進化するDBMS市場【前編】
データベース市場の革命は可能か、明白になってきた課題と次の躍進を探る
企業がソーシャルメディアやビッグデータ、IoTから得られる非構造化データの管理に注目する中、データベース管理システム(DBMS)市場に新しい風が吹いている。
陰りを見せていた「データベース管理システム」(DBMS)市場に光が差し込んでいる。この数年、DBMS市場は全くと言っていいほどに活気がなかった。企業が近代的なシステムのインフラに移行する一方で、DBMSの限界が目立つようになっている。この状況を受けて、多数のスタートアップサプライヤーが市場に攻勢をかけた結果、ユーザーの選択肢が増えている。
「リレーショナルデータベース管理システム」(RDBMS)が登場したのは1970年代のことだ。RDBMSのおかげで企業はビジネス情報を保存できるようになった。Gartnerの調査によると、DBMS市場を支配しているのは3社で、その内訳は42%のシェアを占めるOracle、20%のMicrosoft、18%のIBMとなっている。これらのベンダーは初期のころから市場に参入しており、オンライン処理からデータ分析まで多様な用途をサポートするDBMS製品を提供してきた。だが高い需要とは裏腹に、革新はほとんど起きてこなかった。
あるときマサチューセッツ工科大学(MIT)は、DBMS研究グループを実際に解散してしまった。そう話すのはNuoDBの創設者で取締役会会長を務めるバリー・モリス氏だ。
SNS(ソーシャルネットワークサービス)などの発達によって、さらに多くの非構造化データをサポートするといった新たな要件が発生している。そのような状況の中、スタートアップベンダーはDBMSの概念に多種多様な方法で取り組んでいる。「DBMS市場は完全に停滞していたが、最近の市場の変化によって、ぐっと興味深さが増している」とGartnerで統括責任者を務めるアナリストのドナルド・フェインバーグ氏は語る。
従来のシステムから得られる利益は徐々に減っている。だが、市場全体から見れば小さいといえども新しいツールの売り上げは2桁増加している。そのためDBMS製品の購入は、Oracle、Microsoft、IBMから選べばよいという単純なものではなくなっている。
最近注目が集まっている理由の1つはDBMS市場の規模と成長だ。2015年のデータベース市場は400億ドル規模だったが、IDCによると2017年までには500億ドル規模に拡大する見通しだ。数々の要因がこうした成長と市場の変革を促している。
情報の殺到によって誕生した新たなDBMS製品
第一に、SQLに依存する従来のシステムは大量流入する情報にはあまり向いていない。従来製品のサプライヤーは実質的に40年前に誕生したテクノロジーを採用しており、これを継続的に強化しているにすぎない。Chevroletが1970年式「Chevy Camaro」のデザインを手直しし続けたときと同様、最終的には欠点が表面化する。例えば、現在普及しているシステムはテキストデータ(つまり構造化データ)を扱うために設計されている。こうしたデータは行と列に適切に変換される。だが、動画のような非構造化データをテキストデータと同じくらい上手く処理することはできない。
この構造化データと非構造化データの差に対応する方法については、企業にとって魅力に欠ける選択肢しか残されていない。「1つの中央システムに情報を統合するには何年もの歳月を要するだろう。また、さまざまな種類の情報を1つのデータモデルでまとめて対処できるようになる見込みは低い」とEnterpriseDBで製品とサービス部門のシニアバイスプレジデントを務めるマーク・リンスター氏は述べる。
企業では新たな需要が生まれている。最近の技術的な進歩によって新たなデータソースがもたらされた結果だ。メディアの種類の数は増えており、多くの企業は社内外のコミュニケーションに「YouTube」の動画を利用するようになっている。また、SNSでのやりとりをさまざまな方法で追跡したり、「IoT(モノのインターネット)」の端末を導入し、自社製品の供給、流通、フルフィルメントに関わる一連のプロセスをより詳しく把握できるようにしたりもしている。そのため、IDCは2020年まで2年ごとにデータ量が倍増すると見込んでいる。
それに加え、企業はリアルタイムの情報を必要としている。だが現在は情報が分散する傾向にあり、それ故に問題が生じている。RDBMSは、複数のシステムに保存された1つのレコードを更新するという問題を抱えている。更新が加えられるたびに、その変更を全てのシステムに対して同時に反映しなければならない。その概念は簡単に理解できるものの、実装するのは難しい。というのも、システムにはTBあるいはPB(ペタバイト)もの情報が保管されており、データベースは国内または世界中に散在する複数のサーバで実行されているためだ。
DBMSが登場したとき、稼働時間の要件は今ほど厳しくなかった。IT部門が99.99%の稼働時間を実現すれば経営陣は満足していた。これは、1年間のダウンタイムが1時間未満という計算だ。だが現在はシステムの稼働時間を99.9999999%まで引き上げている企業もある。この場合、年間のダウンタイムはミリ秒単位にまで低減されている。
結局のところ、従来のシステムでは主に自社開発テクノロジーを基盤にしており、コストも高くなる可能性がある。後編では、大量トランザクションをさばく目的で設計された新種のDBMS「NuoDB」の概要と事例をお伝えする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
進化するDBMS市場
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[アトラシアン株式会社] IT運用や従業員サポートは生成AIでどう変わる? 使い方や導入の流れは? -
製品資料
[株式会社みらい翻訳] 音声翻訳活用の課題を解決、“本当に使える”ツールの特徴とは? -
製品レビュー
[Wrike Japan 株式会社] 400店舗を支えるWalmart Canada、散在する情報やアナログな管理をどう変えた? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 年間100件超のDXプロジェクトを統合管理、JERAはどのように実現した? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] グローバルなクリエイティブ業務を合理化、エスティーローダーに学ぶ実践のコツ
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
ソフトウェア開発の厳しい納期と品質 トヨタグループはどう両立しているのか?
-
3
9割が頓挫する「AI内製化」 差がついたのはツールより設計力
-
4
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
5
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
6
JSONをやめてPythonで送る トークン消費を約7割抑えるAIの設計
-
7
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
8
膨らむAIコストに歯止め GitHubのマルチモデルルーターは何が違うのか
-
9
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
-
10
「有線LAN環境」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
2
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
「スクラム」と「カンバン」の違いとは? アジャイル型開発手法を徹底比較
-
9
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
10
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー