0.5歩先の未来を作る医療IT:医療機関の働き方改革【前編】
病院のバックオフィス業務を効率化するITの使い方 患者の流れはどう変わる?
働き方改革に伴い一層の効率化を目指す医療機関には、「患者」と「スタッフ」の流れをマネジメントするためのIT活用が効果的でしょう。患者の待ち時間やスタッフの残業時間の低減に役立つITツールとは。
「働き方改革関連法案」が2019年4月から順次施行され、当然ながら医療機関にも適用されることから、その対策に注目が集まっています。バックオフィス業務をIT活用によって効率化する方法について、「患者」と「スタッフ」の2つの観点から考察します。前編となる本稿では、集患や待ち時間対策などの「患者管理」について解説し、後編ではスタッフ管理におけるIT活用をテーマに解説します。
働き方改革関連法案は「残業の上限」「有給休暇取得の義務化」「インターバル(休憩)の確保」などを定めており、医療機関にとっては解決が容易でない“悩みの種”になります。医療機関もホワイトな職場環境へと変化する必要があるのです。
医療機関経営において“ヒト”の問題は特に重要です。医療機関におけるヒトの問題は「患者(地域住民)」と「スタッフ(医療従事者)」の2つに区分できます。医療機関にとっては「患者を多く獲得すること」「良いスタッフを育成すること」という2つのヒトの管理こそが経営の根幹であり、ITで効率化できるチャンスはそこにあると考えられます。
ITを使って患者をどう獲得するか
医療業界の競争が激化している中、医療機関にとって「患者をどう獲得するか」は常に考えておかなければならない課題です。それは、将来、患者になる(可能性のある)地域住民に対して、どのように「認知」を促し、どのような「メッセージ」を届けるかという問題です。
現在はスマートフォンの普及もあって、インターネットで何でも調べやすい時代となりました。インターネットがない時代の医療機関はマーケティングに、駅看板や野立看板、「タウンページ」(電話帳)、口コミなどを活用してきました。今ではインターネットでの集患を第一に考え、医療機関でもWebサイトのSEO(検索エンジン最適化)は当たり前となりました。
SEOはその専門家が存在するほど奥が深いものですが、「誰に」「どのような方法で」「何を伝えるか」という基本は変わりません。検索エンジンのアルゴリズムは、適切な情報を定期的に更新しているページを高く評価する傾向があります。
継続的に情報を更新するためには、自らが簡単に更新できるWebサイトを構築し、スタッフをいかに巻き込んでいくかが重要です。更新作業を業者任せにすると、どうしてもタイムラグが生まれてしまいます。他にも情報発信の手段として、病院検索サービスに登録する他に、ブログやコラムを掲載したり、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を活用したりする医療機関は珍しくなくなりました。
幸いなことに、医療機関向けのWebサイト制作サービスや病院検索サービスの選択肢は充実しています(表)。効率的に情報を発信・更新するためには、内部で管理可能なサービスを選び、誰が発信・更新するかを決めることが大切です。
| サービス名(URL) | 運営会社 | 説明 |
|---|---|---|
| Wevery! | メディキャスト | Webサイト制作サービス |
| MyClinic EXPRESS | エンパワーヘルスケア | |
| クリニック専門ホームページ制作サービス | 日本ビスカ | |
| お医者さんドットコム | メックコミュニケーションズ | |
| Webider | リタワークス | |
| 病院なび | eヘルスケア | 病院検索サービス |
| EPARKクリニック・病院 | EPARKメディカル | |
| QLife | QLife | |
| スクエル | ミーカンパニー |
スタッフをどう採用するか
一方、少子高齢化による人手不足は医療機関にも深刻な影を落としています。まして働き方改革が叫ばれる昨今は、医療現場はマイナスのイメージを持たれやすく「なかなか人が集まらない」という声も耳にします。
かつてスタッフ採用の手法といえば、ハローワークや新聞の折り込みチラシが主流でした。今ではスタッフの採用面でもWebサイトが重要な役割を担っています。スタッフ採用に特化したWebサービスも充実しています。
スタッフに継続して長く働いてもらうためには、入職前と入職後のギャップをいかに埋めるかが大切です。このギャップが大きいと、早期の退職につながります。ギャップを埋めるためには、スタッフ採用のWebサイトをどのように充実させるかが重要です。応募者も事前に多くの情報が得られた方が安心して応募ができます。人手不足を解消するための対策が医院側に求められているのです。
待ち時間をどう改善するか
来院患者に対しては、どのように「快適」に過ごし「満足」していただくかが、次回以降のリピートに、そしてかかりつけ医(主治医)としての指名につながります。患者に満足していただくためには診療レベルが最も大切ですが、ホスピタリティー(もてなし)やコミュニケーション、そして「待たせない」対策も大切です。特にITは待ち時間のコントロールに役立っています。
待ち時間の原因は「来院患者の集中」にあります。一定時間内に患者を診察できる枠はほとんど決まっており、それを超えて患者が集中的に来院すると待ち時間につながってしまうのです。この待ち時間は医療スタッフの残業時間に直結します。診療が長引けばスタッフの帰る時間も遅くなるのです。残業の上限が制限される時代に、待ち時間を減らす試みは大きな意義があります。
来院患者の分散と診療のスピードアップ
その対策は「来院患者の分散」と「診療のスピードアップ」にあります。言い換えれば、患者が集中的に来院する時間帯をなくし、一患者に要する診療時間を短縮できれば、待ち時間は自ずと減少に向かうのです。
前者は「順番取りシステム」や「予約システム」を活用し、混んでいる時間帯を患者に避けてもらう工夫や、来院時間までの待ち時間を待合室ではなく院外で過ごしてもらう工夫があります。
後者は、医師に集中しがちな業務を看護師や事務スタッフに分ける「タスクシフティング」で改善します。さまざまな場面で発生するシステムへの登録作業の重複を避けるためには、電子カルテと医療機器など医療システム同士を連携させる必要もあります。システムがうまく構築、整備されていないために、無駄が発生している現場は少なくありません。
限られた人数で高い生産性を実現するためにはIT活用が必要不可欠です。そしてITをより積極的に使いこなすためには、スタッフの協力も必要不可欠なのです。
著者紹介
大西大輔(おおにし・だいすけ)MICTコンサルティング
一橋大学大学院経営学修士(MBA)コース修了。医療コンサルティング大手に入社。2002年に医療IT機器の常設展示場「MEDiPlaza」を立ち上げ、企画運営、スタッフ指導、拠点管理などを担当。2016年10月に医療ICT専門コンサルタントとして独立し、MICTコンサルティングを設立。医療機関向けシステムの開発アドバイス、導入アドバイス、医療IT人材の育成などを行う。過去2000件を超える医療機関へのシステム導入の実績から、公的団体を中心に講演を多数実施している。現在、医療事務・クラーク専門学校の非常勤講師も務めている。
このコラムについて
医療機関のIT化は他の業界に比べて5~10年は遅れているといわれます。また、医療現場でIT製品を導入する際、スタッフから不安の声が上がるなど、多かれ少なかれ障害が発生します。なぜ、医療現場にITが浸透しないのか。その理由を探るとともに、解決策を考えていきます。
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