開発手法はアジャイルに
クラウドでABAP開発環境が使えると何がすごいのか 「SAP Cloud Platform」の進化
SAPは「SAP Cloud Platform ABAP Environment」の提供によって、SAP ABAP開発者はそのスキルをクラウド環境でも生かせるようになった。だが、開発手法は見直す必要があるかもしれない。
これまで、ラピッドイテレーション(高速反復型開発)とSAP製品とは同じ文章の中で両立することはなかった。だが「SAP Cloud Platform ABAP Environment」によって局面が変わるかもしれない。これにより、プログラミング言語「ABAP」(Advanced Business Application Programming)がクラウドで利用可能になる。
開発者はABAPの既存のスキルをDevOpsにもアジャイル手法にも利用できる。その結果、ビジネスに必要なアプリケーションを迅速に提供できるようになる。専門家によると、SAP Cloud Platform ABAP Environmentは開発者が求めるものを提供するだけでなく、SAPの長期にわたるABAPへの取り組みを実証しているという。
カスタマイズを可能にするABAP
ABAPの当初の考え方は、開発者が必要に応じてSAPのERPシステムをカスタマイズできるようにすることだった。「企業がオンプレミスシステムをアップグレードすることもメンテナンスすることも必要ないならば、この考え方はうまくいく」と話すのは、SAPで製品マーケティング部門のグローバルバイスプレジデントを務めるダニエル・ラル氏だ。だが、SAPアプリケーションを利用し続けている顧客は、ABAPのカスタムコードが3百万行を超えることは珍しくない。SAPが更新パッケージをリリースするたびに広範囲に及ぶ回帰テストを実行する必要がある。
SAPは同社の製品をクラウドベースのモデルに移行して、顧客の代わりにアプリケーションスタックを管理するようになっている。こうした取り組みの中で、SAPはアプリケーションの拡張機能を作成する開発者にもっとアジャイルな手段を提供しなければならないことに気づいた。SAPのグローバルイベント「SAP TechEd 2017」でSAP Cloud Platform ABAP Environmentを初めて紹介し、2018年9月から一般提供を開始した。これで開発者は既存のスキルを生かし、ABAPを用いてSAPアプリケーションを強化できるようになった。
開発者の求めに対する回答
オーストラリアを拠点にフリーの開発者兼SAPメンターとして活動するグラハム・ロビンソン氏によると、開発者はクラウドでABAPを利用することを求めていたという。大規模パートナー企業、開発企業、大きな開発チームを抱える顧客企業は、いずれも「SAP Cloud Platform」でもこれまでと同じプログラミング言語を利用することを望んでいた。クラウドでABAPを利用できなければ、こうした企業の開発者が今後SAPとともに歩むことはなくなるだろう。
「大口顧客やSAPエコシステムの多くが不満を唱えるときこそ、耳を傾けるときだ」(ロビンソン氏)
SAP Cloud Platform ABAP Environmentではオンプレミス環境と同じプログラミング言語を利用できる。開発者は新たな構文を学習する必要はない。ただし「最新構文を使いこなしていない開発者は、クラウドベースの環境向け開発に慣れる必要がある」と同氏は補足する。
SAPにもたらされるDevOpsとアジャイル
「SAPはABAP開発者の開発環境は変わらないと主張しているが、新たな開発スキルが必要になる場合がある」とラル氏は話す。SAPアプリケーションの開発は通常、ウオーターフォール手法が用いられる。この手法は、論理的な手順を踏む反復の少ないアプローチだ。だがラル氏は、クラウドの開発はその性質上、サービスの継続的デリバリーと継続的インテグレーションを促すために、DevOpsとアジャイル開発の手法が求められることについて注意を促す。
「開発者はサービスベースの環境に取り組むことになる。この環境はこれまでのウオーターフォール手法とは異なる」と同氏は言う。メリットは、開発者がインフラやランタイム環境を管理する必要がなくなり、アプリケーションの開発に専念できることだ。
DevOpsとアジャイル手法は、SAPメンターやABAP開発者コミュニティーが作成した多くのコードスニペットを利用できる。コードについては既に「abapGit」というGitがあり、ABAP開発者はそこのコードを開発に利用できる。クラウドでのABAPに移行する開発者が増えるにつれ、共有されるコードも多くなるとラル氏は推測する。「若い開発者は他の開発者が作成したコードを利用し、アプリケーションに取り入れ、自身が作成したコードを他の開発者が利用できるように公開することに慣れている」と同氏は言う。
ただし、この開発手法がABAP開発者の作業方法を変えるとロビンソン氏は考えていない。「ソフトウェアが流通するサイクルは変わるかもしれない。だが、それは大した問題ではない。最近の開発者の大半は、自身の勤務先がさらにアジャイルになることを望んでいる」と同氏は説明する。DevOpsやアジャイル手法を使えば、開発者は今日作成したコードを明日運用環境で確認できるとロビンソン氏は言う。
長所を生かす
ロビンソン氏によると、SAP Cloud Platform ABAP Environmentを通じたABAP機能のリリースは、SAPの開発者コミュニティーにおおむね好意的に受け入れられているという。「この動きがABAP言語に対するSAPの今後の取り組みを示しているのが最も重要な点だ。ABAPが改良を加えられ、近代化されていき、プログラミングモデルを組み込んでいくことが見てとれる」
だが、クラウドにおけるABAPはまだ初期段階だ。クラウド環境でABAPを実行すると非常にコストが高くなる可能性があるため、ほとんどの開発者が二の足を踏んでいる。そのため、クラウドでのABAPを利用しやすくすることがSAPの課題だ。「SAPの製品チームが今後何を採用し、何を開発するかは興味深い。新たな環境で運用されるSAPアプリケーションを目にするのが楽しみだ」とロビンソン氏は話す。
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