コラボレーションやワークフローに生かす
仮想現実(VR)に“前のめり”なMicrosoftとCisco、アプローチの違いとは
Microsoftは同社イベントで、仮想現実(VR)コラボレーション技術と、Fordで使われている複合現実(MR)アプリを披露した。Ciscoも「Cisco Spark in VR」を発表し、顧客に試してほしいと呼び掛けている。
ユニファイドコミュニケーション(UC)大手のCisco SystemsとMicrosoftは、仮想現実(VR:Virtual Reality)とコラボレーションの融合に挑戦している。だが、エンタープライズコラボレーションのためのVRはどこまで現実的なのか。企業ではそうした技術を受け入れる土壌が整っているのか。具体的にどのような従業員が利用するのか。
今のところVRコラボレーションに関しては、ソリューションとしての期待よりも疑問の方が大きいかもしれない。だが、CiscoとMicrosoftはVR環境を利用して、より優れた没入型のビジュアルコラボレーションを実現しようとしている。
技術的に言えば、Microsoftは自社の技術を複合現実(MR:Mixed Reality、混合現実とも呼ばれる)と呼び、Ciscoは自社の技術をVRと呼んでいる。MRは、実際の環境と仮想環境を混合したもので、そこでは物理オブジェクトとデジタルオブジェクトが自然に共存する。一方、VRは、コンピュータソフトウェアによって構築される3Dの人工環境だ。
いずれにしても、両社はMRやVRが、ローカルチームとリモートチームのビジュアルコラボレーションに加え、商品設計と意思決定の迅速化を支援するとうたっている。
Microsoft HoloLensを使ったMR
MicrosoftのMRは、“デジタルツイン”の構築を目指している。デジタルツインは基本的に、商品、プロセス、サービスといった物理的な事物の仮想モデルだ。青写真など設計上のアイデアが流出しないように、デバイスとサービス全体にわたって情報セキュリティが確保される。Microsoftは2017年9月下旬に開催したIT専門家と開発者向けのカンファレンスMicrosoft Igniteで、同社のMRサービスを紹介した。
Ford MotorがMicrosoftのMRサービスを車の設計に利用している。デザイナーとエンジニアは、車のフードのスタイリングやサイドミラーの仕様決定などについてリアルタイムにアイデアを出し合って協力できる。
従来、Fordなどの自動車メーカーは、重くかさばるクレイ(粘土)モデルを使って車の各部の形状、サイズ、質感を検討してきたが、そのプロセスには何日も要し、数千ドルのコストがかかることもある。今では、「Microsoft HoloLens」を使ったMRによりプロセスを効率化し、チームが複数部門にまたがる意思決定をスピードアップできる可能性がある。Volvo CarsもMicrosoft HoloLensを利用している。
また、MicrosoftのMRサービスは、同社の主要コラボレーションサービスである「Microsoft Teams」と統合されている。例えば、MR環境で商品設計についてメモすると、そのメモがTeamsに表示され、他のチームメンバーもその通知を受け取れる。さらに従業員は、Teams内からリモートユーザーにコラボレーションを呼び掛けることもできる。リモートユーザーもMRサービスを使った共同作業に加わることが可能だ。
トレーニング支援技術としての魅力
こうした没入型のビジュアルコラボレーションの受け入れられ方は、ここ数年にUC分野で人気が出てきたデジタルコラボレーションホワイトボードに似た面がある。一部のコラボレーションホワイトボードは、コストの高さや相互運用性の欠如に加え、製造やエンジニアリングなど、従業員が特にビジュアル要素に関する共同作業を行う必要がある業種への適用性の低さが批判を浴びている。
Constellation Researchの主席アナリストを務めるアラン・レポフスキー氏は、機器コストや、トレーニングの必要性とともに、VR、拡張現実(AR:Augmented Reality)、MRに対する一般的な理解を背景に、「企業では、これらのツールはまだ本格導入には程遠い」と指摘する。だが同氏は、ARやVRは、特定の仕事については強力なトレーニングツールになる可能性があるとも付け加えている。
レポフスキー氏は、例えば、Microsoft Igniteでは、「Boeingが整備士の訓練へのHoloLensの利用を進めている」という事例紹介があったと語る。トレーニングや教育、顧客サービスに関するユースケースが生まれ、周知されるとともに、こうした技術の導入や普及も進みそうだ。
だが、その一方で、コミュニケーションやコラボレーションに関する一般的なユースケースに関しては、こうした技術はまだ“労多くして功少なし”だと、レポフスキー氏は指摘する。
「人々は一般的なWeb会議の活用にまだ苦労している。VRも推して知るべしだ。だが、データ可視化や双方向エンゲージメントといった分野にこうした技術を導入することによる業務改善効果は有望だ」(レポフスキー氏)
CiscoはCisco Spark in VRを推進
一方、Ciscoは、「Cisco Spark VR」の普及を推進している。Cisco Spark VRは、2017年3月に同社のEnterprise Connectで発表されたコラボレーション製品だ。2017年9月中旬には「Cisco Spark in VR」アプリをリリースし、顧客に試すよう勧めている。
Cisco Sparkを利用する顧客は、「Oculus Rift」ストアからCisco Spark in VRのβ版をダウンロードできる。このアプリに加えて「Oculus Rift + Touch」コントローラー、Riftと互換性のあるコンピュータがあれば、仮想3D環境を体験できる。
Cisco Spark in VRは、Cisco Sparkプラットフォーム(会議、メッセージ、通話に対応)およびエンドポイントとネイティブに連携し、仮想空間と物理空間を橋渡しすることを目指している。ユーザーは、VRを使っていない人とファイルやホワイトボードをリアルタイムに共有し、それらを見ることができる。Ciscoは、顧客と協力し、企業がSpark環境でどのようにVRを利用できるかを探りたいと述べている。
「これは、『AR、VR、MRがオフィスや仕事に統合された未来に一歩踏み出す』というコンセプトのアプリだ」。Ciscoのクラウドコラボレーション技術グループのゼネラルマネジャーを務めるジェンズ・メガーズ氏は、声明でそう説明している。
他のUCベンダーも独自の戦略を打ち出している。例えば、Zoom Video Communicationsは2017年9月、ARプロバイダーのMetaの技術と自社の技術の統合を発表した。この統合は、Metaの没入型AR技術により、Zoomプラットフォーム上で3Dモデルをホログラムとしてリアルタイムに共有、操作できるというものだ。3D建築モデルの作成や、人体構造の学習などのユースケースが想定されている。ユーザーは3Dホログラムを操作でき、Zoomビデオ通話の全ての参加者がそれを見ることができる。
IDCが500人のIT意思決定者を対象に実施した調査によると、回答者の30%近くがスマートフォンやタブレット向けにARソフトウェアをテストしていると答えている。2016年に52億ドルだったARおよびVR市場は、2020年には1620億ドル以上に拡大するだろうと、IDCは予想している。
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