DR)対策の強化、スケーラビリティの向上といったメリットを期待できるからだ。
ただし、この市場はまだ発生期にある。調査会社Gartnerが2016年初頭に発表した調査結果によると、調査対象となった株式公開企業のうち、MicrosoftかGoogleのいずれかのオンラインメールサービスを使用している企業は13%にとどまった(内訳はOffice 365ユーザーが8.5%、Google Apps for Workユーザーが4.7%)。
MicrosoftとGoogleのオフィススイートはそれぞれ、Webメール、ワープロ、カレンダー、メッセージ、スプレッドシート、スライド作成などのプログラムを含む。基本的なラインアップはどちらも同じだ。
Gartnerのアナリスト、ガイ・クリース氏によれば、Google Appsはシンプルなライセンス体系や管理の容易さ、コストの低さなどが支持され、特にスタートアップ企業や小規模企業の間で人気が高い。一方、大企業はOffice 365を好む傾向にあるという。Gartnerによると、オンラインメールサービスを使用している株式公開企業の間では、Office 365ユーザー企業の比率が11%なのに対し、Google Apps for Workはわずか2%にとどまる。
この市場には業界ごとの傾向もある。広告、IT、エンターテインメント、メディアなどの業界はGoogle Apps for Workを好み、銀行、エネルギー、製薬といった規制の厳しい業界にはOffice 365を選ぶ企業が多いようだ。ただしクリース氏によれば、こうした傾向は市場シェアに常に明確に反映されるわけではなく、企業向けのオンラインサービスに関しては特にそうだという。
4年前にオンラインメールサービスへの移行を検討したとき、Hudbay Mineralsはちょうど北米から南米へと事業を拡大している最中だった。「どの国での業務かにかかわらず、全社でユーザー体験を統一したかった」とアビダウド氏は語る。当時、オンラインメールサービスの有力な選択肢といえばGoogle Apps for Workぐらいしかなかった。Office 365はまだリリースしたてで、機能が限られ、ユーザー規模も小さかった。
クリース氏によれば、Microsoftが現在この市場で成功しているのは、同社が総力を挙げて製品強化に取り組んだ結果だという。また、クラウドコンピューティング自体の人気に後押しされた側面もある。「MicrosoftのOffice 365がようやく信頼できるレベルに達したということだろう」とクリース氏は語る。「MicrosoftがGoogleからシェアを奪ったというよりも、クラウドへ移行するユーザーが増える中で、Microsoftがそうした新規ユーザーのかなりの部分を取り込んでいる」というのが、同氏の見方だ。
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