IBM Q System Oneも登場
「量子コンピュータ」に乗り遅れないためにCIOは何をすべきか
量子コンピュータの本格的な実用化は先の話だが、研究は進んでいる。量子コンピュータの現況と商用利用が可能になる時期、活用が期待される分野、企業のCIO(最高情報責任者)がすべきことを説明する。
量子コンピュータの現状について、ユーザー企業の最高情報責任者(CIO)は把握しておくべきだろうか。「それはCIOがどの業界に身を置いているかによるところが非常に大きい」と、新興技術に詳しいForrester Researchのアナリスト、ブライアン・ホプキンズ氏は語る。
最初に量子コンピュータの大きな展開があるのは、化学と物理の分野になるだろうとホプキンズ氏は考えている。分子を研究している医薬品メーカーや、新しいバッテリー技術に取り組む自動車メーカーなど、分子レベルでの化学を扱う事業は総じて、量子コンピュータに関係する性質を持っている。
併せて読みたいお薦め記事
「IBM Q System One」について詳しく
量子コンピュータの課題に挑む
地質に関連した複雑な計算処理が必要な石油会社やガス会社は、量子センシングおよびハイパフォーマンスコンピューティング(HPC:大規模科学技術計算)と、量子力学の関係に関心を持っている。「量子コンピュータが最初に普及するのは、そうした用途になると考えている」(ホプキンズ氏)
ホプキンズ氏は、将来的にはあらゆる業界が量子コンピュータに関心を持つようになると言う。その理由は最適化にある。可能性のある膨大な数の答えの中から、最適な答えを見つけられる可能性を秘めているのが、量子コンピュータだ。現時点で既にその技術が実現しているという見方もあるが、「これには議論の余地がある」と同氏は注意を促す。
「IBM Q System One」に見る量子コンピュータの現状
ホプキンズ氏は、IBMの「Q System One」についてブログで論評している。IBMはQ System Oneを、「研究と商用のために設計された、世界初の統合汎用(はんよう)近似量子コンピューティングシステム(integrated universal approximate quantum computing system)」だと位置付けて売り込んでいる。「設計された」という言葉は、Q System Oneを始めとする量子コンピュータを商用利用する準備が、まだ整っていないことを意味する。「現在の量子コンピュータは、現時点では従来型のデジタルコンピュータ以上のことは何もできない」とホプキンズ氏は言う。
デジタルコンピュータを超えるためには、生成できる量子ビットの数を増やすだけでなく、量子ビットが安定状態にある時間に関して、大幅な技術の改善が求められる。「量子コンピュータの応用が一般的になり、ビジネスにおける限定的な問題の解決に使われるようになるまでには、あと3~5年はかかるだろう」と同氏は語る。
CIOは「現実的なアプローチ」を
Forresterは、量子コンピュータの現状に関するCIOのためのガイダンスを発表した。2019年4月26日に公開したレポート「Quantum Computing: Technology Infrastructure Deep Dive」(量子コンピューティング:技術インフラを掘り下げる)では、量子コンピュータが「あらゆる業界を激変させる」規模に成長するまでには、少なくともあと5年はかかると予想した。
レポートの筆頭筆者、チャーリー・ダイ氏は「量子コンピュータに対して現実的なアプローチ」を取るよう、CIOに促す。第1に、CIOは量子コンピュータが持つべき特性について学ばなければならない(このレポートでは、6つの特性を紹介している)。第2に、量子コンピュータの商用利用に関する動向を、後れを取ることなく確認しておくこと。第3に、未来の量子コンピュータ革命に備えて、クラウドを採用することだ。これはIBMおよび中国のAlibaba.comやHuawei Technologiesなどのパブリッククラウドサービスで、サービスとしての量子コンピュータを提供するという予想に基づく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー