「FileMaker」ベースの電子カルテ
相武台脳神経外科が構築した電子カルテ 「開発しながら運用」がもたらす満足度とは(1/2 ページ)
相武台脳神経外科は2014年に、開院当初に利用していた電子カルテから、新しいシステムとして「FileMaker」ベースの電子カルテ「ANNYYS_Developer版」へ移行した。その選定理由とは。クリニック院長に聞いた。
相武台脳神経外科は、2011年に開業した神奈川県相模原市に所在するクリニックだ。同クリニックは2014年に、開院当初に利用していた電子カルテから、新しいシステムへの移行を経験した。
医療機関にとって、使いやすい電子カルテを選定することは重要な課題だ。しかし同じ電子カルテを長く愛用していても、いずれはリプレースを検討する場面が訪れる。その理由は、ハードウェアの故障や不具合はもちろん、モバイルやクラウドといった進化の早いITトレンドへの対応など、さまざまだ。当然ながらシステムの入れ替えは費用がかかり、スタッフにも大きな負担がかかる。「こんなはずじゃなかった」という思いを抱かないためにも、綿密な準備と計画が必要になる。
同クリニックが電子カルテの乗り換えを決意した、いきさつは何だったのだろうか。乗り換えの前後で現れた課題に対し、どのように取り組んだのか。院長の加藤貴弘氏に話を聞いた。
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電子カルテ導入のコツ
医療施設における「FileMaker」シリーズの活用事例
相武台脳神経外科の概要
相武台脳神経外科は、MRI(磁気共鳴画像撮影)装置やCT(コンピュータ断層撮影)装置、X線撮影装置、心電図、脳波計など、さまざまな検査装置を備えたクリニックだ。また、同クリニックの診療科目にはリハビリテーション科もあるため、来院患者は診察から検査、リハビリテーションなど、処置に応じて院内を頻繁に移動する必要がある。来院者数は1日約80~100人。1カ月の来院患者約1700人のうち、初診患者は約300人だ。
2011年7月の開業から現在までに、相武台脳神経外科は電子カルテシステムの導入を2回経験した。開業直後は紙のカルテを使用し、最初の電子カルテシステムを導入。その後、2015年にエムシスの電子カルテ「ANNYYS_Developer版」に移行し、現在も使用している。選定理由は明確で、加藤氏は「(データベースアプリケーション開発ツール)『FileMaker』ベースの電子カルテシステムという条件で探したら、他に選択肢はなかった」と話す。
加藤氏にとってFileMakerは、以前勤務していた病院で使い慣れていた開発ツールだったという。何らかの形でFileMakerベースのアプリケーションを利用したことがある医療従事者は珍しくない。医療分野では、電子カルテや循環器科向けレポートシステムなど、さまざまな診療情報を管理する業務支援ツールの基盤としてFileMakerが浸透していることが背景にある。
FileMakerシリーズは、アプリケーション開発支援環境が充実している。そのため一般ユーザーだけでなく、サードパーティーベンダーが独自にデータベースアプリケーションを構築できる基盤として広まっており、医療分野での活用事例も少なくない。FileMakerで開発した独自アプリケーションである「カスタムApp」は、幅広い環境で動作するのが特徴だ。「iPad」や「iPhone」といったモバイル端末はもちろん、OSも「Windows」「Mac」に対応し、Webブラウザベースで稼働するアプリケーションも作成できる。
相武台脳神経外科は、クリニック運営のための業務支援システムを「FileMaker Pro」をベースに独自開発している。このシステムはもちろんANNYYS_Developer版と連携させている。独自開発したシステムが含むツールのうち、加藤氏がよく利用するのは次のようなものだ。
- 紹介状や訪問看護指示書など頻繁に発行する書類のテンプレートを用意して、電子カルテからデータを引用するだけで所定の空欄が埋まり、すぐに書類を作成できるツール
- 電子カルテのデータベースから患者数や処方傾向などを可視化してクリニックの経営判断に役立てるツール
加藤氏がFileMakerベースの電子カルテを選んだ理由は「FileMakerベースの電子カルテなら、このようなデータ連携が容易で、専門知識がなくてもシステム構築やカスタマイズがしやすいだろう」という考えを、開業当初から持っていたためでもある。
書類作成の手間を減らすカスタマイズ性を重視
相武台脳神経外科が最初に導入した電子カルテもFileMakerベースのシステムだった。ユーザーインタフェースや使いやすさには満足していたが、システムの拡張性やカスタマイズの余地が少なかったことから、システム移行を決断するに至ったという。
加藤氏が特にカスタマイズしたいと考えていたのが、書類作成支援機能だった。クリニック業務では、診療に付随してさまざまな書類作成業務が発生する。医師である同氏が書類作成に時間を費やしていると、診療のための時間が減ってしまう。そこで同氏は、ANNYYS_Developer版に移行してから、電子カルテと連携する自作の書類作成支援ツールを構築した。提携医療機関への紹介状や診断書、官公庁宛ての各種申請書類など、同氏がよく扱う書類の種類はさまざまだが、書式はおおよそ決まっている。そこで同氏は、書類のテンプレートを用意しておき、電子カルテから「患者名」「治療歴」「処方履歴」といったデータを引用して所定の空欄を埋めるだけで、書類がすぐに用意できるようにした。この仕組みを作っておけば、書類作成の手間もミスも減らすことができる。
電子カルテの自由入力欄についても「よく入力するフレーズは定型文として登録している」と加藤氏は説明する。数クリックの操作で定型文を入力できる“定型文挿入ボタン”を加えることで、書類作成の手間をさらに減らしている。このようにユーザーのアイデア次第で柔軟なカスタマイズができるのが、FileMakerベースのメリットだ。加藤氏は「書類作成の負担はとても大きい。この負担を軽減する仕組みはどうしても組み込みたかった」と話す。
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