ディープラーニングプログラムを一から構築することも可能だが、既存のフレームワークやラッパー、周辺ツールを使うことでより迅速かつ容易に開発できる。まずは大企業が提供する主要なツールを簡単に紹介する。
IT部門は、ソフトウェアスタックに人工知能(AI)対応の機能やツールを取り込み始めている。そのAIの「脳」を非常に優れたものにしているのがシナプス結合だ。そのシナプス結合の内部で実際何が行われているかを改めて確認してみたい。
開発者がソフトウェアの仕組みを詳しく理解すれば、理論上は今後設計するアプリケーションにAIの進化をよりインテリジェントに応用できるようになる。
AI開発者の多くが現在学習しているであろう「ツール」のうち重要なものが、Googleが開発、オープンソース化した「TensorFlow」だ。TensorFlowは機械学習用のソフトウェアライブラリで、Pythonの他、Java、C言語、Goに対応している。TensorFlowを使えば、例えば40行未満のコードで手書きの数字を認識できる「分類器(classifier)」を構築できる。
Google Brain部門でTensorFlowのエンジニアリングディレクターを務めるラジャット・モンガ氏は、ディープラーニングを支える理念を次のように説明している。「ディープラーニングは機械学習の一分野で、脳の仕組みから大まかな着想を得ている。当社は人間が身の回りの機器を簡単に使えるようになることを重視している。TensorFlowをオープンソースにすることでこの試みがさらに容易かつ迅速になると考えている」
TensorFlowはGoogleの音声認識システムや最新の「Google フォト」、そして特に検索機能のコアで重要な役割を果たしている。「Gmail」でも最新のAI機能拡張を提供するために利用されている。Gmailでオートコンプリートオプションが増加していることに多くのユーザーが気付いているだろう。これは「Smart Compose」という新機能だ。
この分野のツールセットやライブラリが重点を置くのは、「知覚認識」と呼ばれる機能だ。知覚認識はAIモデルコーディングの一種で、例えばPCに接続されたイメージスキャナーが道路標識に向けられたとき、単に盤面の文字を見ているのではなく、標識を見ていることを把握できるようにする。このAI要素で重要になるのは適用されるコンテキストだ。
この種のAIや機械学習ライブラリの多くにとってスケールも重要になる。複数のCPU、複数のGPU、複数のOSでも同時実行できる必要がある。TensorFlowはこの点に優れているが、これは本稿で取り上げているツールの多くに共通する属性だ。
現在ディープラーニングに力を入れているチームの大半が、人気の高いフレームワークの一つを利用している。TensorFlow、「PyTorch」「Apache MXNet」「Caffe」などがその例だ。
「こうしたフレームワークは、ソフトウェアエンジニアがアルゴリズムを構築、トレーニングして、AI内部に『脳』を作り上げることを可能にする」と説明するのは、イスラエルのテルアビブを拠点とするAIの専門企業AidocでAI担当部長を務めるアイダン・バサック氏だ。同社はAIを使用した放射線医学における急性症例の検出を行っている。
上記以外にも、ディープラーニングエンジニアが作業を迅速かつ効率的に行えるようにするツールが複数のカテゴリーに存在する。
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