0.5歩先の未来を作る医療IT
クリニック経営を「見える化」するツール「PMS(Practice Management System)」とは?
診療所経営の見える化を実現するPMS(Practice Management System:病院向け経営支援システム)。登場の背景には「もっと楽に電子カルテやレセコンのデータ分析をしたい」という、医師の切実なニーズがあります。
前回の「診療予約システムに見る、医療とITの良い関係 ポイントは『患者の来院管理』」では、医療とITのより良い関係づくりの例として「診療予約システム」を紹介しました。今回は、電子カルテやレセプトコンピュータ(以下、レセコン)などに蓄積したデータの活用について考えてみます。
診療所では「経営の見える化」が遅れている
医師に「本日は何人くらい患者さんが来ましたか」と質問すると、大抵の医師は電子カルテの画面を見て、「○人です」と簡単に答えることができます。しかし「本日の患者当たり平均単価はどれくらいですか」「前年に比べて利益は改善しましたか」といった質問に対しては、とっさに答えられる医師が少ないように感じます。
これらの事例について、筆者は学生時代にコンビニエンスストアでアルバイトをしていた時のことを思い出しました。コンビニエンスストアのPOS(販売時点情報管理)システムには「来客目標に対する進捗(しんちょく)率」や「顧客の平均購入単価」などがリアルタイムに表示、共有されており、アルバイトであっても閲覧が可能でした。このような状況に比べると、診療所において「経営の見える化」がいかに遅れているかが分かるでしょう。
電子カルテやレセコンの「統計機能」
電子カルテ導入目的の1つに「データの活用」があります。前述のように、診療所ではこの部分が特に進んでいないように感じます。電子カルテやレセコンには、診療所経営で重要な指標となる、さまざまな情報が蓄積されています。それらの情報は、多くの電子カルテやレセコンの「統計機能」から閲覧・抽出することが可能です。
例えば日々の売り上げ管理は「日計表」、月々の売り上げ管理は「月計表」、院内の薬剤使用状況は「薬剤使用集計表」、診療行為ごとの算定件数は「診療行為別集計表」といったように、それぞれまとめて管理、抽出することが可能です。それ以外にも「患者情報」と「傷病名」「医薬品」「診療行為」「特定器材」「検査」などの条件を組み合わせ、データを抽出する仕組みもあります。
診療所では統計機能を使いこなせていない現状
しかしながら、診療所ではこれらのデータを経営に生かせていないのが現状です。データを加工、分析する行為が必要になるためです。具体的には、データをCSVファイルに吐き出し、「Microsoft Excel」などの表計算ソフトで加工する必要があるのです。
事務長などのスタッフを配置することが多くない診療所では、データ活用の作業を医師が自らしなければならなかったため、あまり進んでこなかったのではないでしょうか。データの抽出や加工は手間が掛かる作業であるため、これまでは会計事務所や外部のコンサルタントが代行していたケースが珍しくなかったようです。
「PMS」の活用で経営の見える化を実現する
「電子カルテやレセコンのデータを経営に生かしたい」という医師のニーズは昔から根強くありました。最近ではPMS(Practice Management System:病院向け経営支援システム)という概念のもとに、システム開発が進んでいます。PMSを活用することで、簡単に電子カルテやレセコンのデータを分析することが可能になります。
PMSを利用することで、患者の来院推移や来院地域、曜日別の来院傾向、患者の滞在時間(待ち時間)、患者当たり平均単価の推移など、ほとんど労力をかけずに分析することが可能になるのです。図は、診療所向けにPMSを提供しているメディ・ウェブの診療所向け経営分析ソフト「Beeコンパス」の画面です。このシステムは電子カルテやレセコンと連動して、さまざまな切り口の経営分析が瞬時にできるようになります。
今後、PMSが普及し、多くの電子カルテやレセコンに、このようなシステムが搭載されることで、リアルタイムに経営状況を把握することが可能になる時代が来ると予想します。
次回は、電子カルテと連携する、問診システムや血圧計などのウェラブルデバイスについて考察します。
著者紹介
大西大輔(おおにし・だいすけ)MICTコンサルティング
一橋大学大学院MBAコース卒業。医療コンサルティング大手に入社。2002年に医療IT機器の常設展示場「MEDiPlaza」を立ち上げ、企画運営、スタッフ指導、拠点管理などを担当。2016年10月に医療ICT専門コンサルタントとして独立し、MICTコンサルティングを設立。医療機関向けシステムの開発アドバイス、導入アドバイス、医療IT人材の育成などを行う。過去2000件を超える医療機関へのシステム導入の実績から、公的団体を中心に講演を多数実施している。
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