量子コンピュータの圧倒的な演算能力に対抗し得る量子鍵配送方式は、既に実用化されつつある。現在の取り組みと課題を紹介する。
前編(Computer Weekly日本語版 2018年12月19日号掲載)では、量子鍵配送(QKD)について技術的に解説し、QKDの安全性、通信の傍受を察知できる理由などを説明した。
後編では、現在進められているQKD実用化の動きを紹介する。
Quantum Xchangeは現在、米国でQKDネットワークを展開している。このネットワークは、安全に機密データを送信する必要がある当事者間での量子暗号鍵の送信のみに利用される。
このネットワークはニューヨーク市南部からニュージャージーまでを結んでおり、今後3~6カ月の間にワシントンDCまでつなげる予定だ。「当社はルートの途中に15の中間サイトを設置し、これをニューヨーク、ワシントン、ボルティモアなどの各都市の顧客へのアクセスに利用する」とプリスコ氏は話す。
Quantum Xchangeのトラステッドノードネットワークは、アクセスが容易で、中断が最低限に抑えられるように設計されている。企業は既存のセキュリティポリシーをこのネットワークに合わせる必要はない。「当社はデータの送信方法の変更を顧客に求めるつもりはない」とプリスコ氏は話す。
「顧客は、同じ暗号化ツールを使って現在と全く同じ方法でデータを送信できる。当社が行っているのは、オーバーレイネットワークを追加することだけだ。そのオーバーレイネットワークは、顧客のデータネットワークとは分離されている」(プリスコ氏)
QKDシステムの問題の一つは、その速度の遅さだ。通常の送信速度はkbps単位だった。ただし最近の進化によって鍵送信速度が5~10倍速くなり、Mbps単位になった。「大きな遅延の追加はなく、ユーザーエクスペリエンスはユーザーが使い慣れているのと同程度の速度だ」とプリスコ氏は言う。
最終目標は、このQKDネットワークをアメリカ中部、そして西海岸まで拡張することだ。「当社のシステムは、トラステッドノードテクノロジーを利用して鍵を必要な限りどこまでも送信できる。当社は米全土への導入を計画している」とプリスコ氏は語る。
NISTは現在、Quantum Xchangeのトラステッドノードネットワークを評価している。
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