製品選定前に読んでおきたい基礎技術 ストレージ編【第1回】
初めてのフラッシュデバイス、HDDとの違いは?
高性能が魅力のフラッシュデバイスは、今後ますます市場拡大が見込まれる技術分野だ。そもそもフラッシュデバイスはどのような仕組みで稼働し、HDDと比べて性能、コスト、信頼性でどう優位性があるのか。
本連載ではIT製品/サービスを選定する上で必要となる技術要素を、カテゴリーごとに2、3回に分けて紹介する。また連載と併せて、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)では技術要素に関する勉強会を開催する。記事だけでは分からなかったことを質問したり、読者の皆さん同士の交流の場としてご利用いただきたい。勉強会の詳細は、次回以降に記載する。
勢いを増すフラッシュデバイス市場
今回から3回にわたってストレージの基礎技術を解説する。記憶媒体としてフラッシュメモリを採用した「フラッシュデバイス」を中心に、ストレージ分野の市場予測から今後のストレージ選定時に考慮すべきポイントを洗い出し、要件に適した機器の選定ができることを目的とする。なおフラッシュデバイスとは、フラッシュメモリを搭載した記憶媒体全般を指す。SSDやPCIカード、ベンダー固有のハードウェアなどの複数の形態がある。
選定ポイントを説明する前に、ストレージの市場予測を見ていこう。
図1のグラフは、調査会社のIDC Japanが発表したストレージアレイ(ストレージシステム)内で採用されている記憶装置別のシェア予測である。ご覧の通り同社は、「I/O intensive」(高性能フラッシュデバイス)と「Capacity optimized」(SATA接続型大容量HDD)のシェアが増加すると予測している。これはデータアクセスの高速化が進むことと、データの爆発的な増加を見込んでいることを意味する。極端に言えば、今後のストレージには高性能化と大容量化が求められるといえる。
別のグラフも見ていただきたい。図2のグラフは同じくIDC Japanが発表した、国内の高性能フラッシュデバイスの市場予測だ。先に示したシェアの増加と合わせて、市場規模全体が拡大していく予測が分かる。また売上額と出荷容量の比率から、同社はフラッシュデバイスそのものの容量単価が徐々に下落していくと予測していることも読み取れる。
では、なぜストレージの高速化が必要なのか。それはITシステム全体の性能向上と深い関係がある。
これまでITシステムのプライマリーストレージアレイ(頻繁にアクセスするデータを格納したストレージアレイ)には、磁気ディスクを搭載したHDDが採用されてきた。しかしCPUやネットワークをはじめとするIT技術の高速化によって、ストレージ部分がシステム性能のボトルネックの原因となってきた。具体的には2000年のCPU、ネットワーク、HDDの性能をそれぞれ“1”とした場合、2015年のそれぞれの性能は、ネットワークで50倍以上、CPUでは200倍以上と数十倍以上も向上している。それに対しHDDの性能は数倍程度にとどまっており、明らかに陰りが見えている。
その結果、CPUやネットワークの速度に追従するため、搭載するHDDの数を増やすことで性能差を埋めることになる。しかしそれでは必要以上の容量を準備することとなり、コスト効率が悪くなってしまう。HDDに代わる記憶装置として、デバイス単体の性能が高いフラッシュデバイスに注目が集まるのは当然の流れといえる。
ストレージ市場もその動きに合わせるように、ベンダー各社がしのぎを削りながら、続々とフラッシュデバイスを採用した新製品や新技術をリリースしている。ただし従来のHDDとは異なるフラッシュデバイスの特徴を適切に理解しなければ、適切な製品を選定することは困難である。以降、今後の市場拡大と需要が見込まれるフラッシュデバイスの基礎知識をまとめた。
フラッシュデバイスとは
フラッシュデバイスのメリットで何よりも特筆すべきはそのI/O性能である。1秒間にデバイスが処理できるI/O数を示すIOPS値が、従来のHDDでは数十~百数十程度なのに対し、フラッシュデバイスは3000~5000程度となり、数十~数百倍の性能を有する(図3)。つまり、システム性能のボトルネックとなっていたHDDをSSDに置き換えるだけで、より高い性能が得られるようになる。
HDDとフラッシュデバイスの違い
性能以外の部分でも、HDDとフラッシュデバイスの違いを見ていこう(図4)。
ドライブの信頼性の指標となる故障率に関してもフラッシュデバイスはHDDに比べて優位だ。HDDは磁気ディスクを回転させながらデータを読み書きする。物理的な駆動部分を含むため、衝撃や経年劣化による物理不良を起こす可能性を内在する。それに対しフラッシュデバイスは、物理的な稼働部分を持たず、メモリセルの電荷でデータを読み書きするため、衝撃に強く経年劣化による故障の心配が少ない(次回に説明する書き込み回数の上限を除く)。
次にコスト面では、単純な容量単価で見るとHDDの方がフラッシュデバイスよりも安価だが、性能単価で見るとフラッシュデバイスの方が優れているといえる。
また、先に紹介したように、フラッシュデバイスは物理的な駆動部分がないため、発熱量が低く、消費電力も少なくて済む。そのためHDDと比べて空調や電力消費が抑制でき、ランニングコストが低くなるというメリットを持つ。
今回はストレージ市場のトレンドとフラッシュデバイスの特徴をまとめた。次回はフラッシュデバイスの特徴的な動作を紹介し、よく耳にする疑問点について技術的な観点で解説する。
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製品選定前に読んでおきたい基礎技術
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